第29話 盗賊を処す

 俺が見るからに怪しい馬車に近づいていると、まず手前で森の中で潜んでいた奴が俺を発見出来たようで、森の中を俺に見つからないように馬車の方へ駆けていく。


 そいつが馬車馬車の周りにいた連中に話しかけると、3人だけ馬車に残して他の連中は森の中へ散っていった。


 要は残った3人で馬車を使って街道を移動中に止まってしまったという設定なのだろう。

 それで油断をして話しかけたら、周りの連中が俺を囲んで諸々されるのだろう。


 はぁ、これで俺は鴨認定確定なわけだ。


 ちなみに全て魔力の返ってくる反応と魔力で強化した視覚で確認をしているので、連中は俺が気がついているとは、つゆほども思っていないだろう。


 俺が馬車の目の前まで到着すると、馬車に残った連中が話しかけて来た。


 もう俺の中では命を奪わなきゃいけないことへの意識が強すぎて、適当に上の空で

 話を流していたら、案の定、森の中からぞろぞろと人が集まり囲み始めた。

 そして、通行料だの身ぐるみ置いていけ等々のまさにテンプレなことを言い始めた。


 ここまで想定通りだと、思わず笑いが出てしまう。

 すると、向こうは俺が連中を舐めているのかと思って、剣を出して脅し始めた。


 もう良いかな。

 クロに目を向けると、小さく頷いたので一気に決めてしまうことした。


 盗賊全員の首にターゲットをロックするが如く、魔術の発動ポイントをセッティングして、風の刃で首を落とした。


 一撃で全員が死亡をしてしまった。

 相手が魔術師とか考えていなかったのか、あっさりと終わってしまった。


「魔術師なんて滅多に存在しないにゃ。

 ファンライズの戦力も騎士や兵士に比べると魔術師の数は圧倒的に少ないにゃ。

 そんな貴重な魔術師が1人で街道を歩いているなんて想像出来なくて当たり前にゃ。」


 クロから言われて確かにと思った。


 さて、逃げ出した連中がいないか魔力で再度探ってみたが見つからなかったので、今回の盗賊達は全員仕留めたようだ。


 実際に人を殺してみたが、明確に俺を害そうとして来た連中だったからなのか、そこまでのショックは受けなかった。

 覚悟を事前にしっかりと固めることが出来たのもあるかもしれない。

 今はやった直後なので、後々思い出して落ち込んだりしなければ良いなと思うくらいだ。


 さて流石に、これだけの数の死体を連れて王都へ移動するのは嫌だったので、一箇所に集めて燃やすことにした。

 正直、手作業で集めるのも嫌なので魔術で引っ張って来た。

 クロから色々な魔術を教わっていたので、こういう時に便利である。


「そろそろ、アイテムボックスという荷物を無限に収められる魔術も覚えて

 みるかにゃ?

 そうすれば、この死体も全部持っていけるにゃ。

 アイテムボックス内の時間停止も覚えれば新鮮な状態を維持できるにゃ。」


 いや、流石にアイテムボックスが使えるようになっても、人間の死体を入れて持ち歩きたくないぞ。


 てか、クロがアイテムボックスを使えるなら、そこに入れちゃえば良いのではないか?


「吾輩のアイテムボックスは貴重な品が満載にゃ。

 そんなのと死体を一緒にいれたくないにゃ。」


 いや、この猫もアイテムボックスに死体を入れるのを嫌がっているじゃないか。


 さて、死体の処理に合わせて、馬車も一緒に燃やしてしまったので、残ったのは1頭の馬。

 盗賊が持っている馬にしては結構ガッシリして体格が良いので、この馬も誰かから奪ったのだろう。


 ここに置いておけば、野生に帰って生きていけるかな?

 馬の集落のような反応も確認ができるし。


「多分、無理だにゃ。

 この馬は家畜として生まれ育った馬だにゃ。

 ずっと人間と一緒に生活をしていたのに、急に野生に戻すとか中々に厳しいにゃ。

 どうしても、連れていけないにゃら、ここで楽にしてやるのがこいつの為にゃ。」


 クロにそう言われてしまい、馬の顔を見ると馬もつぶらな瞳で俺を見ていた。


 ギクッ。

 いや、今まで魔物を殺しまくっていたし、今日は人を殺す経験はしたよ。

 それでも、そいつらは俺を襲って来たし、命を奪おうとする奴を返り討ちにしただけだ。


 別に何も悪いことをしていない動物の命を奪うとかは、今の俺には出来そうにないわ。


「じゃあ、連れていくしかないにゃ。

 ワタルも乗馬の訓練もしたのだから、この馬に乗って王都へ向かうにゃ。」


「いや、それにしたって、鞍やあぶみも無いのに乗りこなせるのか?」


 馬車を引くために使われていたので手綱はある。

 馬車用なので長さの調整は必要だろうけど、乗馬でも代用は効くだろう。

 ただ、乗馬に必要な他の馬具が全く足りない。


「そこは身体強化で何とかするにゃ。

 というか、吾輩は猫であるから乗馬の経験はないにゃ。

 そこは人間のワタルが何とかするしかないにゃ。」


 確かに、猫に乗馬の仕方を聞いた俺が悪かった。


 というわけで、鞍もなしに馬の背にまたがって、あぶみもないので身体強化した足で固定をする。

 あまり強化を強くすると馬が痛がるだろうから、上手く調整をして何とか乗りこなせるようになった。


 正直、盗賊の連中を始末する時間よりも、この馬に乗りこなす時間の方がかかってしまったが、それでも国境の前線へ行く際に乗馬の練習をしていなければ、もっと時間がかかってしまっただろう。

 何でもやっておくべきだな。


 さて、ここからは1頭の馬も一緒に王都を目指すことになったのだが、乗馬をした方が俺達の走る速度よりも遅くなってしまった。

 馬に身体強化をかけたりしてみたが、急に強くなった脚力に上手く対応出来ずに転けてしまった。

 人間だって急に筋力が強くなれば、上手く使えずに物を壊しまくってしまうだろう。


 俺がそこそこ早く身体強化に馴染めたのは異世界転移の恩恵が大きいようだ。


 そんなわけで、疲労が蓄積しないように随時治癒魔術を利用するだけに留めて街道を進むことになった。


 マジで、エステルが迫って来ているかもしれないので一刻でも早く王都へ着きたいところではあるが致し方ない。


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