◆ ポムの影

だがその頃――ポムはひとり、森の奥深くで立ち止まっていた。


 目の前には、一匹の黒猫がいる。


 その猫は、ポムとそっくりだった。

 いや、ポムの“もうひとつの顔”だった。


 「どうして言わないの?」

 「あなたが“黒の尾”の元スパイだったことを」


 ポムの表情が歪む。


 「私は……もう抜けた。もう、やめたの」


 「でも、ミルクたちには言ってない。裏切るのが怖いんでしょ? 本当のことを言えば、きっと離れていくって、思ってる」


 「違う……私は、守りたかっただけ!」


 ポムは自分の“影”に飛びかかるように叫んだ。


 「私は……仲間を裏切りたくなかった! もう二度と!」


その直後、クロウとミルクがポムのもとに駆けつけた。


 ポムは、震えていた。


 「……ごめんなさい。わたし、昔、“黒の尾”の情報屋だったの。……ミルクのかけらの噂も、知ってたの」


 沈黙。


 でも、ミルクは首を横に振った。


 「……それでも、ポムはずっと一緒にいてくれた。怖かったのに、ぼくたちのために戦ってくれた。……それが“本当のポム”だと思う」


 クロウも、肩をすくめた。


 「スパイ? だから何だよ。オレだって、過去はクズだった。……でも今は、お前は“ポム”だ。それでいい」


 ポムは、泣きそうな顔で笑った。


 森が、静かに揺れた。

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