第6話
夜空に満天の星が瞬くころ、王都の外縁部に位置する小さな村は、無惨な姿を晒していた。焼け焦げた屋根、倒れた木々、散らばる家畜の遺体――。そこに立つノア・アルディスの瞳は、深い憂いを湛えていた。
「これは……ただの暴走じゃない。」
彼の傍らには、鋭い瞳を持つ盟友カイル・リーヴスが立っている。騎士団斥候隊長でありながら、組織の腐敗を知りながらも己の信念で動く男だ。
「ノア、お前もそう思ったか。魔獣の暴走が頻発しているのは、偶然なんかじゃない。何者かが意図的に仕掛けている。俺たちはそれを暴かねばならん。」
ノアは地面に散らばった魔獣の毛を手に取り、指先でなぞるように見つめた。
「この毛は……ただの魔獣じゃない。何か、異質な魔力が混ざっている。」
彼の声には、真実を求める強い決意が滲んでいた。
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古代遺跡への潜入
数日後、二人は情報屋から聞き出した古代遺跡へと足を踏み入れた。そこはかつて人と魔獣が共に暮らし、調和を保っていた時代の聖地であった。しかし、今は魔力を帯びた結界が邪悪なものを遮っている。
「結界の魔力……強い。だが、俺たちの魔獣なら打ち破れるはずだ。」
ノアはフェンリルの重厚な咆哮を耳にしながら、彼の神話級の力を信じて前進した。
突然、暗闇の中から不気味な影が迫り、鋭い爪を振るう。彼らの前に現れたのは、今まで見たことのない異形の魔獣だった。体中に不気味な黒い鱗をまとい、その瞳は人のそれとは思えぬ赤い輝きを放っていた。
「まさか……これが黒牙商会が研究している禁断の魔獣兵器か。」
ノアは引き締まった声で呟く。
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激戦、そして連携
激しい咆哮と共に戦闘が始まった。フェンリルの牙とシルフィエの氷の翼が交差し、空と地上で見事な連携を見せる。だが、敵は狡猾に地形を利用し、ノアと魔獣たちを分断しようと執拗に攻撃してきた。
「離れるな!お前たちは一つの命だ!」
ノアの叫びに応え、フェンリルは敵の注意を自らに引き付け、シルフィエが背後から鮮やかに急襲を仕掛ける。氷の刃が敵の鱗を砕き、フェンリルの牙が致命の一撃を与えた。
激戦の末、異形の魔獣は力尽きて倒れた。その場に、勝利の安堵はなかった。遺跡の奥深く、禁断の書物と魔法陣が彼らを待ち受けていた。
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露わになる陰謀
「黒牙商会は、この遺跡で禁忌の技術を用いて、魔獣を兵器化しようとしていたんだ……」
カイルが震える声で言う。
「これが完成すれば、人の力を遥かに超える魔獣兵器が王都を襲い、支配されてしまうだろう。」
ノアは拳を固め、目を閉じた。
「俺は、魔獣と共に生きる道を選んだ。だが、それが破壊の道具になってしまうなんて、絶対に許せない。」
彼の心に、燃えるような憤りと覚悟が宿った。
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新たな仲間との出会い
帰路の森の中、傷を癒すために立ち寄った泉のほとりで、ノアたちは一人の少女に出会う。彼女は深い緑の瞳を持ち、小柄ながら強い存在感を放っていた。
「私はリアナ。幻獣使いよ。」
その言葉にノアは興味を惹かれた。
「幻獣?どんな魔獣だ?」
リアナは微笑み、手を差し出した。すると、手のひらに小さな輝く生き物が現れ、青白い光を放った。
「彼女はルミエル。古の幻獣で、姿は小さいけど魔法力は強大よ。」
ノアは目を見開き、彼女の力に感嘆した。
「共に戦おう。君の力があれば、黒牙商会に立ち向かう希望が増える。」
リアナは静かに頷き、三人の絆が結ばれた。
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王都を覆う暗雲
だが、王都の闇は深い。黒牙商会の残党は、密かに王都の高官と手を組み、ノアの排除を狙っていた。市街の裏通りでは密談が交わされ、暗殺者が彼の動向を監視していた。
「ノア・アルディスは排除対象だ。次の襲撃は逃がすな。」
影の中で冷たい声が響く。
ノアと仲間たちは、次の襲撃に備え、警戒を強めていた。
「みんな、今度こそ全力で守る。誰も傷つけさせはしない。」
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絶望の中の光明
夜の王都を見下ろしながら、ノアは静かに呟いた。
「僕たちは最弱じゃない。絆と信念で、きっと最強になる。」
フェンリルの深い咆哮が答えるように夜空を震わせた。
「これからだ。真の戦いはこれから始まる。」
彼の瞳は、明日への希望で強く輝いていた。
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