恋愛より錬金術だ!

黒花ろーげ

序章

光に包まれた夢だった。


柔らかくて、温かい。けれどその心地よさはどこか押しつけがましくて・・・胸の奥がざわつく不気味な感覚だった。


「汝に、魔法の加護を授けよう」


どこからともなく声が響いた瞬間、手のひらにふわりと何かが降りてくる。

黄金の紋様。それがこの世界で『選ばれし者』だけに与えられる魔法の力の証だということを私はなぜか知っていた。


光の粒がゆっくりと私の手に降りてこようとする。

けれど嫌だった。説明のつかない嫌悪感が背筋を這い胸の奥で何かが警鐘を鳴らす。

本能的に「これは違う」と思い、思考より先に身体が動いていた。


私はその光を掴んで――地面に叩きつける。


「うわっ、きもちわるっ!」


バチィンと乾いた音が鳴り、空間にひびが走った。その瞬間、光も、声も、空気の感触すらもすべて弾け飛んで・・・


私は目を覚ました。


「・・・はっ」


ぼんやりと見上げた天井は見慣れないものだった。藁葺きの屋根に、年季の入った木の梁。

辺りを見渡せば石壁はところどころひび割れ、木製の家具がいくつか並び、控えめながらも人の暮らしの匂いがする。

ベッドの掛け布団は少し湿っていて、枕は妙に固い。けれど不思議と落ち着く。

私はゆっくりと身体を起こし、自分の手のひらを確認する。

・・・何も、刻まれていない。


けれどたしかに覚えている。

黄金の紋様が手に降りてきたこと。そしてそれを払いのけたときの手応えまではっきりと。


ベッドから降りると部屋の隅に置かれたひび割れた鏡に向かう。

映っていたのはセミロングの茶髪。薄い紫の瞳。華奢な顔立ちの、どこかで見たことのある少女の姿――


「……これって、エルメ・カパル?」

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