第2話 

「どっか割れてんだよ」


 ユウキくんに言ったらそう言って、先々階段を上って行って。追いかけていく。


 二階も一階とあまり見た目は変わらない。だから意気揚々としてた、けど。心地悪い。一階と同じ順番で開けようってことになった。


 1番目の部屋のドアが、開ける前から。何故か開きっぱなしだった。こういう時映画とかゲームだったら、入ったとたんに突然開かなくなる。


「や、やめようよ」


 そう思うとこわくなって、ユウキくんに言ったけど。

  

「じゃあ、ひとりで待ってたら?」


 そう言われて、ひとりはもっとこわくなって。泣きながらあとを追いかけた。


 なぜかトイレとドアだけがあかない。ユウキくんはやっきになって、あけようとしていた。


 ぼくはさきに部屋を出て悲鳴をあげた。


「うるさい!」


 うしろから出てきた、ユウキくんがのっぺりした顔でなんだか不機嫌。でも、ぼくの視線の先をみてさらに怒った。


「ぼ、ぼくじゃないから⋯⋯」


 にらまれてそう言うことしかできない。

 

 さっきまではなかったのに。部屋を出てすぐの壁に、落書きが。ユウキくんの名前が書かれてた、ものすごく下手な字。


「だれだよ。こんないたずらしたやつ! あとで絶対なぐる。どうせだれかがあとつけてきたんだ、クソ!」


 やけに苛立っているユウキくんが部屋を出おえて閉め、次の部屋に向かおうとした。その時、トイレを流す音がして。こわくてぼくは階段の方へおりようとした。


「だれかくれてんだろ」

 

 ユウキくんは叫ぶと部屋に手をかけ何度も引っ張っていた。けどびくともしない。さっきまではあいたのに。


 足が固まって、ぼくは階段から動くこともできずにその様子をみていた。


 ぺとっ。


 そんな感覚がして、足をなにかに引っ張っられて。転びながら上へひた走った。下になにかいる。


「お、おい。んだよ! 待てって」


 ぼくのそのあとを、ユウキくんが追いかける足音が続く。三階へたどり着くと地べたに座った。


「急に走んなよ!」


 追いついたユウキくんが肩で息をし、膝に手を伸ばして立ったまま。怒鳴ってる。

 

「だってっ⋯⋯」


 なにかに足を引っ張っられて落ちかけたから。なにか下にいるから。そう言おうとした。


「⋯⋯な、なんだよ」


 奥の部屋の前に真っ黒なやつがいた。ちょうどユウキくんの後ろ側の方向。ぼくは泣きながら、ユウキくんの後ろを指さす。


 地べたに手をついてなんとか起き上がると反対方向へ走り、奥の部屋に逃げた。ユウキくんがまた、ぼくの後ろを追いかけて、同じように奥の部屋にもつれながら入った。


「なんもいなかった。ふざけんな」


 怒りながらユウキくんが呟いた。


「ほんとにいたんだよ! 黒いやついたんだって、ほんとなんだもん。天井まで背が高かった」


 嘘じゃない。あれは間違いなくいた。


 泣いているぼくを、軽く突き飛ばして。ユウキくんは部屋をまた散策しだした。


 どうしよう。出られない。なにかがまたいるかも。下には絶対いた。三階にも。逃げたいのに。帰れない。片方の靴はあわてて逃げたせいで、いつの間にか靴下だけだった。


 すりむいた足が痛くて。泣き声がこぼれる。


 ユウキくんは、さっきからベランダをあけようとしている。でもあかない。しびれをきらしたのか。


「手伝えよ」


 ぼくにそう言い、全力であけようとしている。そろそろ帰らないと怒られる。

 

「帰ろうよ」

 

「は? ムリ。帰るならひとりで帰れば?」


 やたらとあけようとしている。そもそもぼくの声に、あまり聞く耳をもってくれない。まるでロボットみたいにずっとあけようとしている。


「そろそろ帰らないと、怒られるって!」


 声をあげるぼくをよそにユウキくんはそうしてる。


「帰っちゃうよ?」

「あ、ああ。うん」


 ユウキくんは、まったく聞いてないみたいに返事してる。そのまま玄関から部屋の外に出ると、もう真っ黒のやつはいなかった。


 

 勇気をふりしぼって階段をかけおりた。外に出る入口のドアを何度引っ張ってもあかない。


「な、なんでぇ?」


 ガンガンと。ものすごく力を込めてみても、まったく開かない。壁の窓も、部屋のベランダのも、開かない。

 

 あわててかけあがる。ユウキくんのいる部屋まで、それなのに。階段をあがってもあがっても。たどり着くことがない。


 二階。二階。二階。二階。二階。


 何度上っても二階。下りても二階。


 最初は、何度も何度も、がんばってみたけど。もう、地べたに座り込むしかできない。出られない。帰れない。たどり着くことができない。


 ユウキくんにも会えない。


「⋯⋯帰りたぃ」


 物は試しと廊下へ出ると、なぜかすべての部屋の玄関ドアがあいていた。


「⋯⋯だれかいるの?」



 


 


 

 


 

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