06_The Encounter of Scarlet

06_The Encounter of Scarlet - 01



 ──生命とは何か。


 その問いに、私は


 中でもとりわけ重要なのは、遺伝子だ。



 遺伝子が万象の鍵を握っている、という部分は正しい。しかし、設計図があるだけでは意味がない。

 遺伝子の発現、それによって事象は運用されているとも言い換えられるだろう。



 十三年前、私は手術台の上で再誕した。

 十二人の命と引き換えに、血を浴びて生命の円環へ舞い戻った。


 同時に、私の背骨は改竄された。

 その時──私は識った。


 私は偶然、それに接続してしまった。

 識るべきではなかっただろう。

 こんなことを知れば、私の人生はあまりに無為で、どうしようもない代物に成り果てる。


 だから必死に見ないようにした。気づかないようにした。

 

 この世界には無数の可能性があり、事象とはその可能性の組み合わせに過ぎないということ。

 そしてその組み合わせには、こと。



 過去の残響をこの世界に呼び出し、

 未来をこの手で彫刻する。



 それこそが私の魔術ゲノミクスの本質だ。私の魔術は、事象の遺伝子からコピーされた一部分を読み解き、それらが発現する前に分解する。

 たったそれだけのことに過ぎない。実に単純な話だ。


 私は仮定した。——現象には遺伝子がある、と。

 そしてその仮定は、世界の一部を改竄した。



 いや、世界を改竄したのではない。


 私は────世界の背骨を、見抜いてしまったのだ。


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