第9話 — 勝利と呼ぶには、ちょっと無理がある

「この世界には、笑顔で地獄を歩ける奴がいる。問題は、そいつが味方だってことだ。」



西門が地平線に見え始めた。 そして、その前に――あいつがいた。門番だ。


背筋を伸ばし、無愛想な顔。 カエルの失敗を何度も見てきたせいか、もはや表情は自動化されていた。 まるで「またかよ」と言わんばかりの目つき。


門番の視線がこちらに向いた瞬間、首が回り始め、肩が動いた。 ストレッチ? いや、違う。 あれは――舌の筋トレだ。


「うわ、また来たよ。あの半人前の火付け野郎が……」 腕を組み、胸を張るその姿は、まるで門のボス気取り。


カエルは目を閉じた。


「落ち着け……無視すればいい……無視すれば……」


だが、サロンが黙ってるわけがない。


「突き落としてほしい時は言えよ。馬車の前にでも。苦しまずに済むぞ。」


――そして、カエルの想像を超える光景が始まった。


レオンが胸を張り、違法レベルに白い歯を見せながら、門番に手を振った。 まるで幼なじみと再会したかのように。


「おお、城壁の勇敢なる守護者よ! この門を守るあなたの働き、まさに文明と混沌を隔てる英雄の務め!」


エルレンは矢を指で回しながら、片目をウィンク。


「責任重大ですよね……街を守るってことは……」 ちらっとカエルを見て、声を潜める。 「……ちょっとした火災事件からも。」


シルフィーはくるりと回転し、髪がふわりと舞った。


「本当にすごいです! 雨の日も風の日も……そして、予期せぬ火災の日も…… そのヒーローのエネルギーを保てるなんて!」


門番がまばたきをした。 しかめっ面が、少しずつほどけていく。


「そ、そうか……うん……まあ……誰かがやらなきゃな……ゴホッ、ゴホッ……大変な仕事だし……」 ヘルムを直しながら、胸を張る。今度は誇りで。


「なにせ――」 レオンが肩に手を置き、真剣な眼差しで言った。 「――あなたのような人が、この世界を支えているんですから。」


「な、なんてこった……」 門番は周囲を見回し、誰かが聞いていないか確認した。 「そんなこと……誰にも……言われたことなかったぞ……」


そして――最も恐ろしいことが起きた。


門番が、笑った。 いや、爆笑したのだ。


「お前ら、面白いな! 本当に面白い連中だ! ハハハハ!」


現実への冒涜。 いつもカエルにだけ冷たかった、まるでNPCのような門番が―― 今、太ももを叩きながら、腹を抱えて笑っている。


レオンは微笑み、マントを整え、指を地平線へ向けた。


「さあ、世界を救いに行こう。新たな冒険、新たな物語。風よ、我らをエルロスへ導け!」


パーティ全員が同時に振り返り、胸を張り、歯磨き粉のCMのような笑顔で歩き出した。


カエルはその場に立ち尽くし、まばたきを繰り返す。 今、自分が夢を見ているのか、現実が壊れたのか、判断がつかない。


「な……何が……起きたんだ……?」


サロンが鞘の中でカチャリと音を立て、笑いをこらえるのに必死だった。


「それがな、カエル……現実崩壊ってやつだ。メモしとけ。人生の試験に出るぞ。」


「でも……あいつ、俺のこと……ずっと嫌ってたんだぞ……ずっとだぞ!? なんで……どうして……!?」


カエルは手を振り回し、精神崩壊寸前でつまずきそうになる。


「俺の推測? 魅了魔法か、黒魔術。どっちか。いや、両方かもな。 正直……“魅力”ってやつ、どんな魔法よりも強い気がしてきた。」


サロンの声は、半分皮肉で、半分本気だった。


太陽の光を背に、〈陽光の旅団〉は軽やかな足取りで進んでいく。 笑顔を浮かべ、風に髪をなびかせ――まるでシャンプーのCMのように。


その後ろで、カエルは泥道にブーツを引きずっていた。


空には雲が広がり、晴れるか、災厄を降らせるか――まだ迷っているようだった。 湿った土の匂いが立ち上る。そこに混ざるのは、存在の危機、積み重なった失敗、そして“判断ミス”という名のスパイス。


「なあ、サロン……もし人生がダンジョンだったら、出口はどこだと思う?」


カエルは地平線を見つめながら、まるで現実のバグを探すように呟いた。


「出口なんてねぇよ、カエル。マップは閉じてる。 しかもな……ダメージはリスポーンするけど、尊厳は戻らねぇ。」


サロンの声は、乾いていて鋭かった。


一歩進むごとに、人生が「まだ下がある」と教えてくる。 そして――エルロスは、まだ何も知らなかった。



レオンは、まるで花祭りの主役のような笑顔で、カエルの肩に腕を回した。 まるで幼なじみのような距離感で。


「さて、カエル君。あの“叫ぶカエル”について、戦略を練らないとね。 あれは手強い敵だよ。危険極まりない。致命的だ。」


カエルは二度まばたきし、固まった。 口が少し開いたが、声は出なかった。


脳がフリーズし、今聞いた言葉を処理しきれない。


「……敵、手強い……?」


地面を見て、小石を蹴った。


「……うん、手強いよな……だいたい…… そうだな……固くなったパンくらいの強さか……」


サロンが鞘の中でカチャリと鳴った。毒気たっぷりに。


「言っただろ、カエル? これはな、 低予算の悲劇コメディだって。」


レオンは胸を張り、笑った。


「おおっ、喋る剣にユーモアまで! これはチームの士気に最高だね!」


レオンが笑顔で言うと、サロンが鞘の中で震えた。 信じられないというより、呆れ果てたように。


「喋る剣にユーモア……? 俺に胃袋があったら、今ごろお前のブーツに全部ぶちまけてるぞ、王子様。」


それでもレオンは完璧な笑顔を崩さない。


「そのエネルギー、素晴らしいよサロン。 チームにいいバランスをもたらしてくれる!」


カエルは目を細めた。 前世でどれだけの罪を犯したら、こんな目に遭うのか――真剣に考え始めていた。


そのとき、エルレンがアーチャーらしからぬ動きを見せた。 なんと、リュートを取り出し――そう、彼は本当に持ち歩いていた―― 甘く、幻想的な旋律を奏で始めたのだ。


「森の風に導かれ、狩人の星に照らされし我ら……」


そのエルフ特有の、妙に澄んだ声が響く。


「その“森”と“星”がどこにあるか見つけたら、 俺が火をつけてやる……黙らせるためにな。」


サロンが低く唸るように言った。


レオンはまったく動じず、後ろを振り返って笑顔を向けた。


「旅の途中ではいつもこうなんだ。 気分を高めるにはちょうどいいよ!」


シルフィーがくるりと回り、風の魔法をちらつかせながら言った。


「魔力の循環にもいいんですよ〜!」


カエルはこめかみを押さえた。


「お前ら……自然の力か、神の罰か……まだ判断がつかない。」


サロンは即答した。


「罰だ。間違いない。俺たちの分まで決めといた。」


こうして、〈陽光の旅団〉は進む。 跳ねるような足取り、堂々たる姿勢、まるで人生が舞台のように。


その後ろで、カエルは魂を引きずり、 サロンは舌より鋭い毒を研ぎ続けていた。

時は流れた。


空は晴れ、金色とも水色とも言えない、ぼんやりとした色に染まっていた。 道を歩く音、エルフの歌声、そして心の中の嘆き――それだけが響いていた。


やがて、畑が見えてきた。 低い柵、歪んだ木造の小屋。 そして、その先に――エルロスの村があった。


シルフィーがまたくるりと回り、まるで魔法市のポスターから抜け出したような笑顔で叫んだ。


「見てください! 着きましたよ!」


レオンは拳を高く掲げ、興奮気味に叫ぶ。


「また一つの任務、また一つの勝利だ!」


カエルは疲れ切った顔で、言葉を飲み込みながら呟いた。


「任務……勝利……うん、そうだな……」


サロンが乾いた音を立てて鞘の中で鳴った。


「カエル……これが“勝利”なら、俺は“敗北”でいい。 コーヒーと固いパン付きでな。」


そして、エルロスは彼らを迎え入れた。


泥にまみれた道に、ブーツの音が響く。 灯りは少なく、声も遠い。 古びたビール、濡れた革、そして名前のない何かの匂いが漂っていた。


そして――それはあった。 一軒の酒場。


腐った木材が、意地だけで屋根を支えている。 看板は傾き、何かが滴っていた。水か、油か、血か……誰も確かめようとはしなかった。


レオンは胸を張り、まるで出発前に磨いてきたかのような笑顔を浮かべた。


「完璧だ! 情報収集にぴったりの場所だし……」 両手を広げて言う。 「……チームの絆を深めるには、美味しい食事と素敵な仲間が一番だよね!」


カエルは彼を見て、まばたきし、もう一度見た。


「美味しい食事と……素敵な仲間……」 言葉を引きずるように呟いた。 「うん、そうだな……」


サロンは鞘の中でギリッと音を立てた。 それは、皮肉というより、もはや鉄の怒りだった。


「ここで“深まる”のはな……刺される確率だけだ。」


扉を押し開けた瞬間―― 酒場特有の匂いが襲ってきた。汗、ビール、乾いた嘔吐、そして最近の後悔。


音が……止まった。いや、ほぼ止まった。


まだサイコロを振っている者もいたが、ほとんどがこちらを見た。 賞金首の名が載っていそうな連中。 険しい顔、傷跡、刺青、眼帯、歯の抜けた笑み。


〈陽光の旅団〉の輝きは、まるでシロアリだらけの古びた扉に貼られた新品のステッカーのように浮いていた。


もちろん、レオンは笑顔を崩さない。


「こんばんは、諸君! 高貴なる市民の皆様!」


カエルはマントを直しながら、低く呟いた。


「……これは、絶対に面倒になるやつだ。」


そして――立ち上がった。


筋肉と肉塊でできたような巨漢。 身長は二メートルを超え、犯罪歴もそれに比例していそうな雰囲気。 角ばった顎、ずれた視線、胸毛の間に「母」と書かれた下手なタトゥー。


その男が足を引きずりながら歩き、シルフィーの前で止まった。


「おいおい……こんな可愛い子が、こんなとこで迷子かよ?」


声は、石と石を擦り合わせたような低音。


シルフィーは、脅しのニュアンスをまったく理解していない笑顔で答えた。


「迷子? いえいえ、私たち任務中なんです! 情報を探してて!」


カエルは目を細めた。


「……本当に、こういう子なんだな……」


サロンがカチャリと鳴った。


「確定だな。風魔法使い。脳内も風属性。」


レオンは、暴力の気配など一切気にせず、 シャンプーのCMのような笑顔で二人の間に割って入った。


「おお、親愛なるお方! もしかして、あなたならご存知かもしれません! “叫ぶカエル”について、何か情報を――」


巨漢はレオンを上から下までじろりと見た。 沈黙。 そして――地面に唾を吐いた。


「……新人か。」


それだけ言って、自分の席に戻っていった。


その仲間たちが爆笑する。


「見たか? 観光マップでも探しに来たのかよ、あのカエルの!」


「マロック、案内してやれよ! ただし、鏡の前は避けろよ! 自分の顔見て逃げ出すぞ!」


レオンは襟元を整えながら、顔に貼り付いたような笑顔を崩さずに言った。


「うーん……有益とは言えなかったけど、少なくとも――」 指を立てて、にっこり。 「――彼が何も知らないってことは分かったね!」


サロンの鞘がギリッと鳴った。 その音には、もはや怒りすら混ざっていた。


「レオン……お前の脳みそが食い物だったら、下水のネズミすら食わねぇよ。」


カエルは腕を組み、床を見つめながら呟いた。


「これ……現実なのか……?」


シルフィーは、動いてもいない髪を整えながら、にこやかに提案する。


「じゃあ……別のテーブルに行ってみましょうか!」


サロンは即答した。


「別の“惑星”に行った方が早いな。」


〈陽光の旅団〉は、相変わらずの輝きと笑顔を保っていた。 一方、酒場の他の客たちは、険しい顔と腐った息、そして“殴るぞ”という目つきで沈黙を守っていた。

そして―― その場の空気は、殴り合いか、もう一杯か。 どちらに転んでもおかしくない雰囲気になっていた。


彼らは空いていたテーブルにどさっと腰を下ろした。 椅子は悲鳴のような軋みを上げ、まるで「やめてくれ」と懇願しているかのようだった。


テーブルの天板からは、安酒、乾いた血、脂、そして人生の選択ミスが染み込んだような匂いが漂っていた。


もちろん、レオンは例の笑顔を浮かべた。 椅子を引き、両手でテーブルをパンと叩く。 その勢いは感染力がありそうだったが――この店の菌の方が強かった。


「本日の料理を頼むよ! 全員分で! それとビールも! もちろん、僕のおごりだ!」


胸を張り、仲間たちの反応を待つような目線を送る。


店主が近づいてきた。 体格は大きく、顔は笑顔を見たことがないような険しさ。 もし見たことがあったとしても、たぶん殺している。


髭は鉄線のようにゴワゴワで、片目は半分しか開いていない。 その表情は、嵐の海よりも荒れていた。


そして――唾を吐いた。


「本日の料理は……」 一語一語が鉛のように重い。 「狼のレバー串。泣き玉ねぎを丸ごと焼いて、調理中に泣き声を聞くのがポイントだ。」


一拍置いて、空気を噛むように口を動かす。


「ビールは……料理人の涙で割ってある。 ……注文するか? それとも、選択肢が生まれるのを待つか?」


レオンは澄んだ笑い声を上げた。 まるで、今のが最高のジョークだったかのように。


「素晴らしい! この素朴で味のあるユーモア、大好きだよ!」 そして、テーブルをもう一度叩いた。 「完璧だ! それでお願い!」


シルフィーはピクニックにでも来たかのような笑顔を浮かべる。 エルレンは軽く手を挙げ、椅子の上で踊り出しそうな勢いだった。


カエルは黙って虚空を見つめ、次にテーブルの天板を見て、 そして隣の客のビールに映った自分の歪んだ顔を見た。


「……これ、冗談じゃないんだな……」


サロンが乾いた音を立てた。


「俺は剣だが……これはさすがに飲み込めねぇ。」


店主は骨まで貫くような視線を投げつけ、低く唸った。


「厨房行ってくる。……気をつけろよ。」


顎で示した先には―― ネズミとゴキブリが、まるで命を賭けた死闘を繰り広げていた。


「……あいつら、どっちが明日まで生き残るか賭けてる最中だ。」


レオンは、髪の一本すら乱さず、まったく動じなかった。


「これぞ“個性”ってやつだね! よくある冒険者向けの酒場より、ずっと味があると思わない?」


サロンが笑った。 その声は、どこか乾いていた。


「味があるのは同意だが……ここで“共通”してるのは、バイオハザードの危険性だけだな。」


「おっと、店主さん!」


レオンが手を挙げ、厨房へ消えかけた男を呼び止めた。


「この辺りで……そう、“叫ぶカエル”ってのをご存知ありませんか?」


店主は立ち止まり、振り返る。 そして、さっきと同じ場所にまた唾を吐いた。 そこはもう、店のビールより湿っていた。


そして、壁を削るような声で答えた。


「農場の倉庫の近くだ……そこの住人に聞け。」


それだけ言って、背を向け、厨房へと消えていった。


一瞬、場に重い沈黙が落ちた。


だがすぐに、厨房の扉が勢いよく開く。


店主が戻ってきた。手には――いや、手にあるのは“皿”とは呼べない何か。 まるで、肉屋のまな板をそのまま再利用したような板だった。


それを、ドンッとテーブルに叩きつける。


串に刺さった狼のレバーは、焼き加減がバラバラ。 焦げているものもあれば、中が生のままのものもある。 串に使われている木の枝は、どう見ても衛生的ではなかった。


そして――玉ねぎ。 焼かれているのに、泣いていた。 本当に、涙を流していた。 テーブルに、料理に、床にまで。 まるで、死んだ後も「助けて」と訴えているかのように。


ビールは、ひび割れた木製のジョッキに注がれていた。 その香りは……そう、“アルコールに裏切られた夢”と“本物の涙の塩味”。


レオンは、舞台のフィナーレみたいな笑顔でジョッキを掲げた。


「乾杯!」


カエルはそのコップを手に取った。


「……乾杯って、何に対してだよ……?」


カエルはジョッキの中身を見つめた。 まるで、底なしの奈落を覗き込むように。

「これ……錆びも溶かせそうだな。」


サロンが鋭く震えた。


「溶けねぇよ。試した。」


エルレンが串を一本手に取り、かじった。 その瞬間、椅子の上で踊り出しそうになった。


「おおっ! これは……驚きの食感! カリッとしてて……」 顔をしかめ、口を押さえる。 「……ちょっとゴムっぽいかな……芸術的に“再構築”された味……?」


シルフィーは玉ねぎを一口。 そして――泣いた。


「うぅ……これ……しょっぱい……」 目をパチパチさせながら、自分の涙と玉ねぎの涙が混ざるのを感じた。 「これって……文化交流ですね!」


カエルは串をテーブルに置いた。


「文化交流、ね……文明から野蛮への片道切符だな。」


サロンが高らかに笑った。


「これはもう、料理じゃなくて犯罪だな。」


食事は――終わったのか、諦めたのか。 その境界は曖昧だった。


エルレンは、人生で一度も挫折を知らなかったかのようなテンションで立ち上がり、カウンターへ向かった。


「すみませーん! この辺に宿ってありますか?」


店主は彼を見て、顎をさすりながら唸った。


「広場の近くに一軒ある……ドアノブが曲がってるやつだ。」


「おっ、あった!」 エルレンがテーブルに向かって手を振る。 「レオン! 宿見つけたぞ! 行こう!」


レオンは懐から数枚のコインを取り出し、カウンターに置いた。 その笑顔は、まるでオペラのチケット代を払っているかのようだった。


「この食事と……この冒険に、感謝を。」


パーティは立ち上がった。 まるで、壮大な冒険に旅立つかのように―― あるいは、食中毒に向かうかのように。


椅子は軋み、笑い声が響き、 テーブルの上では、玉ねぎがまだすすり泣いていた。


彼らは店を出ていった。 そして、酒場には―― 汗と臭気と、「また一組、生き残れるかどうか分からない冒険者たちの記憶」だけが残された。


レオンは両腕を広げ、横に跳ねるように歩きながら叫んだ。 まるで人生をクリアしたかのようなテンションで。


「美味しい食事! 美味しいお酒! 最高の仲間たち!」 その場でくるりと回り、地平線を指さす。 「次は……ふかふかのベッドだ! そして、冒険は続くぞ、カエル君!」 ドンッと背中を叩く。魂まで吹き飛びそうな勢いで。


「本物の冒険者ってやつを……ゴホッゴホッ……教えてやる!」


サロンは鞘の中でガチャガチャと震えながら、爆笑寸前だった。


「ぷっ……それは見ものだな。」


カエルは何も言わなかった。 顔も向けなかった。 ただ、体を預けた。 感情的にも、精神的にも、そして物理的にも――引きずられるように。


その目は、虚ろだった。 まるで、「本当にこのパーティと同じ次元に存在していていいのか」と問いかけているような。



彼らは歩き続けた。 街はすでに眠っていた―― あるいは、眠ったふりをしていた。 閉ざされた窓の奥に灯る光は、見てはいけない何かを隠しているようだった。

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