第7話 姫騎士、参上! けれど彼女の正体は──

「止まりなさい、怪盗レオン・クロフォード!」


 森を切り裂く叫びと共に現れたのは、白銀の鎧に身を包んだ女騎士だった。

 その容貌はまさに威風堂々──金髪は陽光を受けて煌めき、碧眼はまっすぐにレオンを見据えていた。


「……なんか、すごいの来たな」


 レオンは苦笑しながら、リリスの前に出る。

 リリスの魔力はまだ不安定で、今すぐ戦える状態ではなかった。



「王命により、貴様らを討つ! 魔王復活の手引きをした罪、万死に値する!」


 彼女──クラリッサ・アールグレイ。

 この国の第三王女にして、騎士団副団長。


「王女が……自ら前線に?」


「貴様に語る言葉など無い!」


 クラリッサは剣を抜き、空気が切り裂かれる。

 重たくも正確な剣筋。レオンはすんでのところでかわす。



 ──チン、と音がした。


「ほう、いい剣だ。けど……ちょっと呪われてるな、コレ」


「なっ……?」


 レオンの目が鋭く光る。

 剣の鍔から柄、そしてクラリッサの右手にまで、わずかに黒い魔素の痕跡があることに彼は気づいていた。



「その剣……お前の意思で振るってないだろ?」


「う、うるさい! 王の命令は絶対だ!」


 しかし、言葉の裏に見える一瞬の迷い。それを、レオンは見逃さない。



 彼は静かに、懐から一枚のカードを取り出した。

 金色の“怪盗カード”──彼が唯一、見せることで戦わずして心を揺さぶる“心理戦の鍵”。


「俺は奪う。だが、それは“自由”と“真実”だ」


 クラリッサの剣が止まった。

 その刹那、リリスの魔力が暴走し──霧のような冷気が森全体を包み込んだ。



「このままじゃ、まずい……」


 レオンは即座にリリスを背負い、クラリッサの懐に飛び込む。


「な、なにを──っ!」


「ごめんな姫さん。君も一緒に、連れてくよ」


 そう言って、二人を抱えたまま教会の奥へと跳躍する。

 後に残されたのは、氷結した森と──割れた剣だけだった。

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