4話「崩れゆく“王様”」
#4話「崩れゆく“王様”」
数日ぶりに、柴田が学校に戻ってきた。
姿勢は低く、髪も乱れていてあのいつもの“イキった態度”は消えていた。
教室のドアを開けた瞬間空気がピリッと張り詰めた。
「あっ……」
小さく誰かが声を漏らす。
その後はみんなこそこそ話をする。誰も柴田に話しかける人はいなかった。
柴田は無言で自分の席に向かったがその視線は落ち着きなく泳いでいた。
当然のこと周囲は誰も話しかけようとしない。それどころかいつもの取り巻きの岸本も藤本さえも目を合わせようとしなかった。
(へぇ……ここまであからさまに“孤立”するとはな。いつもはつるんでいるのにいざとなったら冷たいもんだ)
俺は窓際の席で頬杖をつきながらその様子を冷静に観察していた。
もはや彼は、“王様”ではない。
2時間目、前の担任だった村井の代わりに井之上先生が授業を担当した。
井之上先生は板書の途中で、ふと手を止めて生徒たちを見渡す。
「今後、学校内でのいじめやハラスメントは一切許しません。見て見ぬふりをした者も、同様に責任を問います」
無機質な声だったが、十分に重かった。
それにしても自分が罰せられたくなかったら生徒同士チクれってか、この先生もたいして変わらないね。
そして柴田の肩がピクリと動いたのを俺は見逃さなかった。そりゃ主犯格として疑われているからな。ビクビクしていることだろう。
休み時間。佐藤くんがそっと教室を出ようとしたその時――
「おい、ちょっと待てよ」
柴田が立ち上がり、佐藤くんの肩を掴んだ。だが、その手に力はない。
「……昨日、謝ったよな?」
「え?」
「だからよ、もうそれで終わりでいいだろ……?」
どうやら学校側が柴田に入れ知恵したようだ。「実は生徒間ではトラブルがなかった」ということにしたいのだろう。学校側も腐っている。
佐藤くんはしばらく黙っていたが、やがて小さく言った。
「僕は……あなたに謝られた記憶なんてない。そもそも謝られたくもない」
「っ……!」
「でも先生には正直にありのままを言っておく。そして僕はあなたに復讐するつもりはない。だからもう話かけないでくれるかな?」
静まり返る教室。柴田は顔を真っ赤にしながら無言で席に戻った。怒り狂っているようだ。
凄い形相で何かぶつぶつ言っている。
それを誰も止めないし、誰も同情もしなかった。遠目に見ているだけ。
柴田は疑心暗鬼になっているようだな。
他の人が少し話をするたびに「びくっ」としたりそちらの方を睨んだりしていた。
馬鹿だな。そんなことをすればするほど孤立するだけだ。
(お前の居場所なんて、もうどこにもない)
俺は心の中で呟いた。
王様気取りで踏みつけてきたものは、全部跳ね返ってきたんだよ。
――だが、これで終わりじゃない。
柴田が社会的に追い詰められた今、次は“家庭”だ。
柴田の親は外面ばかりを気にする典型的な“見栄家族”。
もう学校から正式な通知が届いているよな……あの様子では家でも地獄が始まっているはずだ。
もうこれ以上手を下す必要はない。勝手に崩れていく。もう終わりだ。柴田には学校にも家にも居場所がなくなる。
おそらく柴田の親がリセットのために転校させることになるだろう。
俺はもちろんその転校先にも柴田がやってきたこと、そして転校した理由を書いた文書を送るつもりだ。
後はその学校の上層部が勝手に調べるだろう。そして親が呼び出されて再び激怒。柴田に辛く当たることだろう。これで柴田は転校先でも家庭でも針のむしろだ。
もっと追い詰めてもいいが面倒なのでこの辺にしておくか。そろそろ次だ。
次の標的は――岸本。
あいつは柴田の影に隠れて好き放題やっていた小物だが“無害な優等生”を装っていた。
だが俺は全部知ってる。あいつの裏の顔も、汚い証拠も、過去のトラブルも。
(待ってろよ、岸本。次はお前の番だ)
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