第2章

2-1

 夏休みも終ろうとした時、すず美が彦根でライブがあるから、来てって連絡があって、ミマさんからも一緒に行こうよって誘いが来ていた。


 ミマさんは夏休みの間に運転免許を取ったから、車で行こうよって誘いも来ていたのだけど


「そんな 取り立てで大丈夫?」


「あっ 毎日 練習がてら運転しているから 大丈夫だよ 安心して」


 と 言う訳で、家の近くまで来てくれて、一緒に行くことになったのだ。免許の取り立てという割には、スムーズな運転で会場までもすんなり行けたのだ。


 すず美のグループが登場した時には、会場からもすず美への推しの声が飛んでいて、彼女は地元のアイドルになっているようだった。見終わった後の帰り道 途中で彼は「なんか  飲もうか」と、道の駅に寄ったけど、もう営業が終わっているみたいで、他の車もまばらで、駐車場の隅の方に停めて、彼だけが缶コーヒーを買ってきた。


「本当に 何にも 要らないの?」


「うん 飲みたくない」


「すず美ちゃんは すっかり アイドルだったね」


「そうね どんどん可愛くなっていってるみたいだよ」


「でも 真美っぺのほうが可愛いよ」と、私に被いかぶさって来て唇を・・・。両手は押さえられていた。


「うぅー うぅ~ん」と、塞がれたまま声も出せなかった。そして、私の胸を包むようにしてきた時、私は彼の手をどかせようとつねると、


「痛い!」と・・・ようやく、唇を放してくれて


「嫌よ! こんなの ダメ! よぉー」


「好きなんだよ 真美のこと・・・だから・・・」


「私 まだ・・・そんなこと ミマさんのこと そんな風に考えていないの ごめんなさい」


「そう でも こーやって 時々はデートしてくれるだろう?」


「う~ん 時々ならね でも こんなことするんなら嫌よー」   


 2学期が始まって、しばらくすると、文化祭の準備に追われていて、私 書の作品が、なかなか思う様に行かなくて何度も書き直していた。そんな時、クラブの部長の立石浩一郎たていしこういちろうさんが、いろいろとアドバイスをしてくれて、まぁまぁのものを仕上げていた。


 文化祭が終わった後、浩一郎さんから、ドライブに誘わて、彼も夏休みに運転免許を取ったと言っていて、彼の父親が駅前辺りに土地を持っていて、駐車場を運営していて、他にも、建築工事用の車両のリース事業も経営しており、新幹線延伸の兼ね合いもあって調子良いみたいなのだ。彼も高校卒業したら、その会社に入るみたいで、早々に運転免許を取りに行ったみたいなのだ。


 レインボーラインの展望台まで行こうと、家まで迎えに来てくれることになっていたのだけど、免許取り立てで、やっぱり 私は少し不安だったのだけど、迎えに来た車はパール色のクロストレックが止まって、彼が降りてきた。さすがに、お金持ちの息子という感じ。


「真美 そんな短いのー まぁ 惑わして取り込むんやったら ええんやけど」と、出て行く時 菜美に見送られていたのだ。


「うー スカートのことかぁ? インパンつきやでー 平気やー」 私 スカイブールーのラップスカートスカートで確かに、見た目 短い。


 意外と、彼は安全運転で、そんなにスピードも出さないで運転していた。


「大事な女の子を乗せているからね 事故なんか起こしちゃぁー 大変だしね」と、慎重なのだ。


「運転免許 取るのって難しいんでしょ?」


「うん まぁ 内緒だけどな 前から会社の中で時々 練習してたからー 慣れたもんだってよー スイスイさー そーいえば ミマも一緒だったんだよ」


「あー そーいえば 免許取ったとかー・・・」


「へっ ミマのこと知ってるんか? あーそうか すず美の仲間なんだー」


「うん すず美のコンサート 時々行くからね 知り合ったの」


「すず美ってよぉー アイドル気取りしてるけどー 所詮 田舎だけだもんなー それに、本人は可愛いつもりでも まなっぺの方が ず~っと可愛いよ」


 私 褒められて、少し浮き浮きしてきていたのだ。クラブに入ってから、彼のことは知っていて、でも普通の先輩としか。でも、このところ距離が縮まって、私の中で変化があってきたのだ。意外と、感じの良い人と・・・だから、余計に・・・。


そろそろ あちこちで黄葉も始まっていて、雲も無く頂上からも五湖がきれいに見えていた。降りて来て、豪勢にも鰻重をご馳走してくれだのだ。


「まなっぺ 俺と付き合ってくれないか? 俺は、来年は親父の会社に入る まなっぺ には 苦労させない 卒業したら、俺の嫁さんになってくれ まなっぺが今の民宿を続けるんだったら 場合によっては、援助を考えても良いよ」


「はっ そんなぁー いきなり・・・」


「ずっと 想っていたんだ まなっぺのこと 誰にでも優しい 気立ても良くて とにかく 可愛い 申し分ないんだ」


「あのぉー そんな風に・・・とっても 嬉しいんです けど・・ 先輩のこと嫌いじゃぁ無いですよー でも あんまり 知らないですし・・・」


「じゃぁ 徐々に知ってくれ 直ぐには言わない とにかく付き合うということに・・ 良いよね!」


「えっ まぁ・・・ お友達としてなら・・・」


 私 本当は嬉しかったのだ。自分でも モテ期が来ていると感じていた。ミマさんに浩一郎先輩に・・・続けて・・・告られた。今まで菜美ばっかり目立っていたけど、私だって・・・と


 そして、車に戻った時、雰囲気的に彼の顔が近づいてきて・・・(まずい・・・) 私は、その時、ガクさんの顔がチラついていた。


「まって! まってぇー キスしようとしてる? ダメよ! そんなことしたら もう 会わないからネ!」


「ふふっ さすがに 品行方正なんだな わかったよー」


 だけど、そんなに気まずいことも無く、家まで送ってくれて、普通に さよならをしたのだ。この人 普通に 好いかもーと

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