司会・悪役令嬢「これより王太子殿下が婚約者である私を断罪します」

堀多 ボルダ

プロローグ

 学園のホールに向かう廊下を四人の若者が歩いていた。


四人は会話をすることなく、まっすぐに前を見て歩いている。薄暗く人気のない廊下には、ただ四人の靴音だけが響いていた。

やがて、二人の騎士が立つ大きな両開きのドアの前に着いた。


「準備はいいか?」

王太子オーギュストは仲間の顔を順番に見る。


「ええ、これしか方法がないもの。仕方がないわ」

男爵令嬢ヒロナは悲しそうに目を伏せた。

「証拠はちゃんとある。問題はない」

宰相子息サイモンが自信に満ちた表情を返す。

「あの女が暴れたとしても俺が抑えるから心配するな」

騎士団長子息キースが親指で自分を指して、歯を見せて笑った。


オーギュストは隣に立つヒロナの肩をいたわるよう抱いた。


「今頃、この扉の向こうは卒業パーティで盛り上がっている最中だろう。俺たちはこれからその場に乗り込んでいき、俺の婚約者であるアレクシア・ブラックバーン公爵令嬢を公の場で断罪する」

四人は顔を見合わせ、最後の確認をするかのようにうなずきあった。

「よし、行こう」


オーギュストが合図をすると、二人の騎士がそれぞれ左右のドアノブに手をかけた。

重いドアがゆっくりと開かれる。ドアの隙間から徐々に光が漏れてきて、四人を照らしていく。


ドアの向こうにある己の輝かしい未来にオーギュストの胸が高鳴った。

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