薬剤師が異世界転生!
なぎさセツナ
第1話 異世界転生
幼い頃、あまり恵まれた家庭で育っていなかった渚。
お小遣いも周囲と比べると6割ほどしか貰えず、お金には苦労していた。
高校の時など、弁当を持って行くと、小遣いが貯まらず、友達付き合いにも困り、パンを買うから昼ご飯代を貰うようにした。
しかし、学食?の売店で買うとお金が足りない、隣りのパン屋の前には"ヤクザ教師"が陣取り、お金や購入したパンを取り上げ、換金しては自分のタバコを買うというクズしか居なかった。
しかもバイトは禁止、バイトが見つかると"お布施"と称して学校に寄付をさせ、バイト先にまで詰め寄り、幾らバイト代を払ったか脅し聞くような、クソみたいな清風学園に通っていたからだ。
何故、そのようなクズ高校、清風学園に通う事になったかというと、これまた中学で受験妨害に合ったからだ。
その三原中学校で、体育の教師、藤田は"お前みたいな勉強と運動ができるヤツがオレは大嫌いなんや!"と、何かにつけては因縁をつけ、テストで最高得点を取っているにも関わらず、最低評価を付けた。
槍投げのやり過ぎで、バカになったんだろう、脳筋バカだ。
音楽の藤井は、"お前が居るから、私のお気に入りの石川君がクラストップに成れないんだ!中1から最高得点を取りやがって"と最低評価を付けるだけでなく、掃除中にピアノの鍵盤を拭いていると、蓋を閉めるといった虐待もした。
反射神経が良かったのでかわしたが。
すると、手首を掴んで蓋を閉めるという気狂いな行動もするようになった。
美術の田中は、クラブを辞めたのを恨み、また、それがキッカケで顧問をサボっていたのがバレた事を逆恨みして、成績に最低評価を付けた。
技術家庭科の新は、辞めるキッカケだと周りが勘違いしている、無理矢理メガネを掛けさせ、集中攻撃でボールをぶつけ、メガネを壊した事がバレたのを逆恨みして最低評価を付けた。
不良までけしかける嫌がらせをして。
全て最高得点を取っているにも関わらずだ。
今から40年前の昭和の時代には、そんな事がまかり通っていた。
コイツらだけが気狂いと思いたいが、まぁ、高校も負けず劣らずの気狂いヤクザ教師の巣窟だった。
まぁ、清風学園に関しては、校内購買部の方が外部百貨店より何倍も高いという狂った高校だからな。
そんな高校では、まともにパンも買えないので、空腹を満たす為に、通学途中のパン屋で食パンを1斤買い、飢えと差額で付き合いの資金を作っていた。
まぁ週末に、駅の立ち食いそば屋で300円以下のうどんを食べるという付き合いだったから、なんとかなった。
当時の偏差値教育の犠牲者だな。
進学校なのに、毎日ヤクザ教師の相手、辟易していた。
大学は将来、一発逆転と薬学部に行き、薬剤師になった。
まぁ、そこでも、"貧乏人"とバカにされ、貧乏人が大学に来るのは生意気だと退学届を偽造されるイジメにも合うが。
無事卒業し、国家試験にも受かったが、就職先の成和薬局がクソだった。
田舎の人数不足の高額年俸を狙って行ったから、忙しいのは分かっていた。
しかし、従業員がクズ。
ここは幼稚園か?と勘違いするほどの嫌がらせが社長の愛人の中原というお局を中心にやってくる。
薬のすり替え、分包機の掃除中にスイッチを入れ稼働させるなど、到底まともな連中ではなかった。
副社長のボンボン、山岡に至っては、結婚しているのに、ナンパし、女を連れ込み、挙げ句の果て盗撮がバレて慰謝料300万円で和解するという女癖の悪さだった。
しかも慰謝料を要求した相手に、"家に呼んでやって、散々飯奢ってやった癖に、良い思いだけしやがって!こんなクソ女、どう思う?"と平然と周りに愚痴っていた。
ある程度資金が出来たので、チャンスを探して退職したが、散々嫌がらせをした上に、最後の月の給料は未払いだった。
転職先のせとうち薬局もクソだった。
女社長の梶尾は気狂いで、5分もすれば言う事が変わり、思い通りにならないと、"私の気持ちが分かっていない"とカゴを机に叩きつけながら発狂した。
男にもだらしなく、一見、一軒家のガレージとも見える薬局だった為、2階は倉庫か住居兼店舗の物件かと思いきや、実はその家の旦那さんを寝取り、改造させた事が近所の人からの話で分かった。
そのせいで奥さんが病んでしまったらしいが、"自分に魅力が無くて寝取られた癖に迷惑だ。文句があるなら自分磨きをしてから言え"と、全く悪びれる様子も無かった。
また、ここを退職した時の最終月の給料も未払いだ。
故に、渚は正解を知らなかった。
"この人のようにすれば成功する"ではなく、"このバカの真似だけは絶対してはいけない"という例しか知らなかったのだ。
そうしているうちに、チャンスを掴み、独立した。
"渚薬局"の創設である。
なんだかんだと経営は概ね順調だった。
正解を知らないだけに、"ボクならこうする"を貫き、患者さんからは弁当や缶コーヒーを差し入れしてくれたりと可愛がってもらえた。
異業種にも手を広げ、毎年年商を更新し続け、1店舗ながら年商1億5000万越えまで成長させた。
しかし、業界最大手、アイ●薬局に目を付けられ、同県進出の足掛かりにと買収されてしまい、足掛け14年の営業に幕を下ろした。
渚は身体を壊し、車椅子になりながらも最後まで陣頭指揮を取っていたが、買収完了後、しばらくして寝たきりになるほど身体が壊れた。
最終的には、食事は豆腐とサプリメントのみとなったが、なんとか治そうと最後まで足掻いた。
しかし3年後、遂に打つ手が無くなる。
(渚)
やり切ったな、もう思い残す事はない。
やり切るって、こんな清々しい気分になるんか、初めてやね。
次にやる事といえば、今風に言うと、"ガチャの引き直し"だ。
今度はどんな世界で、どんな立ち位置を引き当てるか、楽しみで仕方なかった。
(渚)
今度はどんな世界かな?
もっと上の階級の立ち位置を引き当てたら、もっと大きな事ができて、今回以上に大きなひと山当てられる(ニヤッ)
渚は夢と希望とやる気に満ち溢れていた。
そして、身体を清め、包丁を首に何度も刺し、自殺した。
目が覚めると、そこは明らかに異世界だった!
(渚)
やった!異世界だ!何から手掛けるかな?
っと、その前に、立ち位置はどうなんだ?
(女)
先生!先生ぇ〜!!
先生と叫びながら、こちらに走ってくる女性が居た。
(渚)
先生?
(女)
先生!どうしたんです?患者さんが……
(渚)
先生?患者さん?って、アンタ誰?
(女)
酷い!私は先生の弟子にして助手のアリス・ヴェルホードですよ!
(渚)
じゃあ、ボクは?
(ナギサの弟子兼助手 アリス・ヴェルホード:女)
ボク?先生、いつから男になったんですか?
先生はイシュタル侯爵のひとり娘、ナギサ・イシュタルじゃないですか!
どうしたんです?らしくないですよ?先生。
(渚)
そっか……そうだった、ごめん。
(アリス・ヴェルホード)
先生!忙し過ぎるんですよ。
人を雇いましょうよ、腕の良い薬師なら知ってますし、ヴェルホード家が責任持って、信頼できる薬師を紹介しますから。
(渚)
なら、そうしよう。
(アリス・ヴェルホード)
やっとその気になってもらえましたか、先生(ため息)
早速、アリス・ヴェルホードは人選に入る為に走って行った。
(渚)
そうか、ボクは女か、やったな。
で、イシュタル侯爵家のひとり娘か、ひょっとして、ガチャ、大当たり?UR引いてない?(ニヤッ)
名前はナギサ・イシュタルね、間違えないように気をつけよう。
すると、凄いスピードでアリス・ヴェルホードが帰ってきた。
(アリス・ヴェルホード)
先生!患者さんです!忘れてました。
(イシュタル侯爵家ひとり娘 ナギサ)
はいはい、今行きます。
って、薬師を紹介?雇う?忙し過ぎる?
ボク、薬師??
(アリス・ヴェルホード)
またボクって……そうですよ、薬師ですよ!
それと侯爵家のお嬢様が"ボク"は無いです!
(ナギサ・イシュタル)
はいはい、分かりました。
ナギサは患者のところへ行く。
(ナギサ・イシュタル)
えっ!こ、これは……
(患者:男)
先生!!
(ナギサ・イシュタル)
死病……
(患者:男)
えっ?(涙目)
(ナギサ・イシュタル)
ではないですね。
ガシャ〜ン!!
患者とアリスがズッコケる。
(アリス・ヴェルホード)
先生!!
(ナギサ・イシュタル)
まぁ、舐めときゃ治りまぶふっ♡
アリスの右フックがナギサの左頬に突き刺さる。
(アリス・ヴェルホード)
真面目にやってください、先生(感情の消えた目)
(ナギサ・イシュタル)
はい……
真面目に診察して……
(ナギサ・イシュタル)
では、お薬出しますね。
(患者:男)
沁みますか?先生。
(ナギサ・イシュタル)
いえ、坐薬です。
ゴン!
頭をぶつけるアリス。
(アリス・ヴェルホード)
皮膚ですよ!なんで坐薬なんですか!!
(ナギサ・イシュタル)
いや、気持ちいいかなどぶっ!!
アリスのエルボーがナギサの頭に決まる。
(アリス・ヴェルホード)
変態ですか!
塗り薬、出してください!!(蔑む目)
(ナギサ・イシュタル)
はい……(怖)
言われた通り、塗り薬を出す。
(患者:男)
あのぅ……お代は……
(ナギサ・イシュタル)
金貨100まい“ごぼっ!!
アリスはナギサの股間を後ろから蹴り上げた。
(ナギサ・イシュタル)
んぼぼお“ほ”ほ“ぉ“ぉ”ぉ“ぉ”♡(白目)
(アリス・ヴェルホード)
金貨100枚って、どこの国ですか!
100バータイです。
(患者:男)
いつもすみません。
(アリス・ヴェルホード)
いえいえ、庶民価格ですから。
貴族からはぶん取りますから、大丈夫ですよ(笑)
(患者:男)
あはははは(汗)
白目を剥いて泡を吹くナギサをよそ目にアリスは会計を済ませた。
(アリス・ヴェルホード)
今、足に変な感触が……気のせいかな。
ナギサの股間を蹴り上げた時に、足に違和感を感じたアリスだった。
しばらくのたうち回って復活したナギサ。
(ナギサ・イシュタル)
いきなりちん●蹴り上げるなよ!死ぬぞ!!
(アリス・ヴェルホード)
なんで女にちん●付いてるんですか!!
(ナギサ・イシュタル)
付いてないのぎゃべっ!
ナギサの頭にアリスのかかと落としが決まる。
(アリス・ヴェルホード)
付いてるわけないでしょ(感情の消えた目)
(ナギサ・イシュタル)
はい、ごめんなさい(怖)
(アリス・ヴェルホード)
で、本題に入ります。
先生、狂いました?
(ナギサ・イシュタル)
なんで?
(アリス・ヴェルホード)
今までと全然違うからです。
あんなふざけた事も言わなかったし、イラっときて手が出る事も無かったですから。
(ナギサ・イシュタル)
足も出たよね。
(アリス・ヴェルホード)
な・ん・か・言・い・ま・し・た・?(感情の消えた目)
(ナギサ・イシュタル)
いえ、何も(冷汗)
(アリス・ヴェルホード)
で、薬師という事も忘れていたし、名前すら忘れていた。
一体何があったんです?
(ナギサ・イシュタル)
大人の事・情・お♡
(アリス・ヴェルホード)
・・・は?(射殺す目)
(ナギサ・イシュタル)
嘘です。
でも信じないでしょ?
(アリス・ヴェルホード)
言ってみないと分かりません。
(ナギサ・イシュタル)
うーん、あのね……何と説明したら良いか……えーっと……そのぅ〜……あのぅ〜……ひ・み・ちゅ♡ぶっ♡
アリスの左ストレートがナギサの右頬に決まった。
(アリス・ヴェルホード)
早く言え(感情の消えた目)
(ナギサ・イシュタル)
はい……
正座するナギサ。
(ナギサ・イシュタル)
では、率直に言います。
異世界から転生しました。
元の世界では自殺しました。
終わった世界で思い残す事が無くなって、やり切ったので。
で、新しい世界でまた一旗あげるぞって、夢と希望とやる気に満ち溢れてこの世界に来ました。
立ち位置としては、大当たりみたいっすね。
因みに、元の世界では薬剤師、ここで言う薬師かな?と経営をしてました。
(アリス・ヴェルホード)
で?(射殺す目)
(ナギサ・イシュタル)
ほら、信じてないやん!だからどう説明したら良いか分からんし、秘密にして上手く立ち回ろうって思ってたんだよ(涙目)
(アリス・ヴェルホード)
はぁ……分かりました。
ってなると、今までの先生、ナギサ・イシュタル様はどうなったんです?
(ナギサ・イシュタル)
・・・あれ?どうなったんや??えっ?どういう事?
(アリス・ヴェルホード)
それはこっちが聞きたいです!
(ナギサ・イシュタル)
ラノベって知ってる?ライトノベル。
(アリス・ヴェルホード)
えーっと……英雄譚とか、物語みたいな物ですか?
(ナギサ・イシュタル)
まぁ、そんな感じやろね。
その知識で言うと……
*入れ替わった。
*その人の中にその人格が眠っていて、それが目覚めた。
どっちにしても、転生チートのボーナス付きの可能性大。
そうなると、"無双でうはは♡"な生活が約束される、かも。
(アリス・ヴェルホード)
はぁ……まぁ、信じるかどうかは別として、しばらく観察します。
それで判断したいです。
たしかに口調は変わるわ、自分の事を突然"ボク"と言い出すわで、おかしな事ばかりです。
思考停止して、"そうなんだ"って言った方が早いですが。
(ナギサ・イシュタル)
そうしてくれ。
となると、この先、何に気をつけたらいい?
(アリス・ヴェルホード)
そうですね、まずは当主様です、貴方のお母様、クラン・イシュタル様。
それとお父様のゲイン様。
ゲイン様は婿養子です。
どちらも薬師で、当主のクラン様は宮廷筆頭薬師で、皇帝陛下の専属薬師です。
ゲイン様はその助手ですね。
それと、ここはマンティコ帝国、皇帝陛下は女帝、リリアス・マンティコ様です。
また、イシュタル家は侯爵ですから、もちろん侯爵領を持っています。
それはもう、辺境伯程度なんて裸足で逃げ出すほどの豊かで広大な領地を。
とりあえず、これは思い……いえ、覚えてください。
それと、通貨単位はバータイ。
時間ですが、1年が12ヶ月、360日です。
1ヶ月が30日、1日が24時間、1時間が60分。
単位ですが、距離は1キメが1000メ、1メが100セメ、1セメが10ミメ。
重さが1トが1000キグ、1キグが1000グ、1グが1000ミグ。
容量は、1キリトが1000リト、1リトが1000ミリトです。
(ナギサ・イシュタル)
分かった。
他はその都度、教えてくれ。
(アリス・ヴェルホード)
もちろんです。
とりあえず、最低限の情報を叩き込んだナギサだった。
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