第48話 魔王と王様

「ファンライズの王よ。

 ワシが魔王国魔王、平朝臣たいらのあそん織田三郎信長である。

 ようこそ、魔王国へ参られた。

 さぁ、両国の交流を進める為に語り合おうではないか。」


 ファンライズの王様といつものメイドさんを連れて転移をで魔王国へ赴くと、信長さん自らが歓待をしてくれた。


 本当は宰相さんも連れていく予定だったが、今回の会談はファンライズ内には極秘の為に、王様がファンライズにいないことすら露見をさせられないので、ファンライズの王城で王様へのつなぎを全てシャットアウトする役目を宰相さんが担っている。


 大きな方針を王様と魔王で決めることが出来れば、詳細は宰相さんと魔王国の副官であるハミルトンさんとで別途機会を設けて煮詰めていけば良いだろう。

 その際は俺がまた転移でお手伝いをするのだろうけど、逆にハミルトンさんをファンライズへ送ってもいいな。


 それで、今回の会談の場にいるのは、ファンライズの王様とメイド、信長さんとハミルトンさん、それに俺とクロって感じだ。

 マジで俺は場違いな気がするけど、王様からも信長さんからも同席を頼まれたので、仕方がない。


「魔王信長殿よ。

 歓待痛み入る。

 まずは、会談の前に、感謝の意を示しておきたい。

 ファンライズへの魔物の襲来が止まったおかげで、兵士達の命の危機が無くなった。

 新たな地域の開発もおこなえそうで、本当に感謝をしておる。」


「構わん、構わん。

 そもそもは魔王国で魔物を殺さずに追い払うという方針をしていたのが原因であろう。

 何なら、賠償でも致そうか?」


「賠償なんて滅相もない。

 これから交流をしていこうという国とその最初から賠償問題があったら、友好的な交流は望めまい。」


「人間の国と魔族の国。

 友好的な交流が望めると思うか?」


 信長さんの目が真剣なものに変わった。

 それは、何処までも相手の真実、本音を覗き込もうとしているのかもしれない。


「少なくとも、貴殿が魔王をしているのならば、友好的な交流は出来るでしょう。

 魔王国からすれば、ファンライズの魔物の被害など気にする必要もないのに、ワタル殿の話だけで魔物に対する方針を変えて頂けた。

 その様な方が治める国とだったら友好的な交流が出来ないはずがない。」


 ファンライズの王様も信長さんの眼力に負けずに、力強く答えた。


「ははは、流石であるな。

 貴殿とだったら、ワシもよい交流を持てるであろう。」


 信長さんが破顔一笑をした。

 しかし、王様の方は真剣な表情のままである。


「ただ、我が国では大きな懸念が一つあります。

 それは次代のファンライズの女王を担うはずの、我が娘エステルのことです。

 我が娘ながら、大陸制覇などという野望を持ち合わせております。

 間違いなくファンライズが魔王国と交流を持とうとするならば抵抗をしてくるはずです。

 しかしながら、ファンライズで私の後継となるのはエステルしかおらず。

 正直、一番の障害になるのが我が娘とは申し訳がたたないのだが。」


 そう話をしながら、王様は声も小さくなっていってしまった。


「ふむ、その件はワタルからも聞いておって、これから交流を持つとして大きな懸念になるのではと考えておった。

 その娘が野望を捨て去ることはできんのか?」


「我が娘ながら、かなり厳しいかと。

 魔物からの被害も魔王国から意図的なものと思い込んでおり、さらにはそれなりに政治力もあり同じ考えの人間を一定数抱えているので、私が強権的に魔王国との交流を持とうとしたら、最悪、国を割る可能性までがある。」


 ファンライズと魔王国の交流を持とうとすれば、エステルが反対をして国を割る可能性もある。

 それでも、ファンライズとしては唯一の後継者であるエステルを切ることは難しい。


 これって、かなり難しい問題だよな。

 王様も信長さんも悩んでしまっている。


『クロ、何か解決策はないかな?』


『吾輩はあくまでも、ワタルの師匠ってだけにゃ。

 この世界の行く末に口出しをする気はないにゃ。

 ただ、ワタルがこうしたいって希望があれば手伝ってやるにゃ。』


 相変わらず厳しい猫だが、俺に対しては甘い時がある。


『俺としては、ファンライズも魔王国も世話になったし、エステルの野望も気に食わないから、2つの国が平和的かつ友好的に交流を持ってくれれば良いと思うよ。』


『ワタルの希望は分かったにゃ。

 ちなみに、ワタルは元の世界に戻りたいとは思っているかにゃ?』


 何故か唐突にそんな質問をして来た。


『そりゃ、元の世界に戻りたいとは思っているよ。

 ただ、こんな中途半端な状態で帰りたいとは思っていないよ。』


『今すぐに帰る方法もあると言ってもそう思うかにゃ?』


『う、うーむ。

 それでも、やっぱりこんな状態じゃ帰れない!』


『分かったにゃ。』


 すると、クロが浮かび上がった。

 今まで、悩んでしまって口数が減ってしまった2人を含めて、この場の全員がクロのことを見ている。


「吾輩から提案があるにゃ。」

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