第41話 勝ち確定なはずだったのに
「未希ちゃん! 色々聞きたいことがあるんだからね! キミの欠席は仮病だってこと私には分かっているぞ!」
「あ、あの、私のノートでよろしければ後ほど写して頂いて大丈夫ですから。まずは体調を優先して頂いて——」
「だーかーらー! 未希ちゃんの病気は仮病なんだって! 花宮ちゃん、あの子を甘やかさないの!」
「で、でも……」
電話の向こうから席子ちゃんと花宮さんの声が聞こえる。
いつも通りな席子ちゃんの様子に安心感を憶える。
それに私を心配してくれている花宮さんの気持ちもとても嬉しい。
でも私には二人と話をする資格がない。
私はそっと通話終了ボタンに指を伸ばす。
「氷室さん。頼む。何もしゃべらなくてもいいからまずは俺の話を聞いてくれ」
広井……くん?
広井君も席子ちゃん達と一緒にいるようだ。
彼の声を聞いて、私は小さく震えてしまった。
彼に何を言われてしまうのか……その恐怖が私の中で渦巻いている。
「まず……ごめん! あの日、俺はキミを追い詰めるような言ってしまった! 考え無しだった! キミを傷つけてしまったこと、心から後悔している」
違う。
違うよ。
被害者はキミの方じゃん。
勝手に心を覗かれたのは自分の方なのに……
私が何日も学校を休んでいるからこの人は自責を感じてしまっているんだ。
「キミが不思議な力を持っていようと関係ない。いつものように元気いっぱいなキミの姿を俺達に見せてほしい」
「そうですわ。貴方の力のこと莉々様にだけは言ってしまいましたが、私たちは他の方にばらしたりしませんわ。だから安心して学校へ戻ってきてください」
「ていうかバラしたところで信じたりしないって。だから気に病むことでもないんじゃないかな? 大切なのはその人の声でしょ? 心の中の言葉なんて気にしないでいいじゃない」
広井君は……花宮さんは……席子ちゃんは……
私の力を知っても尚、傍に居てくれようとしてくれていた。
瞳に溜まった涙に熱が加わる。
彼らの無垢なる優しさに救われる。
だけど——
「席子ちゃんの……言う通り……大切なのはその人の声……だけど……」
私は知っている。
他人の心の声というのはどうしても無視出来ない程の強大な力が宿っていることを。
そして『心の中を私に覗かれている』という事実がきっと皆を不安にさせてしまうであろうことを。
「無理……だよ……心はいつも悪意に染まってる……そのうち……みんなの不満が、敵意が、きっと私に伝わってしまう。そうなったら……私は……きっと……」
きっと……壊れてしまう。
それは皆が大切だから。
大切な人だから。
大切な人からの悪意は想像を絶する。
耐えられる気がしない
「大丈夫だ! 俺は——俺達は大丈夫だから! 絶対にキミを恐れたり、見限ったりしない! 信じてほしい!」
広井君の言葉から強い意志が伝わってくる。
何が在ろうと私を見捨てたりしないという優しさが彼を熱く叫ばせている。
私に想いを届ける為に。
でも私はその想いに応えることはできなかった。
「ごめん……ごめんね……大好きだったよ……広井君」
「ミキテ——!!」
ピッ
通話を切る。
ああ。終わったなぁ。
友情も、青春も、初恋も……
この瞬間終わっちゃった。
「あっ、私、広井君に告白したんだ」
両想いの私達。
告白すれば勝ち確定な状況だった私達。
だけど事実は私に勝利など齎せてはくれず……
逆にすべてを終わらせる敗北の言葉になってしまったのだった。
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