【風雅ありす様自主企画】みんなでリライトしよう♬参加します!

宇地流ゆう

【原文】宇地流ゆう「お酒はダメだヨォ〜」『幽霊ゆうらの卒業論文』より


【作品タイトル】『幽霊ゆうらの卒業論文 〜“視える”僕と、見えないゼミ仲間〜』第2話「お酒はダメだヨォ〜」


【作者】宇地流ゆう


【作品URL】https://kakuyomu.jp/works/16818622175739024179


【該当話直リンク】https://kakuyomu.jp/works/16818622175739024179/episodes/16818622175739323320


【作者コメント】

 主人公間野裕良まのゆうらが、二日酔いの頭で遅刻しながら大学に行くシーン。喋りかけてくる酔っぱらいオヤジがいて、実は幽霊というオチ。祐良は幽霊が視えてしまう体質なのです……。

 私はガチホラーを描くのが苦手なので、どうもオドロオドロしさが出ないのですが、一回、ホラー色強めのバージョン、あるいは、もっとコメディ寄り?シリアス寄り?も見てみたい!

 なんなら、このオヤジではなく、全然違う幽霊が絡んできてくれてもOK。祐良が無事に電車に乗って大学に行くことができれば何でもアリです笑 (大喜利みたいになっている……?笑)


 皆様のいろんなアイディア・リライトをお待ちしております!!!👻



==▼以下、本文。============


  サイアクなことってのは、立て続けに起こる。そんで自暴自棄になると、さらにバッドサイクルだ。


「君、きみぃ〜、ダメだよぉ、お酒は」


 わかってるっつの。お酒に逃げるとロクなことにならない。


 二日酔いの頭をもたげながら、僕はのろのろと駅のホームを歩く。将来の保険をかけて、とりあえず教職を取るつもりだったが、一体なぜ教職の授業って全部1限なんだ。教職員たるもの、朝から真面目にやれっていう圧なのだろうか。やっぱ、僕には無理な気がする。


「お酒はさぁ〜、オレみたいになっちゃうよ〜」


 ……そうはなりたくないな。


 太陽の傾く午後。通勤ラッシュはとっくに過ぎていて、昼移動のサラリーマンとか、フリーターらしき若者とか、お茶に行くおばちゃん達しかいない。


 そんなぼやけた風景を見ていると、ふと昨日の彼女の言葉を思い出す。


 『祐良ゆうらってさ、何考えてるかわからない』


 俯きながらの冷たい声が、やけに胸に刺さった。そんなこと言われてもな……実のところ、僕もわからない。いろいろ考えようとはしているが、結局いつも同じ結論に至る。


 ただ、普通になりたいだけなんだ。みんなと同じように、そこそこの大学に行って、適当に友達作って彼女作って、そこそこの会社に就職して。しかし面白いことに、普通になろうとすればするほど、それが遠のいていくように思えるだけだ。

 

 『ごめん。やっぱ……やめよ』


 彼女はそう呟いて鞄を肩にかけると、静かに部屋を出ていった。一人暮らしの狭いアパートの一室で、再び沈黙に包まれながら、僕は呆然としていた。


 『やめよ』って、おい、そんな抽象的な。フラれたってことなのか?そうなのか?

 

 「フラれたんじゃね?」


 と、誰かの声が部屋に響いた。


 僕はむしゃくしゃして、そのままコンビニに行ってビール缶を買って帰り、3缶イッキ、で飽きたらず、こないだ友人らが押し寄せ宅飲みした時に残った、安いウィスキーで喉を焼く————まあ、その「友達」も、ノリがいいと見せかけるためにとりあえずつるんでるだけだが。適当にバカ笑いして、適当に遊んでいれば「それっぽく」見えると思って。


 その「友達」の一人が忘れていった煙草に火をつけたが、ウィスキーと相まって思い切り咽せた。


「おいおい、ヤケ酒ヤケ煙草?」


「るっせえ」

 

 僕は虚空に向かってそう吐き捨てていた————



 大学方面に向かうオレンジの電車がしゅー、と目の前にやってきた。今日も今日とて、僕は何も考えずに、とりあえずこの電車に揺られることにする。


「お酒はダメだよぉ、ヒック、人生台無しになっちゃうよお〜、あはは、おっと、ほらほら、足元気いつけて〜、危ないよ〜」

 

 このくすんだオレンジの電車が、僕は嫌いだ。なぜかというと遅延が多い、とりわけ人身事故による。まったく、全てのプラットフォームに転落防止の壁をつけてほしいものだ。あと、踏切も撤廃してほしい。


 そんな、極めて危険な日本の駅構造に文句をつけながらも、僕はため息をついて電車に乗り込む。この時間はそんなに混んでいないってのは不幸中の幸いだが、それはイコール絶賛大遅刻中ということ。単位が指の間からサラサラと落ちていく音がする。もう何もかも、どうなってもいいや。そんな自暴自棄モードが襲いそうになるが————


 ゆっくりと動き出す電車の窓際に立ち、僕はプラットフォームに佇む酔っ払いオヤジを一瞥した。


 先ほどから絡んで来ていたオヤジは、赤らんだ顔でしゃっくりを繰り返しているだけで、別段僕のことを気にしていない。しかし、段々と小さくなっていくそのオヤジを見て、お酒はやっぱり止めようと思う。


 ぽっこり出たお腹を辛うじて覆う、よれたワイシャツは血だらけ。足は消えかかり、両腕は変な方向に捻じ曲がってる。しかし本人、死んでもなお酔っ払っている様子。


 うん、ああはなりたくないものだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る