第7話 幽霊が出た!?

 次の日の朝。学校に行くため、私は一人家を出る。

 すると、少し歩いたところで、蓮が現れる。

「よう、心春」

「蓮、おはよ。どうしたの? なにか用?」

 蓮とは家が近所だけど、学校に行く時間がズレていて、一緒に登校することはほとんどない。なのに今ここで会うってことは、私のこと待ってたのかな?

「ああ。電話かメッセージで伝えようかとも思ったんだけどな。直接話して心春の意見を聞いてみようって思ったんだ」

「私の意見? なにそれ?」

「昨日、学校から帰る途中、サッカー部の先輩たちが騒いでいただろ」

「そういえば、そんなことあったっけ」

 実を言うと、半分くらい忘れてた。

 けど話している蓮の顔は、なんだか複雑そう。何か、大変なことでもあったの?

 とりあえず、学校に向かいながら、話を聞いてみることにした。

「先輩たちが言うには、サッカー部も練習が終わって、帰ろうとしていたんだ。その時、校庭のそばで変なものを見たんだってさ」

「変なもの?」

 オウム返しに尋ねると、蓮はうーんと唸ってこう言った。

「着物を着た女の人だってよ。歳は、俺たちとそんなに変わらないくらい。学校にそんなのがいるなんて変だなって思って見てたら、目の前でスーッと消えてしまったんだって。それで、幽霊が出たって騒いでいたんだよ」

「えっ? それって……」

 普通ならありえないような、おかしな出来事。

それだけじゃない。今の話を聞いて、気になることがあった。

「蓮が書いた七不思議。あれも確か、最後に着物を着た女の人の幽霊が出てきたよね」

 学校のある場所に昔建っていた御屋敷の娘さんで、人間以外の何かに病気を治してもらおうとしたけど、結局失敗して亡くなってしまったあの人だ。

「心春もそう思うか。俺も、先輩から事情を聞いて、あの話を思い出したんだ」

「ちょっと待って。確か御屋敷の話って実話なんだよね。もしかして、本当に幽霊が出たっていうの!?」

 怖い話を書いていた私たちだけど、本当に幽霊が出たってなると、平気なわけがない。

 ゾクゾクと、背筋が寒くなってきた。

「どうだろう? 屋敷やそこの娘は実際にいたのかもしれない。けど、オカルト的な噂はどこまで本当かわからないし、実は娘の幽霊が出るって部分は、俺が勝手に作ったんだ」

「えっ、そうなの?」

「ああ。学校の七不思議ってテーマなら、今の学校でも何か出た方がいいだろうって思って、ちょっと話を盛ったんだ」

 そうだったんだ。確かに蓮の言う通り、うちの学校の七不思議ってことなら、そういう設定にした方がいいかも。

「だいたい、着物姿の幽霊を見たなんて話、入学してから今まで一度も聞いたことがないぞ。本当にそんなのがいるなら、とっくに噂になってるだろ」

「言われてみれば……」

 オカルトマニアの蓮なら、そんな話があったら、絶対知っていそうだ。

「なんか意外。蓮ってこういう話を聞いたら、本物の幽霊だって騒ぐと思った」

「オカルトや怖い話は好きだけど、なんでもかんでも本当だって思うわけじゃないぞ。むしろそういう話を調べているとな、幽霊や怪異の正体は、見間違いや偶然ってことはよくあるんだ」

「じゃあ、今回のも見間違いってこと?」

「わからないけど、答えを出すのはまだ早いだろうな」

「そっか……」

 蓮の言葉を聞いて、私も少し冷静になる。

 そうだよね。そもそもの話、幽霊なんて本当にいるのかな?

「ただ、俺の書いた話に出てくる幽霊と似てたから、気になったんだ」

 多分、ただの偶然だとは思う。それでも、私も蓮と同じく、どこか引っかかるものを感じながら、学校までの道を歩いていった。

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