第6話 獣人って怖いかも…。

 「んじゃ、この大量のカップラーメンは私が持つね!」


 クルーシアが大きな風呂敷を取り出し、カップラーメンを包み始めた。 流石に一個一個の重さは軽くても364個もあればかなりの重量だ。 あんな小さい女の子に持たせるわけにはいかない。

 

 「え、いやいいよ! 俺が持つよ。」

 「え? なんて?」

 「…。」


 片手で持ち上げていた。 俺は声が出なかった。 やっぱ獣人って怖いかも。


 「んじゃ付いてきて! 案内する!」


 俺とクルーシアはクラーク村に向かった。


 「私のクラーク村はね。 すんごく貧しい村なの。」


 そういや、あの神々しいじいさんがそんな事言ってたな。


 「悪い獣人を従えた魔王が、月に二回、その悪い獣人を私たちの村に派遣して、村から全てを持っていくの。」


 うそ、魔王もいるのかよ! そんな事聞いてないぞ! まじかよ。 有名な小説の流れで言うと俺がその魔王を倒す流れじゃねえかよ!


 「全てって?」

 「金銭、水、食料、衣服。 まぁ、衣食住すべて。」

 「そうなんだ…。」


 こりゃかなり闇が深いな。 俺の力じゃ魔王は倒せないけど、できるだけ力になってあげよう。


 「あまり遊ぶ物も何も無いし、本当に何にも無い村だから、明日の朝には旅立ってね。 錦木に退屈な思いさせたくないし。」

 「…お、おう。」

 「あ! そろそろ着くよ!」


 もうそろそろ着くらしいが、村らしき物は何も見えない。 もしかして地下にあるのか?


 「着いた! みんなーっ!帰ったよー!」

 「………。」


 目の前には悲惨な光景が広がっていた。 出迎える人々は皆、骨が剥き出しになる程痩せ細っていた。 服も穴だらけ。 家はそこら辺に落ちてるような木やゴミなどで出来ていた。 おそらく、その魔王の手先が来る度に家も壊していっているんだろう。 腕がない人もいた。 これは、かなりひどい。 


 「ラグおばさんは?」

 「おお、帰ったのかクルーシア。 ラグなら家の中におるぞ。」


 村長らしきおじさんがクルーシアの問いに答えた。


 「ところで、クルーシア。 隣にいる彼は誰なんだ?」

 「この人は錦木っていうの! 私が食糧を探していて、力尽きそうになった時に助けてくれたの!」

 「お、おおお…。 なんと優しき人…。」


 目の前にいた人々が突然頭を下げ始めた。 どうやらクルーシアは村の宝の様な子らしい。 見た感じ、この村に住む獣人はクルーシアだけみたいだし。 いや俺、カップラーメンひとつあげただけなんだけど!



【残りのカップラーメン数】 364個





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 読んでくださり、ありがとうございます。 感想、評価をしてくださるととても有難いです。 皆様の評価をもとに、作品をよりよくしていきます! まだまだペーペーですが、よろしくお願いしますm(_ _)m

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