第22話 — 苦しむなら、せめてスタイルよく

「癒しは壁に届き、忍者は叫び、商人は黙った。」



傭兵は歪んだ笑みを浮かべながら、刃を舐めた。


「降参しろ!楽に殺してやる!」


コボロは躊躇なく弓を構えた。


「渡すものは一つだけだ。お前らの首だ。識別しやすいようにな。」


クロカゼは前に出て、言葉に詰まりながらも叫んだ。


「そ、そうだ!それが…俺たちの言いたいことだ!」


ハイクモは静かに滑り寄り、穏やかな声で詠んだ。


盗まれた言葉

弓使いが忍の代弁

混乱の始まり


傭兵は舌打ちした。


「チッ…仕方ねぇな。」


彼は信じられないほどの速度で跳びかかり、コボロを狙った。コボロは驚いたが、刃が届く直前、クロカゼが身を投げ出し、クナイで攻撃を弾いた。


「元冒険者って聞いてたけど、ただの的じゃねぇか!」


仮面をつけた拳闘士が続いて突進してきた。コボロは落ち着きを取り戻し、矢を放った。見事に拳闘士の手首に命中し、うめき声と共に後退させた。


ローブを纏った魔導士が杖を掲げ、叫んだ。


「土の魔法:防御の壁!」


石の壁が両陣営の間に立ち上がった。魔導士二人と拳闘士は壁の向こうへと退いた。


傭兵は苛立ちながら叫んだ。


「逃げるのか?喋る剣の戦士を追ってたんじゃなかったのか?」


クロカゼは動きを止め、クナイを下ろして混乱した表情を浮かべた。


「待てよ…お前ら、あの剣の男を追ってるのか?…声、覚えてるぞ。俺が情報売った相手だ。なんで俺らが関わるんだよ?」


傭兵は構えを崩さず、冷たく答えた。


「詳しいことは知らねぇ。捕獲の手伝いを頼まれて報酬もらった。だが、あのフードの奴が戻ってきて、砂漠で仲間に見捨てられたって言ってた。お前らが匿ってると思っただけだ。」


クロカゼは怒りで爆発した。


「俺、あいつ助けるべきだったかもな!情報売ったのに、報酬が石だったんだぞ!」


「チッ…」傭兵は剣を下ろした。「戦う理由はねぇな。俺も騙された。報酬倍にしろって言うつもりだったが…あいつら、もう俺を見捨てた。」


コボロは目を細めた。


「お前…貴族に魂を売ったって噂の元冒険者か?ラダゴル…“貴族の犬”って呼ばれてるだろ?」


「チッ…あの野郎どもめ…どうでもいい。二度と会わねぇことを祈るぜ。」


彼は壁の向こうへと跳び去った。コボロは慌てて叫んだ。


「待て!」


だが、もう遅かった。コボロは壁の上に登り、傭兵が他の仲間たちと一緒にグリフォンに乗って逃げていくのを目にした。彼は拳で石を叩き、怒りをぶつけた。


「くそっ!あと少しだったのに!」


クロカゼは黙ってその様子を見ていた。何も理解できず、ただ目を細める。


ハイクモが滑るように近づき、静かに呟いた。


何もせず

商人は痛みを隠す

沈黙が重い


ルミが心配そうに駆け寄った。


「誰か怪我してませんか?癒しが必要ですか?」


誰も答える前に、彼女はすでに魔法を発動していた。魔力が跳ね返り…壁に命中した。


壁が…生き返った。


「アアアアア!」と叫びながら、パニック状態で走り出し、顔から地面に突っ込んだ。そのまま、くぐもった絶望の声を漏らし続けた。


クロカゼが怒鳴った。


「誰も癒しなんて頼んでねぇよ!地獄の盲目ヒーラー!」


ルミは木を見ながら、安心したように答えた。


「よかった…じゃあ誰も怪我してないんですね。」


「怪我したのはあの土の壁だよ。意識持っちゃって、立ち上がることもできねぇ。命を得ても尊厳は得られねぇんだな。」


コボロは姿勢を正し、きっぱりと言った。


「行くぞ!時間がない!」


一行は荷車に乗り込んだ。カタツムリが加速し、旅が再開された。


ハイクモは静かに詠んだ。


怒る理由

誰にも分からず

顔に沈黙


コボロは、いつもの饒舌さを失い、ただ黙って前を見つめていた。旅は静かに続いた。



夜が訪れ、ズレタの村は静けさに包まれていた。薪がストーブでパチパチと音を立て、温かい料理の香りが部屋を満たしていた。ルミは優しく微笑みながら、皿を並べていた。


クロカゼはノックもせずに入ってきた。背中には薪の束。彼は立ち止まり、すでにストーブの横に積まれた薪を見て…そのまま荷物を床に投げ捨てた。


「やっぱりな!こうなると思ってたよ!」と腕を振り回しながら叫び始めた。「俺たちが薪を切って、運んで、結局使われるのは別の薪!これは妨害だ!陰謀だ!これは…」


「遅かったから、友達に頼んだんだよ」コボロは口いっぱいに食べ物を詰めながら、満足げに言った。


ハイクモは静かにテーブルに滑り寄り、穏やかに詠んだ。


騙された

無駄な薪の労力

世界は敵


ルミは湯気の立つ皿を持って近づき、優しく言った。


「落ち着いて、クロカゼ。温かくて癒される料理がありますよ。きっと元気になります。」


クロカゼは彼女を見て、皿を見て、そして床を見て…叫んだ。


「コボロの野郎!俺が飛び込める穴はどこだ!できればそのまま埋めてくれ!」


コボロはフォークで廊下を指差した。


「廊下の奥に地下室がある。ベッドもあるし、シャベルもある。好きに穴掘って寝ろ。」


ハイクモはすでに席に着き、静かに詠んだ。


食事あり

地下室で眠る

歪んだ一日


ルミは微笑みながらうなずいた。


「そうですね、ハイクモ。休むのも大事です。明日はまた旅が続きますから。」


クロカゼは皿を手に取り、ぶつぶつ言いながら廊下へ向かった。


「明日、シャベルに抱きしめられて目覚めたら…それは奇跡ってことにしよう。」


薪がもう一度パチパチと音を立てた。ズレタの村は眠りにつき、三人の旅人はそれぞれの形で、ほんの少しの安らぎを見つけた。次の災難までの、束の間の平穏だった。



翌朝、最初に目を覚ましたのはクロカゼだった。太陽が地平線をかすめる頃、彼はすでに外に出ていた。顔には「寝たのか?それとも枕と戦ったのか?」という表情が浮かんでいた。


コボロが空の袋を肩にかけて戻ってきた。


「お前らが持ってきた薪、もう友達に返してきたぞ。それと、ちゃんと薪割り覚えろよ、忍者。あれじゃ煙ばっかで火にならねぇ。」


クロカゼは怒りをこらえながら空を見上げ、深呼吸して自分に言い聞かせた。


「師匠が言ってたな…人生に足をすくわれたら、顔から地面に突っ込めって。…いや、飛んで避けろだったか?あの人、やっぱり頭おかしかったな。」


コボロは乾いた笑いを漏らした。


「頭はおかしいが、言ってることは正しかったな。」


「昨日のこと、まだ忘れてねぇからな。」


「好きにしろ。」


その時、ルミとハイクモが家から出てきた。二人とも穏やかな顔をしていた。


「昨夜は本当に癒されました…ありがとうございました、コボロさん。」ルミは優しく言った。


ハイクモは静かに滑り寄り、詠んだ。


硬く冷たい

それでも食と屋根

感謝の気持ち


クロカゼは腕を組んで言った。


「さて、旅を続けよう。なあ、クソ商人。ミズハラの首都まで乗せてくれよ。どうせ俺には請求するんだろ?あの二人はタダでいいから、俺は乗る。」


コボロは振り返らず、冷たく言った。


「文句ばっかの忍者を助ける?遠慮しとく。」


そのまま家の方へ向かって歩き出した。


ルミは少し悲しそうな声で言った。


「コボロさん…もし私たちがお支払いしたら、連れて行ってもらえますか?」


コボロは立ち止まり、急に照れたような顔になった。


「え、ええと…お嬢さんの頼みなら、もちろん。お金はいりません。」


そう言ってから、クロカゼを指差し、大声で言った。


「ただし、忍者は別だ!」


地面に唾を吐き、睨みつけた。


「うわああああ!またかよ!女好きのクソ野郎!」クロカゼは叫んだ。


ハイクモは表情を変えず、静かに詠んだ。


忍者は苦しむ

ヒーラーは気づかず

商人は盗む


コボロはフードを整えながら言った。


「荷車の準備してくる。すぐ戻る。忍者、お前は薪でも切ってろ。あと、ちゃんと命中させる練習しとけ。」


クロカゼはぶつぶつ言いながらも従った。


しばらくして、コボロが戻ってきた。カタツムリは準備万端、荷車には物資が積まれ、彼の表情は真剣だった。


「準備完了だ。乗れ。」


ルミは軽やかに乗り込んだ。ハイクモは後部座席へ滑り込む。クロカゼは荷物を乱暴に投げ入れ、文句を言いながら乗った。


「このカタツムリが爆発したら、俺じゃねぇからな。」


コボロが手綱を引くと、カタツムリが動き出した。荷車が軋み、前方に道が開けていく。


ハイクモは遠くの地平線を見つめながら、静かに詠んだ。


薪と叫び

混沌の旅始まる

沈黙は来るか


コボロは何も言わなかった。ただ、険しい目で道を見つめていた。彼を知ってから初めて…言葉を失っていた。


荷車は静かに進み、ズレタの村を後にした。


そして、ミズハラで彼らを待つものは——まだ名前すら持っていなかった。

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