第5話 交渉術と冒険者パーティーへの助っ人

ある日。


(貧民街子供:男)

聖女様、俺達、冒険者になったんだ。


(ナギサ・カンナ)

おめでとう。


(貧民街子供:女)

で、お願いがあるんですが、聖女様が私達のパーティーに助っ人で同行してくれないですか?


(貧民街子供:男)

初めての討伐クエストなんだ。


(ナギサ・カンナ)

良いよ、依頼料、高いけど。


(貧民街子供:男)

金取るのかよ!


(ナギサ・カンナ)

依頼なんだから、当たり前だよ。


(貧民街子供:女)

払うから、お願いします。


(ナギサ・カンナ)

なら良いよ、銀貨5枚ね。


(貧民街子供:男)

高っ!ボッタくりだ。


(貧民街子供:女)

でも聖女様だよ?戦闘力も凄いって言ってたし。


(貧民街子供:男)

仕方ねぇ〜、失敗できないしな。



やり取りを聞いていたナギサは……


(ナギサ・カンナ)

はい、ストップ!

ホントに私に依頼する気?


(貧民街子供:女)

もちろんです、聖女様。


(ナギサ・カンナ)

銀貨5枚払って?


(貧民街子供:男)

聖女様がそう言うんだ、仕方ねぇ〜じゃん。


(ナギサ・カンナ)

落ち着いて考えてみよう。

討伐クエストの内容は?


(貧民街子供:女)

ホーンラビットの討伐で、討伐数は5匹です。


(ナギサ・カンナ)

討伐報酬は?


(貧民街子供:男)

えーっと、1匹銀貨1枚。


(ナギサ・カンナ)

じゃあ、私に依頼したとして、皆んなの取り分は?


(貧民街子供:男)

そりゃあ、1匹が銀貨1枚なんだから、5匹で銀貨5枚だよ。


(ナギサ・カンナ)

で、私に依頼料を払うと?


(貧民街子供:女)

あっ!


(ナギサ・カンナ)

悪いヤツは、こうやって搾取する。

それと、頼む相手を間違えない事。

助っ人は強い方が良いに決まっている。

でもそうなると、当然依頼料も高くなる。

その見極めが大事だよ。

強ければ良いってわけじゃない、ちゃんと収支を考えないと。

だけど、ケチって命を落とすのはバカだよ。

それと、落ち着いて交渉すること。

交渉次第では依頼料は下げることができるかもしれない。

しかし、しがみついてもいけない。

弱味を見せたら、相手はそこを突いてくる。

だからって大柄にすれば良い訳じゃない。

慎重に落ち着いて、駆け引きしないとね。

分かったかな?


(貧民街子供:女)

はい、聖女様!


(ナギサ・カンナ)

じゃ、クエスト行こうか。


(貧民街子供:男)

えっ?良いの?


(ナギサ・カンナ)

いくら払う?


(貧民街子供:女)

うーん……銀貨4枚。


(ナギサ・カンナ)

いきなり上限を言ってはダメ。

かと言って、試すような値段もダメ。

誠意を見せつつ、少し下を言わなきゃ。

討伐という事は、武器や薬草、ポーションとかの消耗品の事も考えないとね。


(貧民街子供:男)

うーん、難しい……


(ナギサ・カンナ)

これは経験だよ。

場数がモノをいう。

最初から完璧には無理だから、数をこなして経験を積もう。


(貧民街子供:女)

はーい、聖女様。


(ナギサ・カンナ)

今回の依頼は銀貨4枚で受けよう。


(貧民街子供:男)

ありがとうございます、聖女様。



そのやり取りを周りの大人達は見ていた。


(貧民街長 ショウ)

やれやれ、手厳しい聖女様だな(ニヤッ)


(専属お世話係 ケイン)

でも、なんだかんだで優しい聖女様ですよ。


(貧民街長 ショウ)

ザ・実践!だよな。



セツナは子供達のパーティーに同行した。

ホーンラビットの狩り場に行く。

子供達はなかなか見つけられない。


(貧民街子供:女)

居ないね、聖女様。


(ナギサ・カンナ)

ん?居るよ?よく探してごらん?


(貧民街子供:女)

はい、えーっと……


(ナギサ・カンナ)

魔法は使えないのかな?


(貧民街子供:女)

あっ!そっか……

 【サーチ】

あっ!居た!


(貧民街子供:男)

どこだ?


(貧民街子供:女)

うーんと、あの岩の向こう。



岩を指差す女の子。


(貧民街子供:男)

よし!



急いで走って行く男の子。


(貧民街子供:女)

あっ!待って……あゝ……逃げた……


(貧民街子供:男)

クッソぉ〜!なんでだよ!


(ナギサ・カンナ)

追われてる側の気持ちになってみようか?

捕まれば殺されるとなったら、どうするかな?


(貧民街子供:女)

必死に逃げる……あっ!


(貧民街子供:男)

気付かれないように近づかなきゃいけなかったんだ。



そんな事を繰り返していると、段々要領が分かってきたみたいだ。


(貧民街子供:女)

あそこよ(ボソっ)


(貧民街子供:男)

居たっ(ボソっ)



ナイフを構えて近づく男の子。

いや、それ、危なくないか?

ホーンラビットが気づくが、逃げずに襲いかかってきた。


(貧民街子供:男)

負けるかぁ!



正面から突っ込む男の子。


(貧民街子供:男)

危ねぇ〜!!



間一髪、やり過ごす男の子。


(貧民街子供:女)

あわあわあわあわ……


(ナギサ・カンナ)

落ち着いて。

魔法、使えたよね。


(貧民街子供:女)

えっ?あっ!そうか!

 【アースバインド】



ホーンラビットの後ろ足をかろうじて捕まえた女の子。


(貧民街子供:男)

今だっ!



男の子が飛びかかるが、ホーンラビットには角がある。


(貧民街子供:男)

痛っ!!



男の子が腕を刺されてナイフを落とす。

慌てた女の子は魔法を操りきれなくなって、消える。


(ナギサ・カンナ)

 【アースバインド】

 【アースアロー】&【ライトニングプチ】



"アースバインド"で拘束し、"アースアロー"で眉間を撃ち抜く瞬間に、"ライトニングプチ"で頭の中を焼く。


(貧民街子供:男)

ううっ……


(ナギサ・カンナ)

 【ハイヒール】

相手はホーンラビットだよ?常に角には気をつけないと。


(貧民街子供:男)

はい、聖女様。



ナイフを拾って反省する男の子。


(ナギサ・カンナ)

捌き方は分かるかな?


(貧民街子供:女)

私、出来ます!



そう言うと、女の子は捌きにかかった。

拙いながらもなんとか捌き、袋に入れようとする。


(ナギサ・カンナ)

今回は傷まないように、私が収納するね。



そう言うと、ナギサは"ストレージ"に収納した。


(貧民街子供:女)

ありがとうございます、聖女様。



セツナは内臓も全て収納した。

こんなペースで狩るから、5匹討伐するのに3日かかった。

ナギサはあえて、チートは使わず付き合った。


(貧民街子供:男)

やっと5匹討伐した。


(ナギサ・カンナ)

じゃあ、帰ろうか。


(貧民街子供:女)

はい、聖女様。



この子達には、なかなか厳しいクエストだったが、良い経験になっただろう。

討伐の証明は角だった。

不慣れな子供が狩ったんだ、値段はほとんど付かない。

討伐報酬の銀貨5枚と、角5本が銅貨10枚だった。

ちなみに上級品だと武器の材料になるから、1本銅貨20枚と聞かされて、少々落ち込んでいた。


(ナギサ・カンナ)

初討伐なんだから仕方ないよ。

良い経験だったでしょ?


(貧民街子供:女)

はい、でも、今度はもっと上手くやります。


(ナギサ・カンナ)

何事も経験だからね。


(貧民街子供:男)

でも、角が5本で銅貨10枚って……


(ナギサ・カンナ)

真面目な話、あれは初討伐だからのご祝儀だよ。

普段なら廃棄だから。


(貧民街子供:女)

えっ?


(ナギサ・カンナ)

これは本当の話。

初心者冒険者の初討伐の時は、そういうご祝儀があるんだ。

これからも頑張ってねって、ギルドからの応援だよ。

では、打ち上げしようか、初討伐成功のお祝いしなきゃね。



そう言うと、依頼料、銀貨4枚を受け取り、食事処へ行った。

そこはナギサがご馳走し、帰りに武器屋に寄り、男の子にはショートソード、女の子には杖を買ってプレゼントした。


(貧民街子供:男)

ありがとう、聖女様!(嬉)


(貧民街子供:女)

私、一生大事にします!(嬉)



その後、送って行ったが、血が付き、破れた服を見て、親達は引き攣った。


(ナギサ・カンナ)

じゃあ、仕上げね。

 【クリーン】

 【リペア】



子供達の服は綺麗になり、元に戻った。


(貧民街子供:男)

ありがとう、聖女様。


(ナギサ・カンナ)

後はお風呂に入って、ゆっくり休みなさいね。


(貧民街子供:女)

はい、聖女様。


(ナギサ・カンナ)

と、その前に、ホーンラビットのお肉渡すね。



そう言うと、"ストレージ"から肉を出したナギサ。


(貧民街子供:男)

要らなぁ〜い、聖女様にあげる。


(ナギサ・カンナ)

なんで?


(貧民街子供:男)

報酬もらったもん。


(ナギサ・カンナ)

たしかに報酬はもらったよね。

でもこのお肉は?

これも報酬だよ?


(貧民街子供:女)

あっ!そうか、立派な食材だ。


(ナギサ・カンナ)

そういう事。

で、今回は特別にこの骨と内臓を使ってご飯を作ります。



そう言うと、ナギサは鍋を取り出す。

しっかり下処理をした後、鍋に骨を入れて出汁をとる。

味付けした後、食べられる内臓を入れて煮込む。

美味しそうな匂いが漂う。


(貧民街子供:男)

うっ、美味そう!


(ナギサ・カンナ)

これは特別ね。

今入れた内臓は食べられるやつ。

食べれない内臓もあるから慣れるまではしたらダメだよ。

それと、新鮮さと念入りな下処理をしなかったら食べられないから、できるようになるまで作っちゃダメだよ。


(貧民街子供:男)

はーい。



料理が出来上がる。

骨から出た出汁がホルモンによく沁みている。


(貧民街子供:男)

うっ、美味ぇ〜!!


(貧民街子供:女)

美味しい!



子供達の親も混ぜての軽い食事会をした。

作り方は一応親には伝授したが、鮮度に要注意な事と、部位の見極めを守るように言っておいた。

一息つくと……


(ナギサ・カンナ)

じゃあ、またね。


(貧民街子供:女)

ありがとう、聖女様!


(貧民街子供:男)

バイバイ、またねぇ〜!!

 


ナギサは帰っていくが、こっそりその子の親に、銀貨2枚づつ渡し、子供の将来の為に使うように言った。


(貧民街長 ショウ)

なかなかやるな、聖女様。



それを見ていたショウは、ナギサを見直したらしい。

その後、特に何も無かったナギサは、大体3日に1回のペースで顔を出した。

勉強会をやり、希望者には魔法の教室も開いた。

剣術に関してはケインが指導し、冒険者を希望する者を育てた。

それ以外にも、炊き出しの応援要員から、料理を教え、貧民街とはいえ酒場もあるので、そこの調理をできる料理人や、服飾人などもアンネ達が教えた。

大工や職人は、貧民街の専門家に任せ、将来自分で食い扶持を稼げるような授業もした。

最初はあまり協力的でなかった貧民街の専門家達も、ナギサらの熱心な指導と依頼。

ショウからの命令で協力するようになり、子供達の可能性を少しでも広げた。


(貧民街長 ショウ)

お前は大したヤツだよ、聖女様。

ここまでオレらの事を考えてくれたヤツは居ねぇ〜。


(ナギサ・カンナ)

子供達には将来があるからね。

貧民街に生まれたというだけで、希望を失って欲しくない。


(貧民街長 ショウ)

違ぇ〜ね。

で、来ねぇ〜日は何してんだ?


(ナギサ・カンナ)

休憩だよ。

それと、村の事。

秘密の方法で行き来してる。

あの村に聖女は私しか居なかったからね。


(貧民街長 ショウ)

は?村まで片道10日と聞いているぞ?


(ナギサ・カンナ)

だから秘密の方法だよ。

聖女様の特別な能力。

これを邪魔するなら、もう来ないって条件で領主と契約交わしているから。


(貧民街長 ショウ)

おいおい、今更それは無しだぜ。

アンタを頼りにしてるのが、何人いると思う。


(ナギサ・カンナ)

だから、移動方法に関しては秘密なんだよ。

領主も知らないしね。


(貧民街長 ショウ)

オレも聞かないでおくわ。


(ナギサ・カンナ)

その方法はね(ニヤッ)


(貧民街長 ショウ)

言うな、聞きたかねぇ〜!(ニヤッ)



ショウとの関係も良好になったナギサ。

村の子供達も冒険者になる者が居るので、その世話もしていた。

その時は前もって知らせていたが、炊き出しと勉強会は世話役の3人に任せてきっちり3日に1回やっていた。

村の方は、毎日炊き出しをし、勉強会を教会の者がやっていたので、今までと変わる事はなかった。

ただ、ナギサの来る日が減っただけだった。


(貧民街子供:男)

聖女様ぁ〜、討伐クエストの助っ人お願いしたいんですけどぉ〜。


(ナギサ・カンナ)

依頼料、高いよぉ〜?


(貧民街子供:女)

うん、でもお願いぃ〜。


(ナギサ・カンナ)

じゃあ、銀貨4枚ねぇ〜。


(貧民街子供:男)

えぇぇぇっ!!!もっと安くしてぇ〜。

えーっと、銀貨3枚と銅貨50枚でお願いします。


(ナギサ・カンナ)

うーん……


(貧民街子供:女)

じゃあ、銀貨3枚と銅貨75枚、これならどう?


(ナギサ・カンナ)

そうだねぇ〜、銀貨3枚と銅貨80枚、これなら受けるよ。


(貧民街子供:女)

うーん……


(貧民街子供:男)

分かった、それでお願いします。


(ナギサ・カンナ)

分かった、引き受けよう。

今の交渉は100点!

相手の相場を意識しつつ、失礼の無いと思われる金額を提示して、最終的には相場より安く依頼した。

こういう方法は忘れないでね。

ただし、いつも上手くいくとは限らない、見極めが大切。

しつこく無い程度で切り上げるのが大事だよ。


(貧民街子供達)

はーい!



交渉が上手くいく日、いかない日を作ったり、わざと理由をつけて断ったりと、あの手この手で交渉術を教えていくナギサだった。


(貧民街長 ショウ)

最近、ガキ共が上手く交渉してくると思ったら、聖女様の差し金かよ(苦笑い)



と言いながら、子供達の成長を喜ぶショウだった。

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