第三話「初依頼とバッタとレベルアップ」

 異世界転生してからというもの、俺たちはだいたいテンプレに沿ってる。


 死因:トラック落下

 転生:女神の不手際

 初戦闘:スライム

 現在地:小さな村で冒険者登録完了


 で、次にやることと言えば、当然――


植田「依頼、受けるしかないよな」

八木「さあ、異世界就職活動の始まりや……」


 掲示板にずらっと貼られた依頼を見ながら、俺たちは目を細める。つーか八木、身長180あるから覗き込まなくても全部見えてるのズルい。


植田「お前、絶対電車の中吊り広告とか読めるタイプだろ」

八木「え、読めるのが普通じゃね?」

植田「身長170の俺に謝れよ」

八木「チビじゃん」

植田「◯すぞ」


【依頼一覧】

・畑の害虫をどうにかしてくれ(報酬500G)

・宿屋の幽霊退治(報酬1000G)

・迷子の猫探し(報酬800G)

・森の魔獣討伐(報酬5000G)※Aランク限定


八木「猫探しとかぬるいな。魔獣行こうぜ魔獣。俺らチート持ってんだろ?」

植田「“死因:トラック”のチートに信頼置くな。死に方一番ダサいだろ」


 結局、俺たちは最も平和そうな「害虫駆除」を選択。いや、猫探しも検討したけど八木が「猫アレルギーだから」って理由で却下。

 地味すぎる弱点持ちかよ。


畑にて

 案内された畑は、けっこう広い。そこにいたのは白髭の老農夫・タムじい。


タムじい「最近、夜になると奴らが来てのう……でかくて、跳ねて、緑色の……」

植田「それ、完全にバッタじゃない?」

八木「まさかの“ド直球バッタ回”!?」


 日が落ち、空が茜色に染まる中、俺たちは畑で待機。


八木「なぁ、俺たちいま何してんの? 虫待ってるって状況、シュールすぎない?」

植田「転生して虫待ちって前世の俺が知ったら泣くわ」

八木「俺なんか、未来で魔王ぶっ倒してハーレム作ってるって信じて死んだのに……今、雑草の影でバッタ待ってるからな」

植田「希望に溢れた死に様やめろよ」


 そのとき――!


???「チュイィィィィィィィ!!!!!」

植田「出たッッッ!!」

八木「うおおおおおい!二足歩行しとるバッタやんけ!!」


 出てきたのは、人間サイズのバッタ……というより、もはや“バッタのコスプレをした元ムキムキ格闘家”。


植田「てかこいつ、Dランクの依頼に出していい生物じゃないだろ!?」

八木「農家のセキュリティゆるすぎだろ、セコム呼べよ!」

植田「いや異世界にセコムねえわ!!」


 ツッコんでる間にバッタが毒液をぶっ放してくる!


八木「影よ形を成し、我が敵を穿て――虚影・穿!!」


→黒い弾がバッタの顔面に命中!右の触角が吹っ飛ぶ!


植田「空を裂け、刃となれ――空断・一閃!」


→透明な斬撃が空を切り裂き、バッタの胴体に命中!

 だがバッタはまだ元気。ぴょんぴょん跳ねて毒液吐きまくってくる。


植田「マジで!毒!顔面狙ってんのなんなんだよ!」

八木「アイツ顔芸で生きてきたのかってレベルの表情管理してるぞ!」

植田「どんな人生だよ!」


 泥臭くも魔法を連打し、ようやくバッタ撃破!


【LEVEL UP!】

 バッタの体が地面に崩れ落ちた瞬間、二人の前に光のウィンドウが現れる。


植田「うお、来た来た!レベルアップ!!」

八木「ゲームかよ。」


📘【ステータス更新】


【植田 凜】

Lv:1 → 2

HP:70 → 80

MP:120 → 135

筋力:15 → 18(まだ紙)

敏捷:25 → 30

知力:40 → 47

新スキル:《マジックブースト》(1回だけ魔法の威力1.5倍に)


植田「やった知力上がった!筋力?知らん!」


📗【八木橋 亜生】

Lv:1 → 2

HP:110 → 120

MP:90 → 100

筋力:50 → 55(まだゴリラ)

敏捷:35 → 38

知力:20 → 23

新スキル:《影縫い》(影で敵の動きを封じる)


八木「筋力さらに上がった俺の拳、たぶんもう武器」

植田「お前、闇術士じゃなくて格闘家に転職しろよ」

八木「次の依頼、素手でいってみる?」

植田「やめとけバカ!」


ギルドにて

受付嬢「……あんたら……生きて帰ってきたのか……」

植田「失礼すぎない!? なんで“まさか”みたいな顔してんの!?」

受付嬢「いや、あのバッタ……過去にギルド員3人まとめて毒で病院送りにしたって話があってさ……」

八木「依頼内容に書けよぉぉおおお!!」

植田「なんで初心者狩りクラスのやつ出してんだよ!」

受付嬢「でもまあ、これで君らも“ちゃんとした”Dランクだ。おめでとう」

植田「ちゃんとしたDランクって何だよ、既に心がBランク級に折れかけてるわ」

八木「俺はもうEランクくらいまで戻していい。畑に住んでる方が幸せだった気がする」


 こうして俺たちは、異世界冒険者としての最初の一歩を踏み出した――いや、バッタにぶっ飛ばされそうになりながら転げ落ちただけかもしれんけど。


次回予告

「次の依頼は……幽霊退治!?」

「いやいやいやいや、いきなりホラー!? 俺そういうの無理系主人公じゃないから!」


「てか八木、なんでさっきからビビってんの?」

「……思ったんだけど俺らの魔法物理攻撃だから幽霊どうしようもなくね?」

「あ・・・」


次回『幽霊、リアルに出た。てか触れるんかい!』お楽しみに!

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