第8話 カップラーメンの出番だな?

 「ただいまーっ! 戻ったよ! …あれ? ラグおばさんは?」


 ラグおばさんの言った通り、クルーシアが戻ってきた。 流石だ。


 「ラグおばさんはなんか用事があるみたいで出歩いてるよ。」

 「そっか。 はい! これ飲んで!」

 「グルミの木の実のジュースか?」

 「え! なんで分かったの! そうそう、村から少し離れた所で隠れて育ててるんだ。」


 これまたラグおばさんの言う通り、グルミの木の実のジュースだった。 俺は本来、出会ったばっかの人に渡された得体の知れない飲み物など怖くて飲めないが、そんなことはもうどうでもいい。 このジュースは美味しくなくても心が美味しいのだ。


 「ありがとう。 んじゃいただくよ。」

 「…どう?」

 「うん! これ美味しいね!」


 普通に美味しかった。 味はココナッツでほんのり甘さがあった。 まぁ、匂いはドリアンみたいだったけど。


 「なぁなぁ、クルーシア。」

 「ん? なに?」

 「ラグおばさんっていつも何食べてるの?」

 「…。」


 クルーシアが黙り込む。 俺の予想だが、ラグおばさんや村のみんなが細いのは、勿論、魔王達が食糧を奪っていってるのもあるが、なんとか村の住民全員で集めた食糧をクルーシアに与えているのだろう。 クルーシアは少し痩せているが、村の人達ほどではない。 その謎に来ている灰色のドレスも、村のみんなが出来る限り良い思いをして欲しいから作ったのだろう。 そうなると、俺の答えはただひとつ。


 「ラグおばさんは、どの味のカップラーメンがいいかな?」

 「!!」


 クルーシアが尻尾を垂直に立てながら、高く飛び上がった。 これはおそらく、「嬉しい、驚いた!」の感情の現れだろう。 やっぱり獣人って分かりやすい。


 「いいの…?」

 「あぁ、いいよ。 だってあと364個もあるし。 ていうか、なんなら村のみんなに食べさせてあげようよ!」


 クルーシアはその場で泣き崩れそうだった。 まぁ、それも無理がない。 親の肩代わりをしてくれた人、そしてその周りの人達のお腹を満たす事ができるんだからな。


 「ほら、お湯準備するの手伝って!」

 「…うん!」


 俺とクルーシアはお湯の準備に取り掛かる。


 俺とクルーシアは水を集めに、先程の川沿いにやって来た。 この世界に来た時に感じた、「春っぽいのに桜の木に桜が咲いていない。」と言う違和感は、さっきのクルーシアの寝具を見て解決する事ができた。 ここから桜の花びらを集めていたんだろう。


 「おいしょ…んんしょ…。」


 クルーシアがものすごくワクワクした様な表情で水を汲んでいる。 それを見たこっちもかなりテンションが上がった。 普通に俺も嬉しい。


 「よし! 戻ってカップラーメンにお湯を注ぐぞ!」

 「おーー!」



 【残りのカップラーメン数】 364個(30個くらい減る)





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