第11話 王女との交渉

「大変に申し訳ありません。まだ自己紹介もしていませんでしたわね。

 私はこのファンライズ王国の第一王女であるエステルと申します。

 ワタル様、この度は強制的な召喚で我が国へ来て頂いたのに、我が国の者があんなおぞましい奴隷の首輪を装着させようとするなんて、大変に申し訳ありません。

 あの者はこの国の魔術師団長でしたので、私が勇者召喚をするのを相談していた1人です。

 まず間違いなくワタル様が召喚をされた直後を狙って、奴隷の首輪を装着させようとしたのかと思われます。」


 お姫様のようなと思った女性は、この国の王女様であって、本当にお姫様だった。


 このお姫様に連れられて、豪勢な部屋へと案内をされた。

 正面に座った、お姫様からは自己紹介と魔術師団長の謝罪から始まった。


 まぁ、本当の話を何処までするかは不明だけど、揺さぶりも込みで確認をしてみるか。


「一つ、確認をさせてください。

 先程の魔術師団長でしたっけ?

 彼の行動について、エステル様は何も知らなかったのですよね?」


「はい、それは勿論。

 あんな邪悪なもくろみをしているとは、露ほどにも思っておりませんでした。

 ただ、あの者を信頼して相談をしていたのは私です。

 あの者には相応の罰を与えつつ、私も責任を取らさせて頂きます。」


 そんな会話をエステルとしていると、脳内にクロが声を掛けてきた。


『流石に口は割らないにゃ。

 しかも、自分は知らないけど、責任を取るって発言は中々に上手だにゃ。』


『そういうもんなのか?

 上の人間が責任を取るもんじゃないのか?』


『それはワタルの産まれた世界でも最近の話にゃ。

 普通は下の人間に責任を押し付けて、自分を守るものにゃ。

 そんな世の中で、ここまで発言をしてしまうと逆に責任を問えないにゃ。

 ここは、寛大に許してやる方がいいにゃ。』


 まぁ、やっていないと言ってる人間を追い詰める事もできないしな。


「そういうことでしたら、分かりました。

 俺も、もしかしたら奴隷にされていたなんて想像しただけで怖いので、あの人が相応の罰を受けるならば、謝罪はお受けします。

 エステル様も知らなかったのなら、その責任までは求めません。

 それよりも、ここって俺の世界から見たら異世界ですよね。

 どうして、ここに召喚をされたのか説明をして頂けますか?」


 そう、自分の命がかかった責任も大事だが、今はどうして俺を召喚をしたのかってとこも大事だ。


「ありがとうございます。

 それでは我が国ファンライズ王国の現状と魔王の配下である魔物の卑劣なおこないを説明させて頂きます。」


 そして、エステルからは説明と勇者をやって欲しいとの懇願がありました。


『まぁ、ド定番の魔王を倒してください系の異世界召喚だったわけだにゃ。』


『ド定番って。でも、魔王って何で魔物を送ってくるだけで、直接攻めて来ないんだろうな?』


『あくまでも、魔王が魔物を送り込んでいると思っているのは、この国の、このお姫様の思い込みかもしれないのにゃ。

 多分、この世界には魔王や魔族って種族は存在すると思うにゃ。

 それと、魔王国側からの魔物の襲来もきっと本当にゃ。

 この2つが組み合わさると、当事者達からすれば何かしらの意図があると思ってしまうにゃ。

 特に人間と魔族っていう種族の違いと国交がないって部分が大きいんだろうにゃ。』


『あんなに魔王のことを悪逆非道と訴えているけど、事実は異なるかもしれないってこと?』


『それは分からないのにゃ。

 結局はワタル自身の目で見てみないとわからないことにゃ。』


『そりゃ、そうだな。

 それに、なんかこの大陸で優秀な人物を集めて鍛えてくれるって言うし、とりあえず全乗っかりの姿勢でいこうか』


『吾輩も鍛えてやるから、大船に乗ったつもでいいにゃ。

 ただ、このお姫様は怪しいにゃ。怪しい匂いをプンプン感じるにゃ。

 一応、修行中に無理矢理に戦わされないように言質だけでも取って、プレッシャーを掛けとくといいにゃ。』


 エステルの話を聞きながら、クロと脳内でこんなやり取りをしつつ決意を固めた。


「分かりました。

 最低限、俺の意に反する形で戦い強いられるってことはないですよね?

 そこさえ、約束して頂けるなら、その勇者ですか?やらせて頂きます。」


「ありがとうございます。

 そのお約束は間違いなく守らせて頂きます。

 これで我が国は救われます!」


 さて、正直、勇者様なんて柄じゃないが、せっかくの異世界だ。

 どれだけ強くなれるのか、興味はある。

 クロとこの世界の人物達に鍛えてもらいましょう。


 ただ、このエステルってお姫様には気を許さないでしておこう。

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