第10話 猫

町は穴から出現したモンスターが溢れ出していて、地上は地獄絵図と化していた。明らかに今の俺より強い巨大モンスターも出現していて、人類が覇権であった時代が終焉を迎えたことが俺にはわかった。


この現象が世界中で起こっているのかは分からないが……願わくば、一部地域にとどまってほしいものだ。特に、アメリカの軍産複合体が丸ごと生き残ってくれていると助かるが。


待ち合わせの場所まで走りながら、俺は自分の掌を見る。


黒い金属へと変化した腕は、もとに戻っていない。体の変化はそれに留まらなく、かれこれ2時間走っているのにも関わらずまったく疲れる気配がない。

端的に言うと、俺は普通の人間ではなくなってしまったようである。そのことに、俺は意外なほどにショックを受けていた。


この黒い金属の腕を持っているにも関わらず、人に受け入れられるのかということに関して、俺は自信を持てない。偶然助けた人間が俺を見る目の半分は、モンスターに向けるものと同じだった……


俺はそこまで首を振って思考を切り、頭の中に地図を展開する。

もうすぐだ。もうすぐで柚子と合流できる。


自然と俺の足の回転が早まり、走るスピードが1.5倍ほどになる。


「無事であってくれよ……」


俺はひとりごちながら、合流地点へとたどり着いた。

合流地点は、住宅街にある、一軒家ほどの敷地すらない小さな公園である。大きな公園は地域住民が集まって避難所となる可能性があるため、この小さな公園を選択したのだ。


俺は期待をもって公園の中を見渡したが、柚子たちは来ていなかった。軽く舌打ちをしながら、ポケットに入れた魔石を握る。


……早く着きすぎただけか?いやしかし……あいつらも魔石を取り込んで体を強化していると考えればもう到着していてもおかしくないが……いや……まさか、死んだなんてことは……そんなことはありえないはずだ。魔石を取り込める可能性については、柚子にもある程度の可能性として話はしてある。柚子ならそれをやってくれるはずだ……いや、だが……なんとか生き残って……うむ……


特に意味のない思考がぐるぐると頭の中を巡る。


と、俺の耳にとったったっ……という軽い足音が聞こえる。振り返ると、公園の入り口から頭から猫耳を生やした少女が走ってきていた。

少女は俺のほうにぴょんとジャンプすると、砲弾のように俺の胸の中に飛び込んできた。


「……柚子!」


俺は万感の感動を伝えるように少女を抱きしめる。少女は俺と同じ……いや、それ以上の強さで抱きしめ返してきた。


「はやと」


少し舌っ足らずな甘い声で柚子は俺の名を呼んで、ぐりぐりと顔を俺の薄い胸板に押し付けてくる。


「……無事でよかった」

「はやとも」


可愛らしい猫耳がぴくぴくと動き、喜びを示すように尻尾がピンと立っている……ん?尻尾?


人体にはないはずの器官。頭の上の猫耳といい、この尻尾といい……柚子は猫系美少女へと進化を果たしたようだ。


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