第36話「非才無能、髑髏マスクと対面する」

「というわけで、元Aランク冒険者のメルティーナさんだ」

「メルティーナだよ。普段は冒険者ギルドの医務室で働いてる。みんなよろしくね」

「「「…………」」」



 俺が誰を勧誘する気なのか、知らされていなかった三人は絶句していた。

 


「まさか“医剣”のメルティーナを呼びつけるなんてね。モミトちゃんの人脈はどうなってるんだい?」

「こ、これであと一人も超大物だったりするんですかね……緊張して足が震えてきました」

「そうね……あの、サイン貰ってもいいですか?」

「おやおや、いい子たちだね。サインは書くし、よかったらお菓子もいかがかな?」

「「「は、はい!」」」

「承知。いただきます」



 なんだか、あっさりと受け入れられそうで拍子抜けだ。

 あとマリィ、お前までお菓子をもらおうとするんじゃない。



 ◇



「それで、もう一人っていうのはどんな人なんですか?」



 俺達はギルド内の食堂でテーブルを囲むように座っていた。

 ちなみに、食品の持ち込みは基本的にアウトだが、メルティーナが持っていたお菓子はギルド内の売店で購入したものなのでセーフだったりする。

 閑話休題。

 ともかく、メルティーナには、もう一人冒険者を誘ってもらうという話だったはずだ。

 一応、俺の希望は後衛だったのだが。

 どんな人が来るんだろう。

 弓使いではないと思っているから――魔術師とかかな。



「先に言っておくけれど、今回来てくれるのはちょっと変わった子なんだよね」

「……なるほど」

「悪い子ではないんだけどね、ちょっと性格に難があって、人づきあいが苦手なだけだから」

「それは悪い人なのでは?」

「ヒュンリ、落ち着いて」



 言いたいことはわかるけども。

 というか、わかり切っていたことでもある。

 ナナミがそうだったようにソロで活動している冒険者は、何かしらの問題を抱えていることが多い。

 だから、多少のことは仕方がない。




「でも、実際にどんな人か見てみないとわからないですからね……」

「あ、来たようだね。おーい」



 メルティーナが手を振った方向には、一人の冒険者がいた。

 いや、まさかあの人ではないだろう。

 手を振ってきてこちらに向かっている歩いているような気がしたけど、気のせいに決まってる。

 そう思ったのは、その人物が、あまりにもおどろおどろしい見た目をしていたからだ。

 


「なんですか、あれ」

「奇怪。恐ろしいですね」

「ええと、あれ、人間?」



 まず目を引いたのは、髑髏のような意匠の布マスク。

 そして、黒ずくめのフルプレートアーマー。

 さらに、背中には巨大な大鎌をかつぎ、両手にはチェーンソーを握っている。

 冒険者はどこかしら奇抜な見た目のものが多いが――彼(?)はその中での筆頭に位置する。



「はじめましテ。オレはリップ。恩寵ギフトは【きこり】だ」



 樵……確か斧や鎌などの扱いと、木材の伐採に長けた恩寵だったはずだ。

 あまり冒険者では聞かない恩寵だと思うが……きちんと戦えるのだろうか。



「おい、そこのお前」

「なんですか?」

「お前、今オレのことを舐めたロ?」

「ええと……」



 ここはどう答えるのが正解なのだろうか。

 正直、ただ肯定するのは間違っているとわかるが。



「――殺すゾ?」



 瞬間、殺気が吹き荒れる。

 ライラックよりもはるかに強く、研ぎ澄まされた殺気。

 どれほど多くの修羅場を潜り抜ければ、こんな風になるのか。

 武器化したマリィを握り、負けじと、きっと睨み返す。

 こういう時に目をそらしてはいけないと、ライラックとの付き合いが教えてくれた。



「ふうん、この程度じゃ膝も折れないカ。そこそこやるナ」

「リップ、感心しないな。そうやってだれかれ構わず殺気を放つような真似は」

「別にいいだロ。どのみち、これでビビるんなら最初からその程度だったってことになる」

「またそういう極論を」



 メルフィーナがため息を吐く。

 そこで初めて、俺は俺とメルフィーナ以外の三人が怯えていることに気付いた。



「ひとつ言わせてもらいたいんだガ」



 髑髏マスクの上から、わずかにのぞく視線が、俺をとらえる。



「オレの目的は30階層の踏破ダ。それを終わらせたらアンタたちとはお別れで、また一人で潜らせてもらウ」

「ああ、それで構わない」



 俺は鷹揚にうなずいた。



「そして、そのために役に立たないやつと、つるむ気はなイ」



 チェーンソーを取り出し、俺に突きつける。



「勝負しろ。お前らが俺に勝ったラ、同盟の話を受けてやル」



 リップは、そう口にした。



「お待ちください」



 マリィが間に割って入った。



「なんダ?」

「武器をおろしてください。そんなものを、ここでこの方に向けないでいただきたい」

「そうやって食ってかかる女は嫌いじゃないナ」



 口の箸を吊り上げて、リップは笑う。



「俺とマリィで相手をしよう。それで構わないか?」

「誤解があるようだナ。お前ら全員でオレに挑め。出なきゃ勝負にもならねーゾ」





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