第9話「太刀川夜馬くんへ」
『夜をお過ごしのみなさま、こんばんは。こちらケイネットFMからお送りする――』
部屋に置いてあるちょっと古めのラジカセから流れてくる、いつもの挨拶。
ラジオを聴きながら、俺は目の前にある一通の手紙を見ていた。
宮本さんが書いてくれた、俺への手紙。
しかし、まだ中を見ることができていない。
もし、『ごめんなさい、あなたのことは好きじゃない』と書かれていたらどうしよう。
そんなマイナスなことばかりが頭に浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返していた。
(……でも、せっかく宮本さんが書いてくれたんだ、読まないと失礼だよな)
俺はそう決心して、手紙を読んでみることにした。
太刀川夜馬くんへ
お手紙ありがとう、急なことでびっくりしたけど、手紙をもらうというのが久しぶりで嬉しかったよ
太刀川くんの気持ち、ちゃんと読ませてもらいました
伝わっているから安心してね
それで、私からのお返事は
私も、太刀川くんのことが好きです
隣の席になって、よく話すようになって、太刀川くんが可愛い男の子であることを知れて、嬉しかったよ
はにかんだ笑顔だったり、ちょっとびっくりした顔だったり、嬉しそうな顔だったり、怒った顔……は見たことないかな
実はね、ちらちらと太刀川くんのこと見てたんだ
授業中もね、こっそりと
あっ、ちゃんと勉強しなさいって怒らないでね
太刀川くん、いや、夜馬くん、ありがとう
これからも、よろしくお願いします
一気に読んで、繰り返し最初から読み直す俺がいた。
太刀川くんのことが好きです
間違いなく、そう書かれてある。
俺は大きく喜ぶ……ように見せて、ほっとしたという方が合っているだろう。
よかった、嫌われていなかった……好きだと言ってくれた。
『――次のメールは、ラジオネーム〝中二病〟さんから』
ラジカセから流れる音声がすっと耳に入ってきた。中二病っていうラジオネームもすごいなと思っていると、
『――この前思い切って同じクラスの女の子に告白したら、OKをもらいました。嬉しい気持ちはあるのですが、この後どうすればいいでしょうか?』
と、今の自分の境遇と似たようなメールが読み上げられていた。
『――おめでとうございます! 片想いのときというのもそれはそれでドキドキで楽しいものですが、これからもっと楽しいことが待っていると思います。二人で、なんでも楽しんでください。一緒に登下校でもいい、一緒に勉強するのもいい、一緒に遊びに行くのもいい。二人でできることは小さなことでも大事なものです。ぜひ二人の時間を楽しんでもらいたいです――』
パーソナリティーの男性の声を、耳を大きくして聴いていた。
(二人の時間……か、俺も大事にしようかな)
手紙は丁寧に封筒に入れなおして、机の中に大事にしまった。
俺の宝物だ。
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