第9話 BBQ1
中庭に出るには、サンダルに履き替える必要があるようだ。
サンダルは、出入り口に用意されていた。
中庭のウッドデッキには、アウトドアチェアや木製のテーブルが置かれ、2台の大き目なBBQコンロには両親たちが焼いていた。
炭のいい匂いと肉の焼ける匂いに涎が止まらない。
「あ、帰ってきたのね。愛ちゃん」
「はい、お義母さん。ただいま戻りました」
母さんが、愛実を見てそう言った。
俺も近づいていく。
BBQコンロには、肉を焼く側と野菜を焼く側と分かれていた。
肉を焼いてる側には、鉄板も置かれている。
兎に角、BBQコンロのデカさに驚く。
多分、サイズ的には1mくらいの幅はありそう。
横長な網が縦に3枚並べられているほどだ。
それが、2基ある。
BBQコンロの存在感がありすぎて、中庭の広さを気にする余裕がない。
でも、コンロが2基あってもアウトドアチェアを広げてあっても余裕があるのだから広いのだろう。
「よし、揃ったな。
じゃあ、乾杯しようか」
父さんが音頭を取り始める。
肉の焼ける匂いに、我慢が出来ていないようだ。
俺は、愛実から缶ビールを手渡された。
急いで、プルタブを開ける。
カシュっと小粋な音がした。
それと共に、俺の喉からもキュルっと変わった音が鳴った。
あー、呑みたい。
「愛ちゃんと和巳の結婚に乾杯」
俺は、隣にいる愛実と乾杯をする。
彼女も、缶ビールを持っていた。
缶と缶がぶつかって、カンッと音が鳴る。
ん?ダジャレ?いや、違うよ。
真剣だよ。ほんとだよ。
俺は、そのままビールを流し込む。
「くー、美味い」
「凄い吞みっぷりだね、和くん」
「ああ、もうなんか匂いでアルコールも食も進みそうだよ」
「ふふ、そっかぁ。じゃあ、いっぱい食べよ」
そう言いながら、愛実は網の上から焼けた物をお皿に装い始めた。
野菜側のBBQコンロには、椎茸、葱、南瓜、茄子、ピーマン、パプリカ、玉ねぎが直火されていた。
それ以外にも、ホイルに包まった物がいくつかある。
中身は、よく分からない。
まだ、開けられていないから。
「和くん、お帰りなさい。
これから、愛実の事よろしくね」
「あ、はい。おばさん…あ、お義母さん」
「あら、そうね。これからは、和くんは義理の息子になるのよね」
愛実のお母さんが、俺に話しかけてきた。
昔から知っているからこそなんだかむず痒い。
そして、照れくさい。
「おう、和くん。
愛実の事頼んだぞ。
まあ、和くんなら任せられるからな」
「はい…何年も会ってなかったのに…その…」
「和くんは和くんだからな。
それに、愛実がずっと待っていたんだ。
和くん以外に嫁がせたとなったら俺が殺されちまうさ」
愛実のお父さんが、そう俺に言った。
なんだかんだで、うちの両親も愛実の両親も俺の事を信用してくれていて嬉しい。
この信頼に応えられるようにこれから頑張ろう。
「お父ちゃん、確かに和くん以外にそんなことしたら怒るけど私にだって選ぶ権利はあるもん」
「はは、後は若いもんに任せて母さん行こうか」
「あー、はいはい」
2人は、離れていった。
愛実は、お皿2つを持っていた。
そして、1つを俺に手渡してきた。
「ありがとう」
「どういたしまして、えっと…あ、あの席開いてるね。
あそこ座ろ」
俺達は、空いてる席に腰を下ろした。
アウトドアチェアとチェアの間にはウッドテーブルが置かれていた。
俺は、そこにお皿を置く。
愛実も同じように置いた。
「いっぱい、持ってきたんだな」
「うん、和くんがどれ好きかまだ分からなかったから」
「そっか、確かにそれもそうだな。
といっても、特に好き嫌いはないから」
「そうなんだ。私も、何でも食べれるよ」
俺達は、会話をしながらBBQを楽しむのだった。
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