二首目:金賞ちゃん、お筆を持ってはじめましょあんよがじょうず有頂天さんね

 おー!

 続きもお読みくださりありがとうございます。いえい。

 前置きは前ページに書いてあるので、早速拙作を載せましょう。どどん。


 金賞ちゃん、お筆を持ってはじめましょあんよがじょうず有頂天さんね


 これはドストレート悪意濃縮還元100%の歌です。

 まず、目を引く「金賞ちゃん」から解説します。


 金賞ちゃんというのは、要するに「評価される子ども」「特筆すべき技能を持つ子ども」「期待を背負わされた子ども」を、チャーミングに表現したものです。


 はい、嘘です。

 ……部分的に。チャーミングというのが嘘。


 金賞ちゃんというネーミングには明確な悪意があります。金賞を取ることしか期待されていない子ども、の意味です。


 わかるんですよね、子供の頃って、何故か不思議と。自分が期待されているかどうかって。それが、先生の評価を上げるためだとか、そうでないとかまで、薄々察しちゃう。


 それを自嘲的に込めたり、他称的に呼ばれたり、その結晶が「金賞ちゃん」なんですね。


 次の言葉、「お筆を持ってはじめましょ」。

 これは絵だったり、書道だったり、学校で触れる芸術のメタファーです。メタファーっていうかわりとそのままですね。お筆って言い方に子供扱いがにじんでいたり、はじめましょ、が全部ひらがななのも……はい。


 さらに続く、「あんよがじょうず」。

 これ、どんなふうに感じましたか?

 ええと、解説としては、筆を持っていると描写してる(つまり手作業をしている)のに、足の動きを褒められてるんですね。しかも幼児語で。えらいでちゅねバブちゃん! バーブー! みたいなもんです。


 形骸的な褒め言葉、ズレた称賛、中身のない、ただ作業の続きをやらせるためだけの……、そういうの〜。作り笑いもわかるよね。ただただ虚無でせちがらいやつ。


 バーブー言ってる幼児へなら微笑ましいですが、ねえ。

 善い言葉ではないですよ。はい。


 そして、ラストワード、「有頂天さんね」。

 褒め言葉ですね!(部分的には。)


 連作全体に仏教用語を散りばめるための仕掛けの一つです。

 有頂天は、うまくいってめっちゃ喜ぶこと(ざっくり)ですが、この言葉にはその他にも側面がありますのだ。


 仏教用語としての有頂天は、輪廻転生をする三界のうちの最も高いところって意味も持ちます。輪廻の輪からは抜けられない(解脱はできない)けど、出来ないながらも一番高い位置。

 転じて、有頂天という言葉がポジティブかつ、褒め言葉にも使われるようになったそうですね(諸説あり)。


 話を戻しまして、この短歌における有頂天は、かりそめの頂、というような意味で使いました。わかりますよね、ジェットコースターです。高いところから落ちたらどうなりますか?

 ひえ〜です。


 うまく書けた? うまく踊れた?

 でもその「よくできました」は、誰のためだったのかな〜、なんて思うこともありますね。

 ……せちがらせちがら。くわばらくわばら。


 ここまでお読みくださりありがとうございます。いえい。

 もうちっとだけ続くんじゃ。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る