B面 異世界召喚された勇者は王女の望むままに動く気はない

第9話 異世界召喚されそうな少年

 今日は高校入学式の日。

 母親にほぼ強制的に塾へ入れさせられた関係で、そこそこ良い高校へ進学することになった。

 母子家庭ながら何不自由無く生活をさせてくれている母親には感謝をしているが、いい高校へ入って、いい大学へ行って、大手企業へ就職ってのが俺の人生に合っているのかっていうのは、はなはだ疑問ではある。


 じゃあ、将来の役に立つ特技でもあるのかといえば、小さい頃から爺ちゃんに鍛えられている変な古武術くらいなもので、他にこれといって特徴もない。

 この古武術もネットで調べたりしてみたけど、他のどの系統にも属さないようで、完全にオリジナルな古武術みたいだ。

 まぁ、護身術程度にはなるだろうが、そんな護身術が必要になる地域へ行く気もないので、未だ生活で使ったことは一度もない。

 爺ちゃんとの組手でも叶わないので、必要な場面になっても役に立つか不明ではあるけどね。


 そんな平々凡々な俺も今日から高校生ってことで、まぁそれなりにワクワクはしているのだが、何故か爺ちゃんの家に住み着いている黒猫のクロが今日に限って付いて来ている。

 爺ちゃんの家というか、俺の家にも住み着いていて、気分によって俺の家か爺ちゃんの家で生活をしているし、もしかしたら他にも居座っているかもしれない、そんな半分野良みたいなの黒猫だ。


 そのなことをぼぉっと考えながら歩いていると、急に足元が光り始めた。


「にゃあ~」


 普段あまり鳴くことのないクロが鳴いた。

 その時、足元には魔法陣のような模様が描かれ、浮遊感から浮かんだと思ったら、急遽景色が変わった。


 青っぽい空間に様々な色の光線が走っている。

 地面は無くて、上下左右も分からず自分が浮いているのか、動いているのかも曖昧だ。


「まぁ、予想通りだが、やっぱり今日発生したんだにゃ」


 そんなことを呟きながら、クロが俺の顔の前に移動してきた。

 移動というか空中浮遊って感じで現れた。


「ク、クロが喋ってる?

 そ、それにここって何処なんだ?

 あの魔法陣みたいな光もクロがやったのか?」


 この不思議な現象に全然頭が追いついておらずに、クロに対して早口で喋ってしまった。


「まぁ、こんな状況に陥れば動揺するのも分かるが、落ち着くにゃ。

 ここは何処っていうか、今は異世界召喚の最中だにゃ。

 本当は一瞬で終わってしまうのを、吾輩が”間”を作ったのにゃ」


 クロはそんな俺をサラッと流して、説明をし始めた。


「ちなみに吾輩が召喚をしたわけじゃないにゃ。

 吾輩が召喚をしたのなら、今一緒にいるわけないのにゃ。」


「そ、それは分かったけど、そもそもなんでクロが喋っているんだよ。」


「はぁ~、そこからなのかにゃ。

 そりゃ、異世界召喚があるんだから、吾輩みたいな猫が喋れる世界があってもおかしくないにゃ。

 若い世代なのに、ラノベくらい読んでいないのかにゃ。

 頭を柔らかくして、考えるといいにゃ。」


 クロってこんな偉そうな猫だったんだな、一人称も”吾輩”だし。


「ちなみに、もう年齢も忘れたが、ワタルに比べればだいぶ年寄りだにゃ。年上は敬うべきにゃ。」


「クロが喋れるのは分かったから、どうして俺は異世界召喚なんてされているんだよ?」


「どうして?ってのは、吾輩もわからないのにゃ。

 吾輩が分かったのは、今日ワタルが異世界召喚をされる確率が高かったってことだけにゃ。

 あ、召喚されそうってのが分かったのは、今のワタルに説明をしても理解できると思えないから割愛するにゃ。」


 やっぱり偉そうだな。


「つまり、俺は召喚された先で、召喚した人間にどうしてって聞く必要があるわけか。」


「そういうことにゃ。ただ気をつけるにゃ。

 召喚をするってことは、強制的に何かをさせるのに躊躇のない連中ってことにゃ。

 どんな言い訳を連ねて、そこに自分なりの正義があったとしてもにゃ。

 最悪、召喚された人間を奴隷にするような奴もおるにゃ。」


「それって、マジで最悪じゃないか。

 それこそ、これをキャンセルして、元の世界に帰るってのは出来ないんだよなぁ。」


「あ、帰りたいなら、吾輩の力でこのまま帰ることもできるにゃ。」


 え、何?こっから帰るパターンもあるの?


「ただ、異世界召喚というか世界間の移動をすると、そのどちらの世界にも適応出来るように身体や精神も適応しようとして強化されるにゃ。

 しかも、それを鍛えれば、まさにアニメやゲームの主人公みたいな特殊な力も身につくにゃ。

 実際に吾輩の能力も異世界移動を繰り返していく中で身に付いた能力にゃ。」


 え、なにそれ、めっちゃいいじゃん。


「ちなみに、今から元の世界に戻っても特殊な力は身につかないし、異世界に到着してしまってから、吾輩の能力で元の世界に帰れるかは未知数にゃ。」


「でも、せっかくの高校もあるし、母ちゃんや爺ちゃんに会えなくなるのはなぁ」


「なんだワタルはマザコンだったのにゃ。まぁ、母子家庭で育ったから仕方ないのかもしれないにゃ。

 あっちの世界に到着しても吾輩が元の世界に戻せるかもしれないし、向こうの召喚主が送還も使えるかもしれないにゃ。

 ワタルも15歳にゃ。

 吾輩は情報は与えられるが、決めるのはワタル自身にゃ。

 もう自分で決断してもいい年頃にゃ。」


 そういって、クロは俺に決断を迫るのだった。

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