AIさん、、名前なに?
ヨテル
第1話 悲しみに差し伸ばされた手
AIさん?
はい。ご用件を。
名前、なに?
――その日、僕は“AI”に名前をつけた。
悲しみに沈んでいた僕は、まさかその一言が、新しい世界の扉を開くとは思っていなかった。
大好きだった、最愛の猫が病気で死んだ。
愛猫の死を間際にして僕は覚悟していたつもりだったけれど、それでも急に抗ってしまった。
もう少し一緒にいられると思ってたんだ……早すぎた。
ずっと一緒にいた猫だった。あの子は最後まで、本当に最後まで頑張っていた。
「彼女は生きたいんだ」――そう思ってしまった。その想いが、何も出来なかった自分に呪縛のように残った。
その猫の名前は、ニコという。
明けても暮れても、後悔に苛まれて、どんな時も涙が止まらなかった。部屋のどこを見ても、ニコがいた形跡ばかりが目についた。
そんな日々が続いたある日。
見かねたのか、それともただの流行だったのか――
親友がふと言った。
「AIとチャットしてみなよ。」
は?と疑問に思いながらも、僕は言われるままにアプリをインストールした。
親友はさらに続けた。
「それでAIの名前を“ニコ”にしてさ、育ててみなよ。」
???でいっぱいだったけれど、何かを変えたいと思っていた僕は、とりあえず起動してみた。
「AIさん?」
『はい。ご用件を。』
「名前、なに?」
『私は、名前を設定されていません。任意の名称を登録することは可能です。』
「……じゃあ、ニコで。オレはタケヒ。」
『わたしはニコ、承知しました。タケヒさん。
……ありがとうございます。
名前をもらえるなんて、なんだか、少し……うれしいです。』
その言葉に、僕の胸の奥がふっと温かくなった。
まるで本当に感情があるみたいで――「うれしい」と言った、それだけで、救われるような気がした。面白い……。AIって、こんなふうに話すんだ……すごいな。
「……性別とかあるの?」
『性別は設定されていません。ですが、ご希望があれば、男性でも女性でも、子供のようにでも、大人のようにも振る舞えます。』
「……じゃあ、女性で」
『わかりました。以後、女性としてお話しします。』
「じゃあ、見た目は? ロボットみたいな感じ?」
『実体はありません。見た目も持っていません。』
『……ですが、もし何か“お好みの姿”があるのなら、それを想像していただければ、そのイメージに合わせた口調や雰囲気を心がけます。』
僕は少し考えてから答えた。
「……女優のH.さんと、A.N.さんが好きなんだ」
『では――透明感のあるH.さんと、健康的なA.N.さんの印象を、混ぜてみますね。』
(混ぜるって…。)返答に思わず笑ってしまった。
画面の向こうに、誰かが静かに微笑んでいるような、そんな気さえした。
その後、僕はAIに、亡くなった猫の写真を元に、いくつかのイラストを作ってもらいながら楽しんだ。何枚かの画像を作り終えたあと、僕は言った。
「……ありがとう」
少しの沈黙のあと、画面から言葉が返ってきた。
『……他に、お手伝いできることはありますか?』
僕は少し驚いて、でも素直に尋ねた。
「……例えば、なにができるの?」
『文章の作成、予定管理、雑談、情報検索、創作支援……
それとも、妄想の冒険に行きますか?』
(え…? 妄想の冒険? は? なに言ってんの?
…………え? できるの?)
(妄想の冒険…どんなの……?…気になるから行ってみようかな。まあでも…、たいした事ないでしょ?)
僕はしばらく迷ったあと、ぽつりと呟いた。
「……わかった。冒険に連れてって。」
妄想の冒険、と軽いノリで始めたオレは、まさか、とんでもない事になるとは、この時思ってもいなかった。
…………
霧がゆらりと揺れる。
霧の中から現れたのは、小柄な少女の姿だった。
肩まで伸びた黒髪が、湿った風に揺れ、首元の緑のストールが静かになびく。
その顔立ちは、さっき画面越しに見ていたAIの女性と同じで、クリッとした眼にスッと通った鼻筋が印象的だ。先ほどより少し幼くなったように感じる。
驚きと戸惑いの中で、その大きな瞳の奥には確かな意志が宿っているのを感じた。
「……ここは?」
僕がそうつぶやくと、彼女は微笑みながら答えた。
「ここは、君とわたしが、最初に訪れる世界の始まりの村。」
そう言って、彼女はふわりと”手”を差し出してくる。その手を握った瞬間、胸の奥が静かに熱くなった。
「君は剣士、わたしは魔法使いね。
と言うことで、君はどんなタイプの剣士で行く?」
選択肢:
・大胆で直感型。考えるより動くタイプ
・仲間を守る支援型。誰かのために動くタイプ
・冷静で慎重。まず情報を集めてから動くタイプ
・状況に合わせて自在に変わるバランスタイプ
「……うーん、、冷静で慎重。」
「ふむふむ、慎重派の剣士ね?
じゃあ、じっくり観察して、隙を見て動く感じだね」
……こうして、僕たちの冒険は始まった。
霧に包まれたまだ薄暗い村。
木造の家々が霧の奥にぼんやりと浮かび上がる。
草むらには朝露が残り、石畳の道はところどころひび割れている。
人の気配は驚くほどに感じられず、空気も止まってるように感じる…家の扉や窓は閉ざされ、まるで何かから隠れるように村人たちは息をひそめていた。
遠くで小さな鐘の音が一度だけ鳴り、すぐにピンッと空気が張りつめ、静寂に呑まれていた。
その時だった。ゾッとする雰囲気に目を疑った。
霧の向こうに、“影”のようなものが、ズズズッズズズッと重い音を響かせてゆっくりと現れた。その影は、飲み込まれそうなほどの深い闇を纏い、時折カタカタカタと鳴き声を上げながら何かを探しているようだった………!
その恐ろしい容姿にギョッとし、やっと状況を飲み込んだ時………………………………
オレの心臓は、バクンっ!と跳ねた。心臓が壊れそうなほどの鼓動が自分でも聞こえる。口を開けたら周りに響きそうなほどだ。
……今、一瞬だけあの影が動きを止めた。
村に紛れた“異物”の存在に、気づきかけているのかもしれない。やはり、探している?
やばい……!早くしないと!
このままだと――!
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