第46話「非才無能、壁を超える」
プレーンホッパー。
バッタ型の魔物であり、Sランクモンスターに指定されている。
そもそもとして、モンスターのランクは生還者たちの報告によって決定される。
報酬を多くもらうために、ランクを吊り上げたりする冒険者もいるため、ランク設定には嘘を見抜くスキルを持ったギルド職員によって厳重に審査される。
特に、頂点とされるSランクモンスターについてはかなりきちんとした条件がある。
その中の一つが、「Aランクパーティに対する勝率が五割を超える」というものだ。
勝利の条件は「パーティメンバーが誰も死なずに、相手を倒すこと」という風に定められている。
つまり全滅を除いた上で、パーティの中に死者が出た確率が五割なのだ。
俺たちとて、何も知らず、対策せずに挑めば死者の仲間入りをしていたことだろう。
ただ、今回出くわした相手を含めて、エリアボスの対策はしっかりと練ってある。
「JUUUUUUUUUUU」
プレーンホッパーはこちらを見定めて
次元を渡るもの《プレーンホッパー》の名の通り。
ごく短距離だが、空間をワープすることが出来る。
先ほどまで前方にいたはずのバッタ怪人が俺の眼前に現れ――腹部に蹴りを入れる。
バッタ型のモンスターだけあってその威力は絶大。
何も備えていなければ、腹部に穴が開いていたことだろう。
あるいは、腰から上が爆散していたかもしれない。
「さすが、リップ御用達の店!」
『黒竜の外套』の物理防御力は、オリハルコンと比較しても引けを取らない。
そして、オリハルコンはSランクモンスター並みの強度を誇る。
つまり――いかにSランクモンスターの蹴りと言えど簡単には壊せない。
「ふっ!」
『《断》』
刹那、返す刀で俺はマリィを振るう。
万象両断の刃は空気を斬り、その奥にあるプレーンホッパーの体を切り裂いた。
「JUUUUUUUUUUUUUUUUU!」
プレーンホッパーはのけぞりながらも退避した。
ワープを使って、俺が完全に切る直前に、刃の届く場所から逃げたのだ。
もう少しで、真っ二つに出来ていたのに。
「ごめん、倒し損ねた」
「仕方がない!モミトちゃん、前に出れるかい!」
「もちろんだ!」
はっきり言えば。
今回の作戦は単純そのものだ。
作戦とすら呼べないかもしれない。
カウンター戦法。
様々なスキルを持つプレーンホッパーだが、攻撃スキルはほとんどなく、あっても近接攻撃しかない。
つまり、相手が俺達を攻撃しようとした瞬間にカウンターを当てればいい。
今回、俺も含めてこれまで出てきたすべてのSランクモンスターについて調べ、対策を考えてきた。
闇の精霊や雷のドラゴンなど多種多様だったが、もっともくみしやすいと俺達が判断していたのはこのプレーンホッパーである。
「勝てるぞ!」
「JUUUUUUUUUUUUUUUUUUU!」
プレーンホッパーは、次元に干渉する。
その一端が、空間転移だが――それだけとは言っていない。
「「「「「「JUUUUUUUUUUUUUUUUU!」」」」」」
《次元分身》というスキルだ。
並行正解に干渉し、分身を生成するスキル。
しかも、単なる分身ではない。
あれらはすべてが分身にして本体であり、全員を倒さない限り、プレーンホッパーは殺せない。
加えて、数を減らしても、スキルのクールタイムが開ければまた数を元に戻してくる。
そんな相手が、自由に逃げられる空間転移を使ってくる。
客観的に見て、悪夢としか言えない光景だ。
「できれば、分身される前に決めたかったが――」
本来は、こちらを舐めている最初の一撃で倒してしまいたかった。
しかしそれが叶わない以上は、致し方ないだろう。
「勝つぞ!」
「おう!」
ただ、作戦と仲間を信じるだけだ。
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