第5話 「大統領補佐官」
「残念ながら時間切れですね。あなたは運がいい」
ロボは残りのシャンパンを飲み干した。
アルフレッドは全員のチップの総額を記録した。
ゼロサムになるので総和は0だ。
バルボアは4000ドルの負けになる。
日本円だと60万円くらいか…
まあ銀行の頭取だと「はした金」かな。
バルボアは小切手を切ってロボに渡した。
「口座の開設には充分な料金だ」
「ありがたくいただきます」
もちろん大統領本人に会うわけではないので武装チェックはそんなに
厳密ではない。
アポイントがあるとはいえ大統領補佐官に会うのは緊張するものだ。
豪勢な執務室に通された。
20分は待った。
二人の秘書官に随伴された補佐官が現れた。
この国の実質的な支配者の「主席補佐官」ではない。
国家安全保障問題担当補佐官の次官らしい。
「トーマス・スチュワートです」
「佐々木望です」
「橘薫です」
「トーマス久しぶりだな」
バルボアとスチュアートはがっちり握手した。
ロボとブラボは僕らの随員として振舞った。
フカフカのソファに座る。
部屋の一番目立つ所に星条旗がある。
「ソ連と中国が同時に日本に進攻すると?」
「はい」
僕はレントン卿の紹介状を秘書官の一人に渡した。
「CIAからそのような兆候はないとのことだが」
「たしかな筋からの情報です」
「日本のUMAからかね」
「YOKAIです。アニマルという単語は使ってほしくありませんね」
「どちらかというとデミゴッドです」薫が続ける。
「我々が一神教の国であることをお忘れなく」
「なんでもアメリカは宇宙人とつきあっているという噂があるじゃないか」
バルボアが助け舟をだす。
「バルボアさん公然の秘密ですが、政府からの正式発表がない限り、我々が
それに対して言及することはありません」
否定はしないが言わないという事だな。なるほど…
「そのなんだ、エリア51があるなら、そっち関係の研究機関でたしか
「バックベアード」というのがあっただろう」
「なんですかバックアイドモンスター、BEMですか?」
といってバルボアに名刺のようなものを渡した。
バルボアもそっと受け取る。
「一応書類があるなら国会図書館で預かりましょう」
薫が声明文のコピーが入った茶封筒を渡す。
「この件は上司に報告させていただきます。
我々がこの件に関してどうこうすることはありませんが…
仮想敵国に関する情報提供は歓迎です。
それが信憑性のあるものならですが」
「お時間をいただきました。ありがとうございます」
「いえいえ、最後によろしければ手品をひとつみせてください」
「スチュアートさん、あなた奥さんいらっしゃいます?」
薫が尋ねた。
「はい、息子と娘がいます」
僕らは顔を見合わせた。薫がどうぞと僕に振る。
「しかたない…」
僕は手を広げた。
閃光が部屋を満たす。
スチュアートの後ろに僕は立っていた。
「いまはこれが精一杯です」
秘書官が懐に手をいれていたが…スチュアートが制した。
「すごい忍術だ…「太陽拳」ですか?」
「その名前、いただきました」
僕らの会見は終わった。
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