激烈! 私立詭弁学園
キャスバル
プロローグ
プロローグ
「うつし世は夢、よるの夢こそまこと」
これは
中学三年の夏休み、なんとはなしに足を向けた父の
わたし
「倫音が乱歩を好きだなんて誰に似たのやら?」
父は大企業のやり手幹部めいた
「うれしすぎる返答。だけど、倫音はお母さん
「お父さんにも似てるって。わたしはお父さんと同じメガネっ子だし、ミステリが好き。最近のやつだけじゃなくて
「かくも
「いまどきのアニメとかも大好きだから大丈夫ですわい」
それはそうと、このころぐらいからだ。わたしが私立
鬼英学園は日本
学校が
成績はぎりぎり合格ライン。だけど、
合格通知が届いたじゃねえか!
「うおぉぉぉ、天才、ここに
「倫音、落ちつけ!」と母に言われた瞬間、わたしは
ふつうの親なら高級ワインで
「倫音は本当に鬼英学園に行くの?」と
「そら行くでしょ。え、ドッキリとか考えてる? わたし、サプライズ苦手なんだが」
「生まれてこの
生まれてこの方は言いすぎだと思うけど、父がそう答えると、母もうなずいていた。
「まっ、しょせんは噂か」
噂……? ため息をついた父の顔が急に明るくなった。「倫音、合格おめでとう!」
父が上半身裸になって『ハレ
それが狙いだったのだろう。娘を愕然とさせることによって、それまでの
わたしは小声でうなった。そもそも娘にではなく、父自身に言い聞かせるような言い方だったしさぁ。
「倫音、おめでとっ! あとで倫音の好きな、タヌキのモノマネ、やってあげるね」と言ってくれた母の表情もぎこちない。
「噂って、なんのこと?」
父は聞こえないふりをして踊りつづけている。母まで一緒になって。
こんなの、ますます気になるけど、しつこくたずねたところで教えてはくれそうにない雰囲気だ。両親の
じゃあ、想像に頼るしかないよね!
というわけで、ちょっと想像してみたよ。
そう、実はあれなのだ。鬼英学園の
そこには
学校に伝わる謎の
手に汗にぎるクローズドサークル。死と危険が
数日前に行方不明になった生徒のロッカーから
犯人は――怪物になりすましている者は誰なのか?
犯人は担任の若い女性教師だった。おっとり系の美人で、教えているのは主に現代文。優しい先生でヘルシーな和食が大好き、週三でジムにも通っている彼女には、しかし秘密があった。
イジメで自殺した元教え子の中性的な美少年と過去に
ふたりはマグマのように熱く愛し合っていた。マグマは地球の地下
よもやあの優しい先生が
動機の告白は、
わたしこと岩崎倫音は、
全部想像だけど、そうとでも考えなければ両親の不可解な態度には納得できないよ。昔から嫌な予感だけはよく当たる。本当に当たっていたのか確認したことがないから
いま思い返せば、こんな
というのも……。
鬼英学園に入学したわたしは、いま現在、そこそこ広い空間に立たされている。すり
ここはパッと見、
「岩崎倫音さん、反論は?」
そこに三人の
「反論がないのなら、岩崎さんの罪が確定します。よろしいのですか」
無感動な声で主審に問われた。よろしくはないけど、反論しろって言われたってさぁ……もうなんにも出てこないよ。
「わたしは、無実なんです。だいたい、おかしいですよ、こんなの!」
「反論になっていませんね」と主審に突き放された。
まずい、まずいぞ……! このままじゃあ、おいそれと決着がついてしまう!
わたしは主審から目をそらして真正面を見すえた。十数メートル離れている場所で、いやらしくほくそ笑んでいる人物をにらみつけるために……。
こんなの! こんなのありえないから! 嘘だ嘘だ嘘だァァ! なにもかも嘘ぉ!
だけど、ここは――そんな場所だった。
詭弁学園は、知る人ぞ知る鬼英学園の
「岩崎倫音さん、どうやらあなたにこれ以上の反論は不可能みたいですね。ならば、残念ですが――」
待って待って! 待ってくだせえぇぇ! ――っていうか、マジでおかしいだろうが。やってもいない罪とやらが確定しかけている。
どうしよう、どうしよう、どうしよう!
――すると、このときだった。爆弾が弾けたみたいな
「待ァァて、待て待て待て待て待て待て待て待て待て、待てぇいぃぃ! 詭弁だ、詭弁だ、詭弁だ、詭弁だァァァ! どこもかしこも詭弁がまかり通るぜ!」
――あの、彼の声だ!
わたしがふり向くと、力任せに
「詭弁、詭弁、詭弁、詭弁などと……まったくもって不愉快だ。ならば、それならば、そんなものが、しょせんは詭弁でしかないものが、このおれに通用すると思うなよ!」
彼は不敵な笑みを浮かべている。
「待たせたなァァ、岩崎倫音ェェェ!」
彼はおもむろにわたしの横まで来て立ち止まった。
「
「岩崎の言うとおりだが、呼んだとか呼んでいないとか、そんなことはどうでもいいんだよ」
どうでもよくはないだろ。よくはないけど、助かった。……ひとまずは助かったとは思ったけれど、しっかしさぁ、とんでもない学校に来ちゃったよ。
わたしは彼を――
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