第9話 【ずっ友グループ♡(未希は除く)】
広井くんのことは初日から気になっていたけれど、昨日私を庇ってくれた姿を見て更に気になりだしていた。
たった一言だったけど、彼に話しかけることもできた。
でもまだ私たちは会話らしい会話をできていない。
「(お話……してみたいかも……)」
距離感を図りかねていて中々その勇気は出なかったけど、今は素直に彼と話をしてみたいという欲求が出てきていた。
そ、その、広井君、が、私を好意的に見てくれていることは知っているのだから、話しかければきっと喜んでくれる……よね?
「(なんかモテ女みたいな考え方をしている自分が嫌だ)」
調子に乗るな氷室未希。
私なんかを見てくれるのは広井くんだけだからね?
「(そう……広井君だけは……私を見てくれる)」
広井君は昨日私を庇ってくれた。
対して私はいつも傍観しているだけの立場。
せめて会話のキッカケくらい……それくらいは私が作らなくちゃ!
「ひりょいきゅん!? おふゃよ!」
噛んだ。
うわああああ! 緊張しすぎて奇声をあげる変な子になっちゃった!
ほら。広井君もビックリして目を見開いている。
あのね? 『広井君 おはよう』と言ったつもりなんです。決して日本語不自由なわけじゃないんです。おねがい信じて。
「(今のは……ドイツ語か? さすがミキティだ。なんてグローバルに長けているんだ。ネイティブな発音過ぎて一瞬宇宙語かと思ってしまったぜ)」
ああ。駄目だった。
男子と対話するってこんなに難しいことだったんだ。私には難易度が高すぎる。
同性の席子ちゃんとすらたまに噛み噛みになるからなぁ。自分の対人スキルの無さにへこたれそうになる。
ピロン
うぉう!? ビックリした!? 私のスマホが音を鳴らしたみたいだ。
スマホから音がしたのって何年振りだろうか。
ロック画面に見慣れない文章が通知されている。
『リリさんがミキコング@如月冬康LOVE愛してるんるんさんをグループ招待しました』
なんだこれ?
チャットアプリの通知?
初めて見る文章の羅列に画面を見つめたまま首を傾げる私。
リリ
『やほやほ~! 仲良しグループ作ったよーん! 席が近いもの同士仲良くしようゼ~!』
どうやら席子ちゃんが私を勝手にグループ招待してしまったようだ。退室ってどうやればできるんだろ?
ミキコング@如月冬康LOVE愛してるんるんさんがグループから退室しました。
「ふ~~。無事に出られた」
「無事に出られたじゃないわぁぁぁっ!」
「うわっ!? ビックリした!? どうしたの? 席子ちゃん」
「ビックリしたのはこっちだよ! せっかくグループに招待したのに秒で退室とはどういうことなの!?」
ゆさゆさと私の身体を揺さぶりながら詰め寄ってくる席子ちゃん。
私は席子ちゃんだけに聞こえるように小声で彼女の耳元で囁くように返答する。
「大丈夫。理解しているよ席子ちゃん。操作ミスで私を招待しちゃったんだよね? 私、その辺の空気は読める方だから、ちゃんと無言で退室してあげたよ」
パチンっとウインクし、できる女アピールをする。
「へんな気遣いすんな! 私は未希ちゃんを誘ったの!」
「えええええ!? む、無理無理無理! 私がグループに属するなんて……! そのうち私一人を除いたもう一つのグループが出来上がってそっちがメインになる流れだもん! 私のメンタル殺す気!?」
「そんな陰湿なことするわけないでしょ! グループって言っても3人グループだよ!」
3人か。
3人だけならば私だけが省かれることも……ない?
席子ちゃんが身を乗り出して私にだけ聞こえるように小声で語りかけてくる。
「……もう一人のメンバーは広井君だよっ」
「……!!」
「グループ入る?」
私は無言のままコクコクコクと首を縦に振り続けまくった。
やった。これで広井くんと接点が取れた。
直接会話することは難しくてもチャットならお話できるかも!
「じゃ、もう一度招待するね。今度は抜けるなよ」
再度席子ちゃんからグループ招待通知が届き、私はドキドキしながらチャットグループのメンバーを確認した。
……私と席子ちゃんの名前しかなかった。
グループトーク欄に視線を移す。
『広井サトルがグループから退室しました』
「(俺がグループに入った途端ミキティがグループから退室した……は、はは、俺がキモイから抜けたんだ。キモくてすいません。俺は輪から外れた所からキミを見守るだけにするよ。それにしてもミキティから俺への好感度がまさかマイナスだったとは……これは話しかけるタイミングを更に遅らせた方がいいな。来年……ああ、それがいい。来年になったらミキティに話しかけるとしよう。きっとそのころには俺への関心も薄れてマイナス好感度がプラスマイナスゼロくらいにはなっているさ)」
うわぁぁぁっ! 広井君が病んじゃってるぅぅ!
わ、私がいけないんだ。タイミング悪くグループから抜けた私が!
ど、どうしよう~! 広井君は全然悪くないのに彼を傷つけちゃったぁぁ! 私のバカバカ。どうしようもないくらいのクズ!
「(うわぁぁぁん! 広井君ごめんなさぃぃ!)」
心の中でどんなに謝っても広井君はテレパシーを使えないので私の言葉は届かない。
こんな大事な場面でも話しかける勇気を持てないビビり癖の自分が心底嫌になった瞬間だった。
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