第23話

第23話



「「怪談話??」」



俺とレインの声がハモる



「そう、怪談話。っていってもごく最近噂になってきた話なんだけどね、七不思議まではいかないけれど、あえて言うとしたら三不思議ってところかな」



天宿先輩は第2会議室の部屋の電気を消し、スマホのライトで自分の顔を照らしながら言う



「1つは旧体育倉庫の幽霊、なんでも誰もいなはずなのにボールを地面につく音が聞こえてくるんだって! そして2つ目は旧音楽室の幽霊、その場所は楽器を全部新しい方の音楽室に移したはずなのに楽器みたいな音が鳴ってるんだ! そして最後は旧科学準備室の幽霊、そこにはもう何も残っていないはずなのに何かが割れたり落ちたりするような音が聞こえるらしいんだ!」



天宿先輩は俺たちをひびらせたいのかテレビで怪談話をする人のように抑揚をつけ、いきなり大きい声をだしたりしておどかしてくる。


子供じゃあるまいし、こんなことでビビる高校生いないだろ......


でも一生懸命俺たちを驚かそうとしてくる先輩はとても可愛かった



「......と、まあ最近噂されてる怪談話なんだけど、一応城西祭では旧校舎も使うんだけど、この噂のせいで皆が気味悪がって準備がぜーんぜん進まないの! 長月さんに聞いたらレン君たちなら解決してくれるかもーってことで相談しに来たんだけど、どうかな?」



話を終えた後に部屋の電気を付けた天宿先輩はずいっと顔を近づけながらそう言う


これはトラブルというか本当に雑用だな......


ウインクしながらシクヨロ〜☆とか言っている長月先輩の顔が容易に想像できる



「まぁ解決できるかは分かんないすけど、先輩の頼みだし何があるか見てくるくらいなら......」



そう言うと天宿先輩は



「本当!? いやー、相談してみるもんだね。こんなこと準備とか部活とかで忙しい他の人達に頼むこと出来ないからさ、助かったよ!」



俺の了承を聞くと天宿先輩はそれじゃ! と言い部屋を後にする。


どうもこの学校の3年生は下級生というか特に俺を便利屋扱いしてる節がある気がする。


俺がはぁとため息を着くとスマホの通知が鳴り、見てみると天宿先輩からDMが来ていた



<解決出来たら連絡ちょうだいね! あ、あと後夜祭の件も考えといてねーー!♡>



後夜祭の件って、あれ冗談じゃなかったんだ......


あんなクールビューティな先輩から誘われるなんて最近の俺はなにかフェロモンでも分泌しているのか......?


俺は早速天宿先輩に教えてもらった旧校舎の場所に向かおうと、さっきからずっと無言のレインの方を見る



「レイン、行くぞ。てかなんでさっきからずっと黙ってるんだよ、天宿先輩にそんなにキレてるのか?」



「違う、わよ」



「じゃあ一体どうしたっていうんだよ、トイレか?トイレなのか?」



「だから違うってば!あと勇者はトイレなんて行かないから!」



大きな声で否定するとレインは泣きそうな顔をしながら俺の手を掴み、



「怪談話、怖い.....」



前言撤回、 びびり散らかしてるヤツが目の前にいました!






俺は震えるレインと手を繋ぎながらもまだ完全には暗くなっていない夕暮れ時に旧校舎へと立ち入る。


今俺たちが通っている城西高校は俺が1年生になる前に建て終わったばかりの新校舎だ。

旧校舎は最近まで使われていたため、比較的まだキレイな状態だった。


城西高校の校長が、せっかくこんなに広いんだから城西祭で活用しないのは勿体ないと提案したのでまだ旧校舎は取り壊されていない。


レインは天宿先輩の話がよっぽど怖かったのか若干腰が引いているし、しがみついた俺の腕から離れようとしない



......



こいつは勇者のくせに虫歯を怖がって泣いたり一緒による寝れないだけで泣いたり怪談話を聞いただけで泣いたりと勇者かどうかも疑わしいくらいに泣き虫な気がする。


よしよしとレインを宥めながら歩いていると一番最初にたどり着いたのは旧体育倉庫の前だった。


事前に長月先輩にDMを送っていたため、必要な分の3箇所の鍵は貰ってある。


俺は本当にボールをつく音がするのかと倉庫の扉に耳を当てる。


倉庫に近づきたくないが、俺からも離れたくないレインは少しの間抵抗していたが、やがて観念したように俺と共に扉の前へと耳を当てる。


何も聞こえない時間が10秒ほど経過し、やっぱり噂は噂止まりだと少しホッとする


幽霊などの存在は信じていないが、やはり怖いものは怖いのだ。


俺がそんな事を考えながら倉庫の扉に鍵を差し込むと



<ポーン、ポーン>



とバスケットボールをバウンドさせる様な音が聞こえてきた。


思わず耳を疑った俺はレインと目を見合わせると、もう一度扉に耳を当てる



<ポーン、ポーン>



やばい、ガチだ。こんな倉庫の中に人なんかいるわけないし、絶対モノホンの幽霊だコレ!


俺はびびりながらも、頼まれた仕事な以上、

やらなければならないと意を決して扉を開けようとするが、レインが泣きそうになりながら必死に俺の手を止めてくる



「おい、離せよ、扉開けらんないだろ」



「嫌よ、いや! あたし怖いの本当にダメなの、ゴーストとかアンデットだとかもあっちの世界でもなるべく避けてきたんだから!」



「知らねえよ、少なくともこっちの世界の幽霊は直接危害とか与えられないはずだから多分きっとおそらく大丈夫なはずだから!」



「ちっとも大丈夫に聞こえないわ!」



しつこく俺の手を引き止めるレインだが腰がどんどん引けていっているため、俺でも勝てそうなくらいに力が拮抗する。


もう少し、何かレインの力を抜けさせられれば.....



......!



名案を思いついた俺は手を抑えるレインの耳元へ



「ふーっ」



「!?」



「今だ!!」



「ーーーッ!!」



息をふきかけた途端レインの力が抜け、

倉庫の扉が開く



「よっしゃ、初めてレインに勝った!」



俺が本来の目的を忘れ、勝利の舞をすることに夢中になっていると



「グルルルル....」



扉に向けている背中というか後頭部に空気のようなものが吹きかけられる


恐る恐る倉庫の方へと顔を振り向けると......



......



むちゃくちゃでかいガーゴイルみたいなやつが俺とレインを見ながらヨダレを垂らしていた

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