第5話 公衆衛生と抗生物質・抗菌剤
ナギサが次に取り掛かったのが、公衆衛生だ。
上下水道、特に下水道の完備である。
(マンティコ帝国皇帝 リリアス・マンティコ:女)
流行り病対策とな。
(イシュタル侯爵家ひとり娘 ナギサ)
はい、清潔にすれば、ある程度の流行り病の規模を小さくできます。
その為にも、特に下水道は必要です。
それは、この帝都の隅々まで。
貧民街だからと甘くみてはいけません。
"流行る"んですから、その発生源を潰す必要があります。
完全には無理ですが、被害をできるだけ小さくする必要があります。
(リリアス・マンティコ皇帝)
しかし、それだと費用がな。
(ナギサ・イシュタル)
魔法を併用します。
技術と魔法の二段構えです。
(リリアス・マンティコ皇帝)
ほぅ、どうやる?
(ナギサ・イシュタル)
まず、魔道士が土魔法で水路を掘ります。
そこに技師が水路を作る要領で組んでいくんですが、仕上げは魔道士が固めます。
土魔法で固める事で、水漏れを防ぐのです。
で、ある程度ごとに浄化魔法陣を刻んでいきます。
すると、浄化された水が流れていくので、汚染が最小限で済みます。
当然、清掃は必要ですが、直接、見境なしに棄てるのではないので、清潔さが保てます。
その魔道士は土魔法に特化していれば魔力量は無視して良いので、安くなるかと。
(リリアス・マンティコ皇帝)
魔力量無視?
(ナギサ・イシュタル)
はい、魔石を使います。
魔力はあるので、使い手が居れば大丈夫です。
(リリアス・マンティコ皇帝)
しかし、魔石は高いぞ。
(ナギサ・イシュタル)
この際、出し惜しみ無しでいきます。
箝口令をお願いします。
(リリアス・マンティコ皇帝)
良いが、魔石の調達は?
ナギサは魔石を山盛りにした。
(リリアス・マンティコ皇帝)
なっ!
(ナギサ・イシュタル)
魔石なら、生きてる限り無限に作れます。
出所は秘匿にしてください。
(リリアス・マンティコ皇帝)
わ、分かった。
では、早速、取り掛かろう、グレン!
(マンティコ帝国宰相 グレン・アシス:男)
はっ!
(リリアス・マンティコ皇帝)
早速やれ、ただし、魔石の事は国家機密だ。
(グレン・アシス宰相)
はっ!
皇帝陛下肝入りの公共事業が始まる。
周りが不思議がるぐらい、魔石がどんどん運ばれてくるので、作業はどんどん進んでいく。
(技師:男)
魔石が凄いな。
(魔道士:女)
こんなに魔石をどうやって……
(近衛騎士:女)
極秘事項だ。
この事は忘れろ。
(魔道士:男)
はい。
それと同時に、浄化魔法陣が山のように持ち込まれる。
(魔道士:男)
こんな大量に魔法陣が……
(近衛騎士:男)
極秘だ、考えるな。
(技師:男)
はい……
異常な量の魔石と浄化魔法陣の投入で、3ヶ月で完了した。
(リリアス・マンティコ皇帝)
これで流行り病も……
(ナギサ・イシュタル)
規模が小さくなるはずです。
次は、流行った場合の対策に入ります。
新薬の開発です。
ひょっとして、カビから薬を作ろうとしている人って居ます?
(イシュタル侯爵家当主 クラン:女)
それなら帝国薬師大学に1人居るわ。
カビばかり相手にしてるから"偏屈"と言われてるわね。
(ナギサ・イシュタル)
それが役に立つかも。
早速、帝国薬師大学に向かう。
カビの研究をしているという、ケイス・リカントに会いに行った。
(ナギサ・イシュタル)
あなたか、カビの研究をしているケイス・リカント様ですか?
(帝国薬師大学カビ研究者 ケイス・リカント:女)
ええ、何の役にも立たないゴミを研究しているケイス・リカントは私です。
あゝ、かなり捻くれてるな。
(ナギサ・イシュタル)
カビから薬を作る研究をしているとお聞きしましたが。
(カビ研究者 ケイス・リカント)
はい、ごみから薬を作ろうとしている錬金術師の紛い者です。
(ナギサ・イシュタル)
ぜひ、協力してください。
あなたの力が必要なんです。
(カビ研究者 ケイス・リカント)
・・・は?
(ナギサ・イシュタル)
カビから薬は出来るんです。
しかもとんでもない治療薬が!
(カビ研究者 ケイス・リカント)
まさか……
(ナギサ・イシュタル)
自己紹介が遅れました、私はナギサ・イシュタル。
イシュタル侯爵家の一人娘にして薬師です。
(カビ研究者 ケイス・リカント)
ナギサ・イシュタル!噂には聞いていました。
私なんかが実際にお会いできるとは……
(ナギサ・イシュタル)
それで、カビから新薬の話なんですが、協力してもらえないでしょうか?
(カビ研究者 ケイス・リカント)
もちろん、喜んで。
で、どのカビを狙われています?
(ナギサ・イシュタル)
「青カビ」です。
(カビ研究者 ケイス・リカント)
やはりですか!
(ナギサ・イシュタル)
と言うと?
(カビ研究者 ケイス・リカント)
以前、私が"ぶどう球菌の培養"をしていて、失敗したのです。
青カビが生えたのですが、何故かその周りには"ぶどう球菌"が育成してこなかったのです。
それで、まさかと思い、研究しているんですが、なかなか……
(ナギサ・イシュタル)
その発育してこなかった原因が、"薬になった"からです。
それだけを取り出す事ができれば、かなり有用な新薬ができます。
(カビ研究者 ケイス・リカント)
やはり、私の推測は正しかったのか。
では、ぜひ協力させてください。
しかし、よくこんなくだらない研究をご存知で。
(ナギサ・イシュタル)
えっ?あゝ……
(マンティコ帝国近衛騎士団長 アイリス・バロイ:女)
こちらのナギサ様は、陛下の命を救った英雄。
そして、かねてから噂があった"異世界転生者"という人智を超えた存在のお方。
その叡智を我々に授けてくださっているのだ。
(ナギサ・イシュタル)
あのぅ……死にそうなぐらい重圧かかってるんですが、それはもう、プチっと潰れるぐらい(涙目)
(カビ研究者 ケイス・リカント)
そ、そんなお方が……
(ナギサ・イシュタル)
いや、ホント、やめてください。
それより、薬を作りましょうよ。
(カビ研究者 ケイス・リカント)
はい!
(ナギサ・イシュタル)
と、同時に、それが効かない病があります。
放線菌という土壌細菌を知っています?
(カビ研究者 ケイス・リカント)
それなら、私も研究しているものです。
(ナギサ・イシュタル)
それから作られる薬があります。
できれば二本立てでいきましょう。
(カビ研究者 ケイス・リカント)
はい!
いわゆる、ペニシリンとストレプトマイシンの作製だ。
ペニシリンは化膿など全般に、ストレプトマイシンは、あの亡国病"結核"と黒死病"ペスト"の治療にだ。
新薬開発は難航したが、なんとか製品化にこぎつける。
まず、完成したのはペニシリン。
(カビ研究者 ケイス・リカント)
ようやく完成しました。
(ナギサ・イシュタル)
できたね、なんて名前を付ける?
(カビ研究者 ケイス・リカント)
えーっと、青カビなので、ペニシ……あっ!"ペニスイン"にします!
(ナギサ・イシュタル)
分かった、"ペニスイン"ね。
陛下に報告しよう。
そう言うと、ナギサとケイスは皇帝陛下へ報告に行った。
(リリアス・マンティコ皇帝)
ほぅ、出来たか。
(ナギサ・イシュタル)
はい、陛下。
(カビ研究者 ケイス・リカント)
こちらが新しい薬にございます。
これは"ペニスイン"という皮膚への感染症や、風邪などの喉の炎症他、色々な症状を治す事ができます。
それに、梅毒や淋病といった性病も治療できます。
後に、ペニシリンは淋病には効かなくなるが、それはもっと先の話。
抗菌薬と淋菌との戦いは泥沼化する。
次第に効かなくなっては、また新しいのを開発しての繰り返し。
淋菌自体が変異していくのだからタチが悪い。
今はどっちが勝ってるんだ?
(リリアス・マンティコ皇帝)
魔法のような薬だな。
(グレン・アシス宰相)
梅毒に効く!
(ナギサ・イシュタル)
えっ?
(グレン・アシス宰相)
えっ?
(ナギサ・イシュタル)
宰相??
(リリアス・マンティコ皇帝)
良かったな、グレン!お前の梅毒も治るぞ!!(ニヤッ)
(カビ研究者 ケイス・リカント)
宰相が梅毒……
(アイリス・バロイ近衛騎士団長)
最低!不潔だ!(ゴミを見る目)
(グレン・アシス宰相)
あは、あはは、はぁ……(涙目)
(ナギサ・イシュタル)
これから、もう一つの新薬の完成にかかります。
(リリアス・マンティコ皇帝)
更にもう一つか、で、それは?
(ナギサ・イシュタル)
あの亡国病と黒死病に効く治療薬です。
(グレン・アシス宰相)
亡国病と黒死病に効く治療薬!!
(ナギサ・イシュタル)
はい、今、それも取り掛かっています。
(カビ研究者 ケイス・リカント)
既に研究段階で、もう少し結果が集まれば、なんとか……
(ナギサ・イシュタル)
製品化は目前です。
と言っても、ここからが正念場なんですが(汗)
(リリアス・マンティコ皇帝)
必要な物は手配する。
必ず成し遂げてみせよ。
(カビ研究者 ケイス・リカント)
はっ!
それから1年後、完成する。
その間、流行り病の規模も小さくなっていたが、亡国病と黒死病はどうにもならなかった。
そこへ満を辞して現れた、亡国病と黒死病の治療薬。
(ナギサ・イシュタル)
名前どうする?
(カビ研究者 ケイス・リカント)
えーっと、ストレプトマ……ストラップ……いえストリップマシン。
そう、"ストリップマシン"にしましょう。
(ナギサ・イシュタル)
んじゃ、陛下に報告に行きましょう。
陛下に報告に行くと……
(リリアス・マンティコ皇帝)
できたか!
(ナギサ・イシュタル)
はい、遂に……
(カビ研究者 ケイス・リカント)
こちらでございます、陛下。
(リリアス・マンティコ皇帝)
これか……
これで、遂に、我が国は、亡国病と黒死病を克服できるというのか……
(ナギサ・イシュタル)
陛下、"清潔である事"が第一条件ですから、そこは徹底してください。
それと、どんな妙薬も副作用があります。
飲まなくても良いなら、それが一番ですから、そこはお願いします。
(リリアス・マンティコ皇帝)
不死にはなれんと。
(ナギサ・イシュタル)
はい。
それと、ケイス様の研究を援助していただきたいんです。
(カビ研究者 ケイス・リカント)
は?
(リリアス・マンティコ皇帝)
ほぅ、で、理由は?
(ナギサ・イシュタル)
今回手掛けたのは、一種の戦争です。
病という敵に対して生き残りを賭けた。
ただ、相手も黙ってはいません。
必ずこの先、これらの薬が効かなくなる時が現れます。
それに向けての研究と新薬開発を。
ケイス様の研究分野は、それに対抗できる手段の一つかと。
研究を進めれば、まだまだ色々発見ができると思います。
この領域に踏み込んだのですから、常に相手の優位に立ちやすいように対策すべきかと。
(リリアス・マンティコ皇帝)
分かった。
お前がそう言うのだ、そうしよう。
ケイス・リカント、お前を私直属の王宮特別研究員に任命する。
近日中に王宮内に研究施設を作ろう。
そこの研究員兼研究施設長を任せる。
必要な物は全て揃える、後から宰相を行かせよう。
よいか、グレン。
(グレン・アシス宰相)
はっ!仰せのままに。
(カビ研究者 ケイス・リカント)
陛下、ナギサ様……
(ナギサ・イシュタル)
良かったね。
でも、これからが大変だから、頑張ってね(微笑み)
(カビ研究者 ケイス・リカント)
はっ、はい!(感涙)
それからケイスは、抗菌、抗生物質の新薬開発に心血を注ぐ事になる。
また、亡国病、黒死病ともに流行りの兆しはあったが、ナギサとケイスが開発した"ストリップマシン"が大活躍し、歴史上類をみない犠牲者の少なさで乗り切った。
(リリアス・マンティコ皇帝)
でかした、ナギサ。
(ナギサ・イシュタル)
いえ、ケイス様の研究あっての成功ですから。
(リリアス・マンティコ皇帝)
そうだったな。
よく研究を続けていてくれた、ケイス。
(カビ研究者 ケイス・リカント)
いえ、私もナギサ様に見出されてなければ、今頃は研究を辞めていたと思います。
(リリアス・マンティコ皇帝)
其方の研究室は、いつ潰れてもおかしくない状態だったと聞いたからな。
(カビ研究者 ケイス・リカント)
もはや意地で続けていた研究です。
閉鎖を言い渡されたら、素直に応じる所存でした。
(リリアス・マンティコ皇帝)
その前にナギサが見つけてくれてよかったわ。
こんな逸材を埋もれさすところだった。
(カビ研究者 ケイス・リカント)
私も、ナギサ様から"必ずある!"と断言されなければ、辞めていたと思います。
(リリアス・マンティコ皇帝)
ナギサよ、分かっていたのか?例の能力で。
(ナギサ・イシュタル)
はい、実は。
ただ、どうしたら実現できるかは全く分からない状態だったので……
ケイス様の研究のおかげで、なんとかなりそうだと思いました。
(カビ研究者 ケイス・リカント)
という事は……
分かりました、必ずこの戦争には勝ち続けてみせます!
(ナギサ・イシュタル)
よろしくお願いします。
その後、次々と新しい抗菌薬、抗生物質を開発していったケイス。
周りからは、"菌の女王"と呼ばれるようになった。
まぁ、なんというか……もうちょっとカッコ良くというか……ま、いいか、思いつかんわ(笑)
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