第42話


 華月くんと微笑みあっていると、背後から声がした。



「かげつくん、ちゅーした」


「しーっ!」



 そんな声が聞こえ、振り向くと子供と手を繋ぐ女性がいる。


 よく華月くんと一緒にいた子連れの女性だ。


 この家にいるってことはやっぱり華月くんと無関係なんかじゃない。



「来るなら連絡しろよ」


「したよ! 取り込み中だったのは華月の方でしょ」



 その女性は子供から手を離してそばに来る。


 子供が組の人たちと遊び始めたのを見た後、私ににっこりと微笑んだ。



「初めましてだよね。私は一華いちかって言います」


「…初めまして。神原日葵です」


「なんか私に怯えてる…? 華月、何か言った?」


「何も言ってないけど」



 だってこの人と華月くんは親しくて、子供まで…。



「何も言ってないって…。まさか姉がいることも言ってないの?」


「ああ」


「あの…日葵ちゃん、もしかしなくても、勘違いしてないかな? 何度か見かけたことがあるんだけど…いつも華月と一緒の時だったよね。それで、この前のことからして…」


「お姉さん…なんですか…?」


「そうです! 本当に誤解してたんだね…。ちなみに結婚していて、子供たちは夫の子供だからね」


「そうだったんですね…」



 なんか拍子抜けした。


 確かによく見ると顔立ちが似てる。姉弟に見えないこともない。



「もうちゃんと言っておかないとダメじゃない」


「別に話すような関係じゃなかったし」


「もう! ごめんね、日葵ちゃん」


「そんなことないです! ごめんなさい、ずっと勘違いしてて…」


「いいの。言ってなかった華月が悪いの。私も経験があるし、ショックだったよね」


「はい…」



 優しいお姉さんだ。


 きっと旦那さんも素敵な人なのだろう。


 私もこんなふうになれたら、華月くんの自慢の彼女…というかお嫁さんになりたいな。



 でも気持ちを聞いたばかりで、そんなことを言ったら重いよね。


 華月くんの気持ちが変わらないように、頑張らないと!



「それで結婚式はいつなの?」


「式は当分先。先に籍だけ入れるつもり」


「そう。おじいちゃんに報告は?」


「これから」



 ……ん?


 なんか話が…。



「あの、籍って…?」



 そう問いかければ、華月くんは不思議そうに私を見る。



「結婚するだろ?」


「え?」


「何、俺に言ったことは嘘だったわけ?」


「嘘じゃないよ! でも結婚ってことだよね…? いいの?」


「プロポーズしたのはお前のほうだろ」


「そうだけど!」



 急な展開に頭はついていかず、華月くんに連れられるまま家の中にあがることになった。


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