第7話 サプライズ

その後しばらくしてすべての手続きが済んだ。


「えへへ、これで晴れて和くんのお嫁さんだぁ」


愛実は、駐車場で万歳をしていた。

ちょっと恥ずかしいが、あまり人がいなかったから助かった。

ちょっと大き目な駐車場ではあるものの来客数はそこまでなかったのだ。


「愛実、落ち着いてよ」

「えー、落ち着いてなんていられないよ。

もぅ、やっと夢が叶ったんだもん」


はい、ごめんなさい。

俺が悪かったです。

待たせるべきではなかったんだよな。

俺は、どうして東京で就職をしたんだろう。

都会への憧れ?

今になってみるとよく分からない。


「あ、しょうがないなぁ」


俺は、テンションの上がっている愛実を抱き締めることにした。

すると、彼女が大人しくなる。

顔は、真っ赤で思考停止しているようだった。

その表情を見て、俺は飛び退いてしまう。

迂闊過ぎた。

こんな公衆の面前で、何をしているんだろう。

なんかいい匂いもしたし、うー、心臓がうるさい。

愛実の顔は、真っ赤で頭から煙でも出そうなほどだ。

すっかり、オーバーヒートしてしまっている。

取り敢えず、揺すってみよう。


「愛実、そろそろ帰ろう」

「う、うーん」


少し唸っている。

でも、まだ目覚めなさそう。


「おーい、愛実?」

「うーん…あれ?和くんが抱き締めてキスを…」

「えっと、してほしいの?

流石に恥ずかしいんだけど」


愛実がそんなことを言うから目を合わせられなくなった。

駄目だ、恥ずかしすぎる。

この子が、今日から俺の嫁なんだよな。

俺、持つだろうか。

心臓があまりにも早鐘を打つからいつか疲れて止まったりしないだろうか。

あまりにも女の子と関わり合いの無い青春時代だったから免疫が無さすぎる。


「うー、じゃああとで…取り敢えず、帰ろ」


そう言って、愛実は車に乗り込んだ。

俺も、それに従って車に乗る。


「あ、そうだ。行先、ナビに入れるね」

「ん?帰るんじゃないの?」

「えっと…ついてからのお楽しみ」


なんだろう、含みがある気がするけど。

俺は、取り敢えずナビに従って車を走らせるのだった。

進行方向は、確かに実家への帰り道である。

うーん、実家に向かっている気はするんだけど。

どこを目的地にしているんだろう。

俺は、首を傾げながらナビ通りに運転するのだった。

30分ほど運転するとナビが目的地到着を知らせる。

そこには、真新しい住宅があった。


「此処ね、お父ちゃんたちが前々から私達にって用意しててくれたお家なの」

「え?俺達の家?」

「えへへ…私達の愛の巣」


愛実は、照れながらそう言った。

俺は、彼女の顔を直視できなかった。

ホント、可愛いかよ。

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