全能力が二番目の器用大富豪が最強になる話

雨霰

プロローグ 器用大富豪の誕生

器用貧乏、この言葉は悪い意味で使われていると僕は思う。なんでも中途半端にできる人、でも本職の人には勝てない。強い人が表向きに賞賛される世界、その人たちに負ける器用貧乏たちはいつまでたっても日の光を浴びることはない。そんな世界僕にとっては最悪でしかない、なんてったってその器用貧乏が僕だからさ。最初のうちは褒められても、結局賞賛を浴びるのは上にのし上がっていく者たちだけ。水泳、陸上、習字、ピアノ、勉強、サッカー、全部打ちのめされた。努力してもたどり着けないものがそこにはあった

ああ、神様はなんで僕にこんな能力の振り分け方をしたんだろう

いっそのことならアインシュタインみたく一個に極ぶりされてた方が人生楽しいだろうに

「はあ」

高校の帰り道にあるタイルを眺めながら一息ついた

今日は再就職するために、IT系の会社の面接を受けてきた。

「君ー、なんでこの会社に応募したの?」

「それは、、IT業界に興味があって、、」

「え?でもこの履歴書見るとITの資格少なくないですか?これじゃうちの領域ではやっていけないよ」

「ですが、ほかの領域での資格をうまく活用してIT業界では、」

「ああ、もういいよ。次の人入ってきて」

これで落ちたの何社目だろう

さっきまで下を向いていた目線を空にあげ、神様なんているはずないのに心から祈った

まあじで、頼むよー

夕方にもかかわらず太陽がさんさんと照っているのが上に挙げた手の隙間からみえた

家の近くの河川敷まできた

ここをまっすぐ行って川沿いの所にある茶色く古めかしい建物

そこの二階の一番手前の部屋が僕の家だ

ぎしぎしときしむ金属製の階段を上がると僕の部屋のドアノブがきれいにとれていた

空き巣だ 

疑う余地もなくそう思った

どうしよう、でも正直空き巣がいるのかも確認ついてないのに警察にいうのも、、

恐る恐る自分の部屋近づき、とれたドアノブを確認した

ギザギザしたあとがつかむ部分に残っていた

斧のようなもので取っ手の部分がとられていた

静かに恐怖を感じ、上をみたころにはもう遅かった

太陽に反射したまばゆい斧の光が僕をとらえ、次の瞬間地面に転げ落ちた

首元が熱い

でも自然と痛くはない

ぼやけた視覚で犯人らしき人物が手を震わせながら斧を捨て逃げるように去っていったのを目撃した

ああ、あっけない人生だったな

結局、器用富豪にはなれなかったな

僕は死んだ

確実に死んだ


なのに、、


俺は情けない器用貧乏。以前の世界ではそのせいで定職につかず、とぼとぼと生きていたら空き巣にやられて死んでしまった

したらこの世界に転生してきたわけなんだけど、

小さな白い妖怪(ゴースト)を素手で倒した


なんなんだよ、こいつらとこの世界

あいつ何も説明してくれなかったし

さかのぼること数時間前


※※※



あれ、俺死んだんじゃなかったのかよ

いやーあなたは完璧に死んだわ

そうやって僕の前に現れた人物は金髪のいかにも女神様みたいな奴だった

なんなら、あんたはほぼギロチンくらったみたいな最悪に近い死に方だったわよ

記念に見る?

異世界転生の漫画はいくつかしか読んだことがないが、それの特徴に当てはまるようなちょっと失礼な女神さまだ

みないよ

んで、俺は転生できるのか?

転生できるんだったら、何かに特化した奴にしてくれねえか?

あんた俺が前世でどういう生き方してたか知ってんだろ?

ええ、もちろん

でもそんなことはしません

は?

あなたは本当に専売特許の人物になりたいわけ?

おどけた表情からは想像できないほど、鋭い目線でこちらを見てきた

それに少しばかリ動揺して固まっていると

あなたは器用大富豪になりたいんじゃいの?

なんでもできて皆から頼られる存在

でも、そんな都合のいいことできるわけがないってあっちの世界で思い知らされている

だから、専売特許なんていう逃げ道を作ったんでしょ?

図星過ぎて少し笑ってしまった

まさか、心まで読まれてるとは

さすが女神様ですね

では、”女神様”ならそんなお願いかなえてくださるんですか?

いーや、私はそんな高貴な存在じゃないし、最強ってわけにはいかないわ

は?さっき、、

でも、あなたのあっちでの能力値は実はかなり高かったんだよ

それをうまく引き継ぐことができるから、器用上流階級ぐらいにはできるかもしれないね

あとは自分で頑張りなさい

この世界でもっと自分らしく生きなさい

そういうと、自分の真下にポータルが生まれてワープが始まった

女神の顔は何とも切なく、幸運を祈るような目をしていた



ということがあった

正直、異世界物は見たことがあったけれどこんなあっさり生まれ変われるとは思ってなくて、少し動揺している

ゴーストを倒した手は少し震えていた

この白いゴーストたちは、俺がワープした先にいた

たれ目で、小さなマスコットキャラクターのようなかわいらしい見た目でつい撫でようとしてみたら、いきなり体当たりをしてきた

僕もこれが最初の異世界戦闘かと思い、張り切って素手で攻撃してみたら、すぐに粒子となって消え、経験値となった

この子たちは、自分が死ぬたびに近くの仲間を呼ぶ能力があるようで、奥側の森林を覗いてみると、大量のゴーストが待ち構えていた

そのゴーストをひたすらに倒した




※※※



これが数時間もかかってしまった経緯である

今のところわかることは、このゴーストを倒すと経験値がもらえることと、このゴーストがめちゃめちゃかわいいことだけ

それ以外はさっぱり

倒し切った俺は、森林の開けた場所で光り輝く月を挙げた手の隙間からみた

昼までは、あっちの世界にいたのに、こんなことになっちまうなんて世の中何がおこるかわからんなー

そんなことをぼやいていても、何も始まらないと心を奮い立たせ、何か自分にできることはないかと考え始めた

そうだ、さっき経験値がゴーストからでたんだから、ステータスを確認する場所もあるはずだ

こういう時は、大体声に出して言えば出てくるもんだろ

ステータス、オープン

、、、

何にもないか

じゃあ

と、視界を確認し始めると、斜め左上のほうに小さな三角マークを見つけた

明らかに実勢海に存在しないゲーミングのような色をしていたので、それをタップした

そうすると

ピコん

という音ともに青色のウィンドウが目の前に現れた

よっしゃ来た

と思ったのも束の間

画面の左半分を占めている能力値のパラメーターは、ゲームのバグのように歪んでいて自分がどんなステータスをしているのかわからなかった

ただ、項目としては、上から時計回りにM(筋力)、L(体力)、P(政治)、B(頭脳)、T(技術)、G(除霊)となっていて、左上には、総合値を図るような四角い枠組みがあった

あいつが能力高くしてくれてるってことを信じるしかないな

わかることは、除霊という言葉からこの世界には、さっきのゴーストみたいな霊的存在がはびこっていること

それだけでも、進歩だ

ええと、右側はっと

目線を右側に移動させると

僕の名前と年齢、職業が記されていた

名前は真田 東二

転生前の名前とはなんの関連性もない

ということは、この世界に関係しているということになる

日本の名前が使われているということは、日本の過去、未来、はたまた違う場所を表しているのだろうか

ある程度、検討はついたものの何とも煮え切らない感じになってしまった

まあ、わからんことは突き進んで見るしかないか

よっしゃ、頑張っていくぞーー


おぬしは誰だ?

やべっ

ついうっかり声を出してしまった

相手の方は、俺を気にして顔を出してこない

まあ、そりゃそうか

声色的に敵意むき出しって感じでもないし

僕の名前は真田 東二だ

聞かぬ名だな

職業はなんだ?

そういえば見てなかったな

えーっと

ん?

どうした?

言えぬ職業なのか?

少し高ぶった声に変った

いやー、何と言いますか、、、

職業:二番目ってなってるんですけど

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