第8話


 あれから三か月がたった。


 ケガもよくなって、リハビリをして、ようやく学校に登校できるようになった。


 お母さんが学校の近くにアパートを借りてくれて、一緒に暮らしている。



 お母さんに見送られて、学校に登校した。


 教室に入ればクラスが静まり返り、いたたまれなさにうつむきながら自分の席に座る。


 早く休み時間にならないかな…。


 早く川島くんに会って謝らないと。


 もうピアノを弾けないことも言わないとな…。


 そんなことを思いながら午前中を過ごした。



…………



 休み時間になって、旧棟の音楽室に行くとそこに川島くんはいなかった。


 いつも先に来ていたから、いるものだと思っていた。


 ピアノに向かっていると、川島くんがいつもいた場所に何かが置いてあるのが目に入る。


 置いてある白い封筒に不思議に思いながら近づく。


 それを手にすれば宛先も差出人もなかった。


 誰かの忘れ物かな…とか思ったけど、ここを利用する人なんていないだろう。


 誰もいないことを確認して、その封筒を開けると便箋が一枚入っていた。



──


無事に退院したようで何より。


この手紙を読んでるときにはもう俺はいない。


最後に言いたいことを言わせてもらう。


うるさい泣き声も、うるさい笑い声も、うるさいピアノの音も聞かなくて済むと思ったらせいせいする。


話した内容もどうでもよかったし、お前の過去になんて興味がない。


俺には関係ないし、どうでもいい。


それに何よりお前の好意が一番迷惑だ。


本気でお前なんかと出かけると思ってんのか。


身の程を知れ。


女なら少しは清潔におしゃれくらいしてみろよ。


まあもう二度と会うことはないが。


俺のことは忘れろ。


──



「……ぇ…?」



 その手紙を読み終わったとき、この手紙が自分にあてられているものだと気づいた。


 名前もないけど、これは間違いなく自分への手紙。


 まさか川島くんがこんなこと思っていたなんて。


 嘘だと信じたい。


 きれいでかっこいい川島くんの字。


 私と過ごした全てを否定する手紙。



 何度読み返しても、私にあてたものとしか思えない。


 川島くんは優しい。そう思っていた。


 でも本当は…。



「うぅ…うぇぇん…」



 早く会いたかった。なのに、本当は、川島くんは…。



「うわぁぁぁぁぁん!」



 私に向けられていたものは嘘だった。


 全部、全部、全部、嘘だったんだ。


 この時間を大切にしていたのは私だけだった。


 私だけ……だったんだ。


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