13 やっぱりこれは、黒が持ってるべきだ

午後5時ごろ、アオハルの家をおいとました。


アオハルは、真犯人を突き止めるために、黒たちに協力すると約束してくれた。彼は真犯人に対してひどく腹を立てていた。考えてみれば、アオハルこそが、今回の事件の一番の被害者なのかもしれない。


黒、白、灰原の三人は、帰り道、お疲れ様会と称してファミレスに寄った。

アオハルと会えたことで、事件にひと段落ついた感があった。


三人とも甘い物を注文して、それを食べながら雑談をしたり、スマホをいじったりして、ダラダラ過ごした。


このファミレスもフリーWi-Fiサービスを展開していたので、例によって黒は通信量節約のために接続しておいた。


ややあって、黒にLINKが着信した。


「あ」


思わず声が漏れた。

LINKの相手は、アオハルを騙る真犯人からだったからだ。



――早く俺を捕まえてごらん。――


 

それだけが記されてあった。


黒はため息をついて、そのメッセージを白と灰原に見せた。

もはや驚きはなく、二人もただ呆れた様子だった。


「あ、そうだ」


そろそろ店を出ようとなった時に、灰原が思い出したように言った。

そして彼はリュックをごそごそと漁り、透明なケースに入ったDVDを取り出すと、黒に手渡した。


ディスクにはマジックペンで「なないろの青」と記されている。

灰原と白が制作した例のスクールドキュメンタリー映画『なないろの青』が収録されているようだ。


「黒、この前、観たいって言ってたでしょ?」


灰原は急にいきいきし始める。


「……社交辞令だったんですけど」


というか、よくよく考えてみると、社交辞令でもそんなこと言った覚えないぞ……。


黒のつれない返事に、灰原はしゅんとしてしまった。


「冗談です」

黒は言った。冗談ではないんだけど……。

「あとでちゃんと観て、感想を言います」


「よろしく!」

灰原は活気を取り戻した。

「この映画、悪い評判は今のところないから安心してね」


「灰原先輩の他は、まだ白しか最後までは観てませんもんね」


「そのとおり!」

灰原は今日いちばんの笑顔を見せた。

「あ、そうそう、あとこれも」


灰原はリュックから屋上の鍵を取り出して、黒に差し出した。黒が灰原に貸し出していたものだ。黒としては、べつに自分が持っていようと灰原が持っていようと、どちらでも構わないのだけど。


「やっぱりこれは、黒が持ってるべきだ。黒が見つけたものなんだし」


「分かりました」


黒は素直に、鍵を受け取った。

ずっと隠し持っているわけにはいかないだろうけど、夏休み中くらいは、屋上を楽しんでもバチは当たらないだろう。

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