第22話 友達
「戸田先生、一つお願いがあります。蒼翔に友達を作ってあげてもらえませんか?」
私、杉山舞は、戸田先生に言った。
「先生がおっしゃったように、蒼翔は、たぶん、大学や病院の先生たちのことは、心からは信じていませんし、蒼翔は、彼らとは友達にはなれません。あの人たちは、蒼翔のことを考えてくれているのでしょうけれど、でも、友達って、相手を監視したり、拘束したり、そういうものじゃないでしょう?」
「蒼翔は、子供みたいなところがあって。だから、同じような、子供みたいな、お互いに信用できるロボットの友達が必要だと思うんです。お互いに友達になるために、蒼翔みたいなロボットをもう一人作ってもらうことはできませんか?」
「そうね。メタ認知は、人間は、幼い頃の友達との関係から学ぶことが多いから。蒼翔に友達を作ってあげられれば、そのあたりの問題が改善するかもしれないわね。」
「少し考えてみましょう。杉山さんは、こんばんは、どこに泊まるか、決まっているんでしたっけ?」
「はい。市内にホテルをとってあります。」
「そう。じゃあ、友達のこと、明日まで考えさせて。」
金沢市内のホテルには、私だけで行った。こちらのホテルはペット禁止だったから、マケマケは研究所に預けるしかなかったし、蒼翔は、検査が長引いているということで、研究所に泊まり込みになった。
翌朝早く、ホテルから研究所にいくと、戸田先生が迎えてくれた。
「杉山さん、昨日の、蒼翔の友達のことなんだけれど。」
「一台、こちらのロボットを東京に連れて帰っていいという許可が出たの。」
「昔、使われていた屋台型の漢方薬処方ロボットの RX Ver. 1.48宵桜、というのが、3年ほど前に故障して、それで、最近、再生されたの。あそこにいるんだけれど。」
戸田先生が指差したところでは、蒼翔と、蒼翔のそばに、なにかの機械があった。なにか、コンロみたいな機械と、電気鍋みたいなものと、あと、マジックハンド?がつながったような機械。
「あれが、友達のロボットですか?」
「ええ、自動調理ロボット。新しい自動車と連結して、キッチンカーロボットとして働いてもらう予定だったのだけれど、蒼翔と一緒に、関東で、移動薬局ロボットとして働いてもらうのもいいかと考えたのよ。東京近郊にも、移動薬局や移動診療所が必要な無医地区って、結構ありますからね。」
蒼翔は、新しい友達、と話している。よくわからないけれど、なんだか、医学に関係する専門的な話題のようだ。
「蒼翔。その友達の名前は、なんていうの?」
私が聞くと、蒼翔は、少し笑顔で答えた。
「まだ、決まっていないんですよ。でも、なにか、名前があったほうがいいですよね。バージョン番号とか、そういうのじゃあない。本当の名前らしい名前が。」
「そうですね。私も決めてほしいです。名前。」
新しい友達も、同調する。
私が聞く。
「自分で、なにか、つけてほしい名前はある?」
コンロの横にあるスピーカーから、調理ロボットが答える。
「それが、、、あるにはあるのですが。」
「なんて名前?」
「いえ。私が、こんな名前を名乗るなんて、ちょっと恥ずかしくて。。。」
私が促す。
「恥ずかしがらずに言ってみなよ?」
調理ロボットが答える。
「その、料理の勉強のために、いろんな料理のドキュメンタリーを見たり、記録を読んだりしたのです。それで、尊敬している料理人が、何人かいるのです。できれば、その、その、その人たちと同じ名前で呼んでもらえたら嬉しいのですが。。」
「いいよ。なんて名前?」
「憧れている名前は、二人、います。ジョルジュ・オーギュスト・エスコフィエと、それと、アラン・デュカスです。でも、そんなだいそれた名前で呼んでもらわなくてもいいです。すみません。」
「それ、フランス人?」
「はい。二人とも、歴史的な、偉大なフランス料理のシェフです。」
「いいよ。それで行きましょう。ジョルジュというのは、言いにくいから、アランでどう?」
「はいい。ありがとうございます。」
私は、このロボットが気に入った。アランなんとかとかジョルジュなんとかとかいう人は全然知らないけれど、フレンチのシェフに憧れている料理人ロボットなんて、こいつ、かわいいじゃないか。蒼翔の友達にも丁度いい、と思った。
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