第5話 女子がよくやっているやつ


 広井サトルくんはクラスで少し浮いていた。

 クラスメイトとは事務的な会話しかしていないし、誰かと一緒にいるところも見たことがない。

 寡黙で何を考えているのかわからない男の子。それがクラスメイトが抱く彼の印象なのだろう。

 でも私だけが知っている。


「(ミキティ、いつも真剣に授業を受けていて偉いな。真面目な子って素敵だ。外見だけじゃなく、中身まで美しいなんて。きっと彼女の前世は異世界の聖女様だったに違いない。もしかしたら聖女が転生してきたのかも。ハッ!? てことは俺は元聖女と肩を並べて勉強しているってことか! なんたる幸運! そしてなんたる光栄! 転生者と隣の席なんて一生分の運を使い果たしているなガチで)」


 広井君は全然寡黙ではないということ。

 ちょっと黙って!? と叫びたくなるくらいお喋りで一途な男の子だということを。


    ガサッ


 ん?

 後ろから手紙が回されてくる。

 わわっ、女子がよくやるやつ! 女子がよくやるやつだ!

 えと、手紙を回せばいいのかな? だ、誰に? 広井君に?

 初めての体験にどうすればいいのかわからない。

 あっ、よく見ると未希ちゃんへって書いてある。

 つ、つまり私が開けて……いいってことだよね?

 慎重に手紙を開いてみると、そこには一言、こう書かれてあった。



【未希ちゃんって広井くんのこと好きなの?】



「ぶふーーっ!?」


 簡潔ながらド直球な文章に私は思わず吹き出してしまった。

 バッと後ろを振り向くと、席子ちゃんがニヤニヤしながらこちらを眺めていた。

 手紙の主は席子ちゃんだったようだ。


「どうした? 氷室」


「い、いいいい、いえ! な、なんでもありましぇん! さ、騒がしてすみませんっ!」


「そうか。授業中は静かにな」


 先生に怒られちゃった。

 席子ちゃんが変なこというからぁ。


「(ビックリした。なんで急に噴出したのあの子)」

「(氷室さんって結構おちゃめな人?)」

「(一気に眠気飛んだわ。サンキュー氷室さん)」


 好意的とも否定的ともいえない心の声があちこちから聞こえてくる。

 うぅ~。だから目立つのは嫌なんだよぉ。


「(退屈な授業に一筋のユーモアを突然ぶち込んでくるとは。素晴らしい意外性、そして素晴らしい行動力だ。ますます好きになったわ。それにしても噴出した息が前の席の半藤さんに掛かっていたな。くそぉ、羨ましいぜ。俺もミキティのブレスを浴びたい。聖なるブレスを俺にも分けてくれぇぇぇっ!)」


 ぶれないなキミ。

 あとごめんね半藤さん。直接謝る勇気ないから心の中で謝っておくね。ほんとごめん。

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