オネエな私の異世界備忘録

真珠院ミレイ

プロローグ

「さ、これで完璧♡ ほら、鏡を見てごらんなさい。最高に可愛くなったわよ!」


私はにっこり微笑んで、仕上げにほんのひと塗り、リップグロスをオン。

その艶めきは、彼女の緊張をふっと溶かす、最後のひと押し。


ここは、とある百貨店の一角。

人気コスメブランドのカウンターは、今日もたくさんの「変わりたい」人で賑わってる。

接客歴はまだ浅いけれど、私の“目利き”と“技術”は、ちょっとやそっとじゃ負けないつもりよ。


――ええ、ちょっとオネエ口調が目立つのは自覚してるわ。

でもそれが案外、安心感につながってるみたいで。ギャップって、武器なのよね♡


「すごい…自分じゃないみたい…。」


鏡の前で、嬉しそうに笑うお客様の顔に、私もつられてほころぶ。

ああ、こういう瞬間があるから、この仕事、やめられないのよね。

人を“キレイ”にできるって、やっぱり最高だわ。


「じゃあ、次回までにアイブロウの描き方、ちゃんと練習しておくのよ?

自分でもできるようになったら、もっと自信がつくから♪」


軽くウィンクを添えて、お客様を見送る。

その背中がすこしだけしゃんと伸びているのを見て、私はこっそりガッツポーズ。


今日もいい仕事したわね、私!

あと数分でシフトも終わりだし、帰りに新作のリップでもチェックして――


──そう、その時だった。


突然、足元に淡く光る模様が浮かび上がった。

まるでファンタジー映画で見るような、魔法陣……?

眩しい光が一気に視界を飲み込んでいく。


耳鳴りのような音がして、周囲の喧騒がどんどん遠ざかる。

ファンデーションの香りも、店内の音楽も、すべてが遠のいていく。

代わりに私を包むのは、まぶしい光と……見知らぬ空気の気配。


次に目を開けた時、そこは、見たこともない異世界だった――。

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