【愛し愛され結ばれる】

「シルビア、ネックレスを貸して下さい。」



「え?ええ……。」



首を傾げながらネックレスを手渡すと、リングを取り外して片膝をついた。



「私と結婚して下さい。」



プロポーズ?



「もうしてるわ。」



シャスタが首を振る。



「貴女と結婚したいんですよ、ミス・マクファーソン。」



ああそうか。

今の自分はマクファーソンだ。



「喜んでお受けするわ。」



「では婚約成立ですね。」



シルビアの指にリングがはめられた。



「貴女を愛しています……。」



ギュッと彼女を抱き締める。

20年待ち続けた愛しい彼女がここにいる。



「私も愛して──あん!」



突然横抱きにされ、驚いて顔を見た。



「シャスタ?」



呼び掛けにも応えず、車に向かって歩き出した。



「どうしたの……?」



「貴女を愛したい……。」



「え、今はだめよ……。式を挙げるまで待って。」



首を振る。



「じゃあ、せめて夜まで……」



「待てません。もう20年待ちました……。」



最後に愛し合ったのは20年前。

20年間彼女の温もりを忘れられなかった。


人間になった日は彼女を一日中待ち続け、現れなかったその夜は悲しみのあまり涙を流した。

いくら求めても、いくら愛していても彼女はいなかった。


狂おしいほど愛しいシルビア。

一日たりとも彼女を忘れた事はない。


だが今はその彼女が腕の中にいる。

愛する彼女を目の前にして、これ以上待てるはずがないのだ。



「シルビア……貴女を愛したい……」



愛おしそうに見つめるシャスタ。

その瞳が全てを語っていた。


彼は20年間変わらず自分を愛してくれていた。

自分は生まれ変わってきたが、彼は20年を生きて待っていたのだ。


その彼に待てと言う方が無理かも知れない。

シルビアはシャスタの変わらぬ想いが嬉しかった。

その想いに胸が高鳴ってくる。



「シャスタ……キスして……。」



「はい。」



その口づけは激しいものではなかった。

こわれ物に触れるかのような優しい口づけ。

それがかえって胸を熱くした。


懐かしい温もり。

シルビアも彼同様に我慢できなくなっていた。



「20年……待たせてごめんなさい……。」



「良いんですよ。こうして貴女は戻って来たんですから……。」



「愛してるわシャスタ……。私を……抱いて……。」



「了解。」



彼女の一言で二人は車の中へと消えた。

窓を暗くし、シートを倒す。



「愛してます……シルビア……。」



「私も……よ。愛してるわ、あなた……。」



衣服を脱ぎ捨て、二人はしばし見つめ合う。



「逢いたかった……。シルビア……逢いたかった……。」



微笑む彼女の頬に触れ、その存在を確かめる。


これは記憶の中の彼女じゃない。


この肌、この髪、この温もり。

この手に触れるその感触は現実のものだ。


彼女はいる。ここにいる。

愛しい彼女がここにいる。


感じたい。彼女を感じたい。

彼女の存在を全身で感じたい。


唇に、首筋に、身体中にキスをする。

頬を、乳房を、全身を撫でまわす。



「何て綺麗なんだ……。少しも変わっていない……。」



返ってくる反応は昔のまま。

姿形だけでなく、感じる場所も、何もかもが昔のままだ。


紅潮した頬。

汗を弾くみずみずしい肌。

柔らかくしなるピンク色に染まった身体。


苦悶の表情を浮かべ、喘ぎ悶える美しいシルビア。



「シャス……タ……」



名を呼ぶ彼女は涙を滲ませていた。

この凄まじい快楽が苦しくもある。


ああ、そうだ。

マクファーソンは男を知らない。

初めての体験に加え、彼に知り尽くされたこの身体。


その快楽は当然の事だった。



「シルビア……」



彼女の準備が整ったのを確認し、自身を添えた。


瞬間、シルビアは思い出した。

自分が処女だという事を。



「ま、待って、この身体は──っ!」



遅かった。

痛みに耐える準備ができる前に貫かれた。


もの凄い存在感。

身体中が痺れるほどの激痛。

涙が零れる。

あまりの激痛に唇を噛み締める。


だがこの痛みは愛の証。

愛する彼と一つになった証なのだ。



「だ、大丈夫ですか?すみません、うっかりしてて……。」



昔と変わらぬ反応に、初めてだという事を忘れていた。

申し訳なさそうに謝罪する。



「大丈夫よ、二度めだもの……。それよりも……生まれ変わった私の初めての相手が貴方で嬉しい……。愛してるわ、あなた……。今も昔も……来世でだって私は貴方だけを愛してる……。」



「私も同じです。私はいつまでも貴女を愛してます。再び貴女の命が尽きても私は待ちますよ。巡り逢うまでに何世紀かかろうとも……私の気持ちは決して変わらない。シルビア、愛してます……。」



痛みによって流した涙は、いつしか嬉し涙に変わっていた。



「愛して……。私を愛して!」



「了……解……」



とは言っても、既に耐えられなくなっていた。

生まれ変わった彼女の身体は素晴らしかった。


入っただけでもう終わりそうになっている。

我慢してひと突きした。


これは……まずい……。


堪えようと動きを止めた。しかし──



「は……ぁ……」



悩ましげな彼女の表情に、再び彼は突き上げた。

だがその動きはすぐに止まってしまった。



「シャスタ……?」



どうしたのかと声をかける。



「く……っ」



え……?まさか……もう……?


信じられなかった。

だが、自分の内にいる彼が脈打っている。

彼は射精したのだ。



「す……すみません……」



「何で……?どうしたの……?」



前世の記憶の中の彼はもっとタフだったはずだ。



「貴女が凄くて……死ぬかと思いました……。」



「私が?凄い?」



「身体が昔より良くなっていて……。まるで私の精気を吸い取るかのように……絡みついて……。」



世間ではこれを名器と呼ぶのだろう。

これを持ち合わせ、シルビアは最高の女性となった。


まさに神が創造した最高の芸術品だ。

まあ、ミスした彼のお詫びなのかも知れないが。



「シルビア、私は貴女を愛しています。私達は永遠のパートナー……。例えこの器が滅びても魂は生き続ける。それは貴女が証明してくれました。私達は何度でも時を越えて必ず巡り逢い、そして永遠に愛し合うんです。私はもう貴女を離さない。何があろうと絶対に……。」



「嬉しい……。私は何度でも生まれ変わるわ。永遠の命を持つ貴方が私を忘れない限り……貴方が待っていてくれる限り私は必ず戻ってくるわ。前世の記憶が戻らなくても……私は貴方だけを愛するの。そして必ず貴方が初めての人になるのよ。」



彼以外の男性と結ばれる事は決してないのだ。



「私も貴女とだけ……。決して他の女性とは契りません。」



そう言って微笑む彼を見て、シルビアは胸の高鳴りを感じた。

愛するシャスタの許に戻れた事が嬉しくて堪らない。


と、何かを思い出したらしいシルビアがクスクス笑い出した。



「どうしたんです?」



「私ね、自分に嫉妬してたの。」



「嫉妬ですか?」



「ええ。貴方、マクファーソンにナイトを重ねて見てたでしょ?貴方にしてみればどちらも同じシルビアだったんでしょうけど……。」



「まあ、確かに……。」



「私は──マクファーソンは自分を見て欲しかったのよ。見て欲しいのに貴方は私の後ろのナイトを見てる。だから彼女が──貴方に愛されてるナイトが妬ましかったわ。」



ふふっと笑い、彼女は続けた。



「今考えるとナイトも私なんだもの。自分に嫉妬してたなんておかしくて。」



「どちらにしても貴女は貴女です。私は今の貴女を愛していますよ。」



そう言ってシャスタは彼女の額にキスをした。



「私も貴方を愛してるわ。だから……もう一度抱いて……。」



20年間離れ離れだったのだ。

求めずにはいられない。

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