第27話
「日葵!」
大学を出ようとしたとき、後ろから声がかかった。
振り向けば徹くんが駆け寄ってくる。
「今日、バイトは?」
「ないよ」
「俺もない。一緒に帰ろうぜ」
「ごめん。私、本屋さんに寄ろうと思ってて…」
「俺も一緒でいい?」
「もちろん!」
「んじゃ、行こうぜ」
それから二人で本屋さんに行き、目当てのものを買った。
…………
帰り道、夕食を食べて帰ろうってことになり、徹くんと街を歩いた。
日も沈み、街灯りがきれい。
「こっちにいい店あんだ。結構うまいラーメン屋なんだぜ」
徹くんが指をさすお店の先に、見覚えのあるスーツを着た男の人。
その腕には小さな子どもを抱えていて…。
「なんで…」
足が止まり、次に見えたものに後ずさった。
お店から出てきて彼の隣に立つのは、いつか見た女性の姿。
「日葵!!」
気づけば私の足は来た道を戻っていて、徹くんの呼ぶ声も無視して駆け出していた。
「おい、待てって!」
だけど足の速い徹くんにすぐに捕まり、近くの細い路地へと腕を引かれた。
肩で大きく呼吸をして落ち着き始めた頃、涙があふれてくる。
あんな仲睦まじい姿を見せられるなんて。
また、あんな姿見ることになるなんて。
本当に彼女じゃないの? 本当に奥さんじゃないの?
子供は本当に華月くんの子供じゃないの?
そんな問いかけばかりが浮かぶ。
あんなに私に優しくしてくれて、あんなに私に会いに来てくれて、あんなに一緒にご飯を食べたのに…。
あぁ、そっか。何を勘違いしていたんだ。
私は彼に嫌われている。
あの手紙がそうじゃないか。
「ばかみたい…」
華月くんを本気で信じて、本気で好きになって、本当にバカみたいだ。
バカみたいなのに、どうしても嫌いになれない。
あの優しさが嘘だなんて思えない。
「日葵、あんな奴はもういいだろ。もうわかっただろ。あいつは悪い奴なんだ。日葵の心をもてあそんでんだよ」
「……そうかも、しれない」
「だろ? だったらさ…」
「でも嫌いになれないの…!」
過去が邪魔をする。
過去さえなければ私は華月くんを好きになるなんてなかったかもしれない。
だけど。
だけど、そしたら今の私がいないことも事実で…。
華月くんと出会った。
華月くんに支えられた。
華月くんに救われた。
華月くんに、嫌われていた。
その手紙があったから、私は転校して今の生活がある。
それを否定なんかできない。
私の人生に華月くんがいないなんてことはありえない。
「それでも好きなの…! だけどもう──」
その瞬間、背後から口をふさがれて誰かに抱きしめられた。
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