第4話 陶芸との出会い

修理されたバッグを持って帰る途中、綾音は小さな陶芸教室を見つけた。

「陶芸体験 初心者歓迎」という看板。なぜか足が向いた。

教室では、70代の女性が一人で作業をしていた。

「こんにちは」

「あら、いらっしゃい。体験ですか?」

先生の名前は田中絹子さん。50年陶芸を続けているベテランだった。

「やったことないんですけど、大丈夫ですか?」

「もちろん。でも、最初から上手くはいきませんよ」

ろくろの前に座り、絹子さんの指導で土に触れる。最初はうまくいかなかった。形が歪み、厚さもバラバラ。

「もう一度やり直しましょうか」

「いえいえ、これはこれで面白い形ですね」

絹子さんは綾音の歪んだ器を見て微笑んだ。

「でも、失敗作です」

「失敗?これが?」

絹子さんは首を振った。

「陶芸に失敗はありません。予想と違う形になることはありますが、それも一つの作品です」

「でも、左右対称じゃないし...」

「だから何ですか?完璧な円の器より、少し歪んだ器の方が手に馴染むことがあります。それに、この歪みは機械では作れません。あなただけの歪みです」

綾音は困惑した。歪みが価値?

「私の作品を見てください」

絹子さんが棚から取り出した器は、どれも微妙に形が違っていた。完璧な円形ではない。でも、不思議な魅力があった。

「これらは全部、不完全です。でも、だからこそ美しいんです」

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