こわ~い恐井さん
無月弟(無月蒼)
第1話 ぼくの町の恐井さん
ぼくの住んでる町で一番の有名人は誰かと聞かれたら、ぼくは真っ先に恐井さんを答える。
なぜ有名なのかって?
それは恐井さんの顔が、とっても恐いからだ。
恐井さんはとにかく顔が恐い。
ヤクザみたいな強面とかそういうレベルじゃなくて、なんと言うか恐怖の象徴みたいな?
見た人を恐怖のどん底に叩き落とすような、そんなお顔の持ち主なのだ。
ぼくの町で悲鳴が聞こえたら、大抵は誰かが恐井さんの顔を見たとき。
悲鳴を上げるだけならまだいい。
例えば曲がり角を曲がったときに運悪く恐井さんがいて、なんの心の準備もできないまま顔を見てしまったら気絶すること間違いなし。
救急車を呼ぶ事態に発展する。
その場合、救急車を呼ぶのは恐がらせてしまった張本人である恐井さんなことが多い。
顔を見て気絶するなんて、失礼だと思われても仕方ないけど、恐井さん慣れているのかそれとも人がいいのか、そんなことは気にしない。
ちゃんと救急車が到着するまでそこにいて、患者さんの心臓が止まっていたら心臓マッサージをしてくれるんだ。
やってきた救急隊員が新人の場合、恐井さんを見て腰を抜かすこともあるけど、その時は恐井さんが患者さんを救急車に乗せてくれる。
恐井さんは顔はものすごーく恐いけど、とっても優しい人なのだ。
だから町の人から、信頼されている。
悲鳴を上げ、腰を抜かし、泡を吹いて倒れられるのは日常茶飯事だけど、とにかく恐井さんはいい人。
やっぱり、顔はものすごーく恐いけどね。
つづく
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