幕間②《勇者、目覚める ―セラフィナとともに》
世界の空が、一瞬だけ白く染まった。
その異変は、大陸の中心にある聖都ラミスの神殿で“勇者の光”と認定された。
──かくして、聖なる召喚陣が発動する。
真白き光の渦の中から現れたのは、一人の青年。
栗色の髪に澄んだ瞳を持ち、まだその肩に責務の重さを知らぬ――
「……ここは……どこだ?」
「ここは、君を呼んだ世界だ。シオン。君こそが“選ばれし勇者”だ」
王国の神官長が儀礼的に剣を差し出す。
「この《聖光の剣(セイクリッド・アーク)》と共に、世界を闇から救ってくれ」
そのとき、神殿の天井から降り立った金翼の存在があった。
「名はシオン、だな?」
「……君は?」
「天使軍・筆頭戦術官、セラフィナ=レグナリア。女神直属の者だ。
だが今は、女神を“魔王に囚われた存在”と認識している」
彼女は冷たく言い放った。
「この世界には、“魔王の娘”がいる。神と悪魔の混血。
世界の秩序を脅かす最も危険な存在だ。君と私は、それを討つために選ばれた」
まだ状況が理解しきれていないシオンだったが、与えられた使命に頷く。
「分かった。俺にできることなら……やってみる」
セラフィナは神殿の天窓を指さした。
「最初に向かうべきは、東方都市カリオステ。
魔王の娘が現れ、何やら“大規模な儀式”を行おうとしている」
「儀式……?」
「名は《Twilight Beat》──音と光の祭典と称しているが、実態は“闇の布教”だと私は見ている」
勇者と天使は、運命の最初の一歩を踏み出す。
その足元に、剣を封じる光の結界と、サイリウムを握りしめるオタクたちが待ち受けているとも知らずに。
──勇者の旅の第一歩は、ライブステージから始まる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます