ミミササ短編物語

ミミササ

ナイトメアは眠らない


 昔々、ある王国では戦争が起きていた。

 何処であろうと誰であろうと関係なく、争いは日夜問わず起き続けていた。

 そんな戦争の渦中に生まれた1人の少女は嘆いていた。


(何故、人は争う。争いの先にあるのは混沌とした秩序だけだ)


 少女が生まれた時。両親は戦争に巻き込まれて亡くなっており、育ててくれた施設ですら焼き払われた。

 この世の全てが憎かった。生まれてから何もかも失ってきた、もしかしたらと言う淡い希望ですら少女にとっては憎しみの糧にしかすぎなかった。


 ある日、戦場に1人の騎士が現れた。

 その騎士は純白の白い鎧を身に纏い1本の聖剣を持って戦場を駆け巡った。

 1人の騎士によって戦場は瞬く間に勝利へと導かれ、民への被害も減っていった。


 その戦果から騎士は『聖騎士王』と呼ばれ、聖騎士団を作られる程自国からは祭り上げられ、敵からは恐れられていた。

 戦場での聖騎士団の勢いは止まらず戦争は終わりを迎え、見事勝利を勝ち取り平和を迎えた……かのように思えた。


 戦争が終わり国へ帰ると聖騎士団は国王の命により国家反逆罪で捕まった。

 それから処刑されるまでの毎日、聖騎士達はキツい尋問と取り調べにより心身共に擦りきっていた。


 処刑当日。拘束された聖騎士達が1人1人処刑台に並べられる、そこには聖騎士王もいる。

 聖騎士王はただひたすら王を睨み付けていた。

 刑が実行される直前、聖騎士王は嘆く。


「王よ!何故我々はありもしない罪によって死ななければならないのですか!!」

「聖騎士王よ、私はな怖いのだ。聖騎士王と呼ばれるだけの名誉を持ち、平和を築いたお主のその力が……」


 王は恐れていた。自分以上の力を持つ聖騎士王がいつかこの王の座を狙うのではないかと、だからありもしない罪を被せ処刑しようとしたのだ。

 それを聞いた聖騎士王は絶望する。憎悪から始まった強さが誰かを救い、平和を築き上げたこの力が……全てを狂わせていたのだ。

 聖騎士王……いや、少女は再びこの世界を憎む。


 憎悪に身を任せるまま少女は処刑台を破壊し、その場にいた聖騎士を除く全員を殺す。


 ──あれから数年、王国は崩壊しこの国は『聖騎士王』と呼ばれていた『悪夢の騎士』によって統治され、戦争が始まった。


 戦争は苛烈を増し、どんどん残酷になっていった。民衆や無関係な国家をも巻き込み、かつて聖騎士によって築かれた平和は無くなった。


 純白の鎧は返り血によって黒くなり、聖剣と呼ばれた剣は純血さを失った少女のように黒く禍々しくなっていた。そこにはかつて王国を勝利に導いた『聖騎士王』の姿は無く、世界から恐れられる残虐で冷徹な『悪夢の騎士』が世界を憎しんでいるだけだった。

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