泥濘の一家

@Talkstand_bungeibu

第1話 エヌ一家変死事件

エヌ一家変死事件


エヌ一家変死事件は、1979年綾世町三了川2-9で起きた三親等に渡った家族が一夜にして犠牲となった事件である。


警視庁は一家心中とみなしており、現在捜査は打ち切られている。事件名は当時の週刊誌に書かれたものをそのまま用いているが、三了川事件、○○家(被害者の名前)根絶やし事件とも呼ばれる。


▪︎事件の詳細


1979年10月5日、被害となったエヌ家宅にてAの還暦祝い、Hの復職祝いが行われた。

以下、被害となった人物を記載する。

祖父A、Aの妻であるB、その間に生まれた長男Cと長女D、CとEの間の孫FとG、DとHの間に生まれたI、Hの両親JとKの計11名である。


なお、11名に及ぶ一家心中は正確な統計は計られていないが一説には日本最大であるとされている。


10月6日16時ごろ、一家の近隣に住む人物が一家の姿が全く見えないため様子を伺いに行くが、チャイムにも応答はなかった。

19時過ぎ、Hの職場の同僚が観劇の予定があったものの迎えに来なかった為不審に思い訪れたところ、一家が口から泡をふき倒れている所を目撃し、通報があった。


胃の内容物などから死亡推定時刻は10月5日18時ごろであったとされる(これは近隣住民が一家の喧騒が静まった時刻と一致する)。

死因は日本酒・ジュースに混入されたアイモ化合物であるとされた。


現場には一家以外の人物の指紋や遺留品は一歳見つからず、事件性がないと判断された為に一家心中として処理されている。


しかし、福留 相悟・中村梓共著「エヌ一家事件は自殺ではなかった」では、不明な点がいくつか明らかになっている。


①動機

最大の疑問点として、一家心中を遂げる動機が見つからない。

近隣の住民・職場の同僚によると

・一家は経済的に余裕があり、一家心中の要因とされる経済的不満は見つからなかった。

・Hは心身の都合上会社を退職せざるを得なかったが、先月に復職し、前向きな気持ちであったとされる。

・Hは翌日18時に同僚と観劇の予定を入れていた為、少なくとも一家心中を図ろうとはしていなかったのではないか。

・F・G・I三人の孫をAは大変可愛がっており、子供の喧嘩に出向くほどであったとされ、手をかけるとは考えにくい。


②凶器

アイモ化合物は特定毒物であり毒物取扱責任者以外の所持・使用は認められていないが、一家、またはその近辺で取扱責任者は見つからなかった。


③遺書

11人が犠牲になっていながら、家から遺書は見つかっていない。


④怪文書

事件の3年後、空き家となった家の門柱に「根絶やし」と毛筆で書かれた藁半紙がみつかった。

事件性があるかと調べられたが指紋は見つからず、その後も進展はなかった為事件を知った人物の悪戯であると処理されている。


⑤不審な人物

Eは生前、「帰り道で視線を感じる」「急に追いかけられたことがある」「無言電話をしきりにかけられる」と話していた。


⑥鍵

一家は夜には鍵をかけるようになっていたが、発見時鍵は開けられていたため、何者かが玄関から立ち去った可能性がある。


以上の項目が、自殺説に対する反論である。

一方で他殺説にもいくつか疑問が残る。


①犯人像

お祝いには一家以外の人物は招かれていないとされている。また、現場には一家以外の人物の指紋・遺留品は残っていなかった。


②凶器の毒物

犯行に用いられた日本酒・ジュースは既に開封されたものも存在しており、一度に毒殺するタイミングが難しいとされる。

また、強盗などの犯行であるならば回りくどい毒殺という方法を取る必要がないという意見とある。


③動機

自殺説同様に他殺説にもまた動機が見つからない。

部屋には荒らされた様子はなく、一家の財布

、金庫、通帳、印鑑には手は付けられていなかった。

近隣トラブルや痴情のもつれなどの面からも捜査は進められたが一家に不満を抱くものはいなかった。


▪︎推定される犯人像


「エヌ一家事件は自殺ではなかった」にて元刑事、八木勇人によってプロファイリングが行われた。


その結果から推測される犯人像として


・医療従事者

劇物などを容易に手に入れることができる医療従事者である事が推測される。

また、アイモ化合物は化合物そのものとして手に入れる事は容易ではない為、自らの手で調合する必要がある。


・被害者との顔見知り

部屋に荒らされた様子もなく、鍵が開けられていた事から被害者の顔見知りが行った事が推測される。

ただし綾世町中心部まではエヌ一家宅は数十キロ離れている為、その場合は計画的犯行であると見られている。

また、近隣住民は車などの音は当時しなかったと記憶している。


・類似事件との関連性

事件の起こる四ヶ月前に綾世町有賀にて兄弟殺傷事件が起きている。

捜査本部は当時関連性を持って捜査に臨んだが八木は同一犯ではないと見立てている。


▪︎奇妙な事柄


・おにのわたらせ

事件が起きてから3日後、三了川の一部が立って歩く事が出来るほどぬかるむ現象が起こっている。

これは三了川に見られる事象であり、かつては「おにのわたらせ」と呼ばれている。

原因としては三了川の近くに位置する藍緑山の地表が崩れ、綾世町特有の吹き付けるような風によって砕かれ粉末状になる事で川と混じり起きる事であると言われているが、科学的な立証はまだされていない。

「おにのわたらせ」は、数十年に一回起きる現象であり、異界(あの世)と現世の境となる川が塞がれた為に鬼が来て悪さをするという言い伝えがある事から、一部の週刊誌はこれと関連づけて報道を行った。

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